安倍総理のイラン訪問~忘れてはならない「日本がイランに言うべきこと」

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月7日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。安倍総理のイラン訪問について解説した。

安倍総理のイラン訪問~忘れてはならない「日本がイランに言うべきこと」

会談を前に握手を交わすイランのザリフ外相(左)と安倍晋三首相=2019年5月16日午前、首相官邸 写真提供:産経新聞社

安倍総理が12日からイラン訪問へ

菅官房長官は6月6日の記者会見で、安倍総理大臣がイランを訪問すると正式に発表した。日程は6月12日~14日までで、総理はイランに滞在中、ロウハニ大統領や最高指導者のハメネイ師と会談する方向で調整が進められている。日本の現職総理の訪問は1978年の福田赳夫氏以来、41年ぶり。

飯田)ホメイニ革命が起こって以来、初めての総理訪問。

宮家)1978年ですよね。私が外務省に入った年です。

飯田)そうなのですか。

宮家)ええ。驚くなかれ、総理が行って何とか訪問が終わって、出国してから革命が始まるわけです。そう考えても、41年ぶりに日本の首相がテヘランに行くのはすごいことです。今回、イランとの関係を良くするということは、極めて正しいことですね。中東において、特に湾岸地域ではイランは圧倒的に影響力がありますから。この国との関係をきちんと維持することはとても大事です。だから総理が行かれることは大賛成ですし、核問題も含めて、いろいろ話すことがあるでしょう。

中東地域の安定のためにイランへ日本が言うべきこと

宮家)しかし1つ忘れてはいけないのは、今アメリカとイランがけんかしているのですが、その間で「日本は対等で平等なアメリカとイランの間の、中立な善意の第三者です」と言うわけにはいかない。そのような立場で行くべきではないと思っています。もちろん、アメリカの核合意離脱はおかしい。確かに、あの核合意自体が決して完璧な合意ではありません。ただ、1回サインしたものを簡単に撤回するのは良くないと思います。
問題の本質は、核合意もあるけれども、イランがあの中東地域においてここ10年ほど影響力を拡大し、各国へ革命防衛隊を中心として間接、直接の軍事的な支援をしていることです。例えば、シリアは完全に牛耳っています。ロシアと一緒にアサド政権を支えている。パレスチナの方ではガザに、ハマースに対するいろいろな支援をしていると言われている。それから、イエメンにはフーシ派がいるのだけれども、これにもおそらく支援しています。湾岸地域にはサウジアラビアも含めてシーア派が多数派の国、人口の多い国もあります。このように、イランは中東各地でいろいろなちょっかいを出しているのですよ。その問題をまったく指摘せずに、核合意だけの問題でイランと話をすることは、バランスが失していると思うのです。特に忘れてはいけないのは、イランが支援している勢力と、サウジアラビア、アラブ首長国連邦がイエメンではもう何年も直接戦争をしているのですよ。シリアでは革命防衛隊が駐留していて、アメリカ軍と間接的か直接的かは別にして、しばしば戦争状態に入っています。イランは賢いからアメリカの出方を見て、テストをしたらしく、ヤバいと思ったら引っ込むのだけれども、彼らのやっていることがいいことだとはとても言えません。

中東地域の本当の問題はペルシャ対アラブ

宮家)日本は中東地域に安定してもらわなければ困るので、アメリカだけが問題なのではない。イラン問題については、アラブのいろいろな国々、スンニ派と呼ばれる国々が皆警戒しています。多くの人はスンニ派とシーア派の宗教的対立が問題だと言いますけれど、その側面も無いとは言いませんが、本当の問題はペルシャ対アラブです。

飯田)ある意味、民族のルーツの問題。

宮家)ええ。ペルシャ帝国は、例えばイラクの歴史を少し見れば1000年以上、少なくとも部分的にペルシャ帝国がメソポタミアを支配しているのだから、圧倒的に強いのです。そういう国が41年前の革命を経て、また周辺地域にちょっかいを出し始めたとしたら問題でしょう。イランは当然だと言うかもしれないけれども、それでやられてしまう近隣諸国はたまったものでは無いです。イランによる中東の不安定化は困ります、日本はサウジアラビアやアラブ首長国連邦から石油を、カタールから天然ガスを買っているのですから。そうしたエネルギーサプライを考えて見ると、果たして今のイランの行動にもろ手を挙げて賛成できるかと言ったら、そんなことは絶対に無いのですよ。その部分はきちんと釘を刺しておかないといけないと思います。

飯田)アラビア半島の地図を見たら、いまおっしゃったシリアもそうですし、南のイエメン、またレバノンやヒズボラにも影響力を行使している、イラク政権にも行使していると考えると、色で塗ったら塗りつぶされてしまうくらいに影響力が強くなっています。

宮家)そうですよ。イラクなんてシーア派が有権者の過半数です。バーレーンという国も、いまは少数のスンニ派が王様になっているけれども、人口的にはシーア派が過半数です。だからイランはすごく影響力があるのです。イランの反米政策は致し方ないかもしれないけれど、アラブ諸国に介入されたら困るし、湾岸地域は安定していてもらわないと困るので、イランは間違っても他の国に変なちょっかいを出すのはやめてくださいと。いろいろ苦言を呈さなくてはいけないこともいっぱいあると思うのです。その部分を忘れてはいけないと思います。

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