メキシコだけではない~アメリカの理不尽な要求を飲まざるを得ない現状

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月3日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。アメリカが発表したメキシコへの制裁関税について解説した。

保守政治活動協議会で講演するトランプ(2011年)(ドナルド・トランプ – Wikipediaより)

アメリカがメキシコに5%の追加関税~日本の自動車メーカーを直撃

メキシコ政府がアメリカへの不法移民流入に対処していないことを不満として、トランプ大統領が6月10日からメキシコからの全輸入品を対象に、一律5%の制裁関税をかけることを発表した。これにより、トヨタ、日産、ホンダ、マツダといった自動車メーカーや、東レ、三井化学などの素材メーカーなど、メキシコに進出している多くの日系企業に影響が出ると見られている。

飯田)改善がなければ、7月には10%、8月は15%、9月は20%、10月に25%と段階的に上げるということも言っているようです。

須田)これは、米中貿易戦争での関税引き上げとはまったく違った側面を持っています。米中間で行われているものは、あくまで貿易上の問題を解消するために関税というツールが使われていますが、メキシコとの間では貿易は関係ありません。これは移民問題ですから、そこにこういった制裁的な罰則として関税を適応するということは、これまでの貿易史上なかったことではないかと思います。はたしてこうしたやり方が許されるのか。アメリカという大国、或いはトランプ大統領という大統領を前には、そのような原則論は通用しないのだろうなと思います。


世界経済はアメリカの個人消費で成り立っている

須田)その前提として、世界経済全体で考えてみると、アメリカのGDP国内総生産は1500兆円規模です。アメリカという国は他の先進国と違っていて、個人消費の占める比率が7割近くと非常に高く、日本のGDPの倍くらいが個人消費として存在する。世界各国はその巨大なマーケットに向けてものを生産し販売し、そして自国経済を回して行く構造になっている。そのなかでアメリカがこのツール、関税というものを使い始めると、これまで世界経済の大前提であったお金やものやサービスの動きが大きな混乱を招くことになります。つまりアメリカの意にそぐわないことをやった国は、次々と制裁関税で締め付けられるということです。メキシコのケースは他人事では無いのです。

飯田)NAFTA、いまはUSMCAという違う名前になりましたが、北米自由貿易協定があって、そこで部品などの供給も全部汲み上げられているのですよね。


メキシコのケースは他人事ではない

須田)そうですね。メキシコは人件費がアメリカに比べて安い。だからそこに組み立て工場を作って、そこへ向けて部品や素材などを輸出して組み立てるというサプライチェーンがあるのですが、これが最終的な完成ラインで機能しなくなると、ずたずたに崩れてしまう。それを回復させるために、新しい体制を組み直すとなるとかなりの年月が必要です。アメリカ、トランプ大統領はその辺を意識しているのか、すぐには対応できないということで人質を取るということなのですが。
繰り返しにはなりますが、アメリカの旺盛で貪欲な個人消費を前提として、世界経済や貿易体制が成り立っている。それがあるわけですから、アメリカが理不尽なことをやって来ても、条件を飲まざるを得ないのかなと思います。

飯田)7割が個人消費で回っているアメリカ経済を考えると、国内での需要を全部供給で満たすわけにはいかないから当然、いろいろなところから物を持って来るのですよね。慢性的な貿易赤字になるような気がするのですが、これを黒字転換させるのは難しくないですか?

須田)いや、黒字転換をする必要は無いし、させる必要性も感じていないのです。基軸通貨・ドルを持っているからです。自分たちで輪転機をぐるぐる回して、ドルを印刷して買えるのです。そう考えると、アメリカは非常に特殊な国です。日本はそれを米国債に変えて、金庫にしまっている。いつ使うのだろうかという問題もありますけれども。だからある意味で、特殊な状況を前提に世界経済は成り立っているということが、今回のメキシコのケースでありありと感じるのではないでしょうか。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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