新行市佳のパラスポヒーロー列伝

鉄人超えた超人レース!? パラトライアスロン国際大会を新行市佳がレポート!

ニッポン放送アナウンサーの新行市佳が、注目選手や大会の取材などを通して、パラスポーツの魅力をあなたと一緒に発見するための連載企画「パラスポヒーロー列伝」。今回は、「パラトライアスロン」を特集します。

泳いで、自転車をこいで、走って・・・超人競技と呼ばれている「トライアスロン」ですが、
「パラトライアスロン」というスポーツがあるのをご存知でしょうか?
オリンピックの距離である51.5km(ロング)の半分の距離にあたる25.75kmを競い合います。(スイム750m,バイク20km,ラン5km)
車椅子のクラス(座位 PTWC)・視覚障害のクラス(PTVI)・運動機能障害のクラス(立位 PTS2~PTS5)の3つの部門があり、運動機能障害のクラスは障害の程度によって4つのクラスに分けられています。
パラトライアスロンの国際大会「2019 ITU世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会」が5月18日・19日の二日間にわたって開催され、18日にエリート選手が出場しました。
パラトライアスロンの第一陣のスタート時間は、朝6時50分!
始発に乗って私も観戦してきました。
山下公園通りにトライアスロンのテープが張られ、山下公園や関内、みなとみらいがトライアスロン一色に。

スイムの様子

早朝7時頃の横浜港・・・・眺めが素敵ですよね。

ランジションエリア

ズラッと自転車や車椅子レーサー、ハンドサイクルなどが並んでいるエリアが「トランジションエリア」です。トライアスロンは3種目を連続して行うので、その種目チェンジをする場所ですね。
スイムを終えた選手は水着を脱ぎながら自分の自転車まで走り、スイムで使った用具を用具入れ(かご)の中にいれ、バイク種目に移行します。
スイム時の道具をすべて用具入れの中に入れないとペナルティをとられてしまうため、途中で用具を落とした場合は取りに戻らなくてはいけません。

用具入れ

パラトライアスロンはクラスによって見どころがあります。
例えば、車椅子の選手はスイムのフィニッシュ地点にハンドラーと呼ばれるスタッフが数人待機していて、選手を抱えて車椅子まで運ぶというF1のピットインさながらの連携プレーをします。

選手を運ぶハンドラー

その後、選手は車椅子を漕いでハンドサイクル(自転車)のもとへ行きます。

車椅子をこいでハンドサイクルへ

ハンドサイクル(車椅子の選手が行うバイク競技)

また視覚障害の選手の場合、スイムやランではガイドロープ(紐のようなもの)で繋いで、ガイドと呼ばれる伴走者と一緒に競技し、バイクではタンデムバイクに乗ります。ガイドの人は「右カーブに入ります!」といったような声を掛けて、視覚障害の選手と情報を共有しながらレースをします。

ガイドと一緒に走る視覚障害の選手

タンデムバイクを運ぶ視覚障害の選手とガイドの選手

この次の競技に移行するときの「トランジション」がいかにスムーズにできるかというのもタイムに大きく影響してきます。

ゴールした宇田秀生選手

男子PTS4クラスの宇田秀生(うだ・ひでき)選手は3位に入賞。
「パフォーマンスは満足できるものでした。スイムは自分のペースを守って、周りを気にしないで泳ぐようにしました。バイクの時に前にターゲットがいたので、見ながら行って、ランは後ろも前もいたので必死でした。」
バイクでは良いレベルで勝負できていると感じている一方で、スイムでは泳力の向上といかにまっすぐ距離のロスなく泳げるかを今後の課題に挙げました。

土田和歌子選手

パラリンピック冬季大会にアイススレッジスピードレースで2回、夏季大会では陸上競技で4回出場、数々の素晴らしい成績とメダルに輝いてきた土田和歌子(つちだ・わかこ)選手は2018年にパラトライアスロンに転向。
横浜大会3連覇がかかっていましたが、バイクでペナルティをとられ、1分間ペナルティボックスに入り、タイムロスも響いて4位でした。
「バイクでのペナルティがあった中、気持ちを切らさずにランにつなげられたことはプラスかなと思います。3つの種目をつなげるということで、3種目ともレベルの高い位置にいないとなかなか優勝は手にできないということも自覚していますので、苦手意識をなくして、得意分野をさらに伸ばしていきたいです。スイムはビギナーくらいのレベルだったのをようやくタイムを狙って泳げるようになり、バイクもパワーと出力が上がり、スピードに繋げられていると思います。」
ハンドラーとのコンビネーションについては、「去年から取り組んできたこともあって、非常に息も合ってきましたし、阿吽の呼吸というのをハンドラーとの仲で目指してきていて、今回収穫があったと思います。」と手ごたえを感じました。

谷真海選手

東京大会誘致に大きく尽力されたPTS4クラスの谷真海(たに・まみ)選手。
去年8月、谷選手のクラスPTS4の競技人口が少ないことを理由に、東京パラリンピックで実施種目から除外されることが報じられました。
しかし、同年11月にITU国際トライアスロン連合の理事会で、PTS4はより障害の程度が軽いPTS5と一緒に実施されることが認められ、PTS4の選手も東京パラリンピックを目指せるようになりました。
今回の横浜大会では、PTS4とPTS5は同時刻に競技をスタート。谷真海選手はPTS4で2人中2位、PTS5も合わせると6位という結果になりました。
「思い切っていこうと思っていたんですけど、スイムからバイクへのトランジションやバイクでも抜かれて、完全に力負けしたなという感じです。来年が迫ってきて、海外の選手も力をつけているなというのを実感しました。」と、涙を浮かべながら、悔しさを滲ませました。
今シーズン(約2カ月前)からバイクとランで使用する義足を一本化し、トランジションでのロスをなくす試みをしています。
「バイクで抜かれてしまったので、この義足で漕ぐということに関してスキルとパワーが全然足りないと感じました。3種目のうちでバイクの距離が一番長いので、練習の比重を変えなくてはいけないと思いました。」
国際大会でPTS5の選手と一緒のレースをするのは今大会が初めて。
「スタートは緊張感もって少しでもくらいついていこうと思って。スタートでは出遅れなかったのでのですが、20mぐらいして第2集団という感じで3位の選手にぴったりついていました。その点は去年より泳げていたかなと思います。」
PTS5の選手を競い合わなくてはいけないことに関しては「目指せるものがあるということでプラスに感じています。夢が途切れなくてよかったなと思っています。」とした上で、「リオ大会で実施されたのは3クラス、東京大会では全員チャレンジできるというところまできました。パリ大会に向けては(クラス統合について)議論して頂きたい。フェアではない。」と、今後のパラリンピックでのトライアスロン競技について希望を語りました。

山下公園通りでレース

健闘をたたえ合う選手たち

朝早くにスタートしたパラトライアスロンでしたが、沿道には沢山の人が集まり声援を送っていました。谷真海選手は「自分の国で試合をするということの力強さ」を感じたと言います。
「かなり声援に後押しされた部分はあったので、2020年もし東京大会に出ることができたら、もっと大きなパワーと感じられると思うので、その舞台に立ちたいという気持ちで今年1年戦います。」

【新行市佳のパラスポヒーロー列伝 第17回】

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