日米共同声明が見送られるいくつかの理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月20日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。日本政府が5月末に行われる日米首脳会談後の日米共同声明の発表を見送る決断について解説した。

トランプ大統領との日米共同声明を見送る方向で検討

日米両政府は安倍総理が今月(5月)下旬に来日するトランプ大統領と会談した際、共同声明の発表を見送る方向で検討に入った。5月27日、来週の月曜日に会談を行う方向で調整しているが、貿易交渉と北朝鮮対応で日米の立場に隔たりがあるため合意に達するのは難しいと判断した。

飯田)ということで、共同声明を見送る方向です。北朝鮮問題に関しても、そんなに隔たりがあるかなと思うのですが。

須田)そこはないのですが、貿易交渉の部分がこの共同声明を見送る大きな原因になっているのではないかと思います。その大前提として、来年(2020年)11月のアメリカの大統領選挙。ここを意識する形でアメリカの外交が少しずつ動き始めています。大統領選挙の1年ぐらい前から、アメリカの政策がすべて内向きに、大統領選挙シフトが始まるとよく言われています。その大統領選挙を強く意識する形で、いろいろな場面でのアメリカ外交に動きがあるのです。
そもそも日米貿易交渉に関して、日本側としては参議院選挙後に何らかの合意としたい。これは別に選挙を意識してということでもなく、むしろ交渉にかかる時間を意識するとその辺りになると考えていたのですが、アメリカは日米首脳会談でいきなり最終合意をということを一旦言い出しました。そこで日米間で何らかの合意を得て、アメリカが何らかのメリット、手土産を携えてアメリカ国内でそれを有権者に示したかったというのが、トランプさんの本音だと思います。
ただ、どう考えてもそれはスケジュール的に間に合わない。ここで何らかの共同声明を出してしまうと、そこが1つの区切り、結節点になってしまう。それに対して国内の批判や、トランプさんの支持層からの批判が出て来ないとも限らない。だったら継続中ということにしようではないかと、共同声明を見送りとなったのだろうと考えられます。

日米共同声明が見送られるいくつかの理由

笑顔で会談するトランプ米大統領(右)と安倍首相=2018年9月26日、米ニューヨーク(共同) 写真提供:共同通信社

日米間で「交渉決裂」としたくない

飯田)こういうニュースが出ると、日米関係が険悪になるのではという批判も出たりしますが、そういう判断ではない?

須田)トランプさんとしては国内世論を意識した上でのことです。日本との間で交渉決裂だとか、関係悪化の状態に持って行きたくないという心理が働いて、こういう結果になったのだと思います。

飯田)声明見送りと言っても、会談は行うわけだし、そのあとの会見も行うでしょうね。

須田)その辺りがどうなるか。その一方で貿易交渉は続きます。だからと言って、「では日本は安心していていい」ということではありません。最大の焦点として浮上して来ているのが、自動車問題。トヨタを中心にアメリカ国内での増資を行うと言っているけれど、これだけではアメリカは納得しない。

日米共同声明が見送られるいくつかの理由
隠れテーマとしてある為替問題

須田)それからもう1点、隠れテーマがある。それは何かと言うと、為替問題です。為替条項というか、為替に関する一定程度のブレーキ、制限を求められるのかどうか…このあたりの水面下の動きが見えていません。日米間では決着済みではないと思うのです。アメリカは日本の円安誘導に関して不快感を持っていますから。特に中国に続き、日本に対して強い懸念を持っています。なぜか不思議なことに、この話は表に出て来ていません。

飯田)確かに安倍総理が訪米する直前、ムニューシン財務長官が為替条項も交渉のなかに入るのだということを言い、その後、ムニューシンさんと麻生さんとの間でやるようなことが伝わって来ましたが、実際どういう話し合いが行われているのかが一切出ていません。

須田)これをやると、日本の異次元の金融緩和の結果が円安ですから、そこに手を突っ込むことになるので一定程度の配慮をしているものの、これについては決着はついていないだろうと思います。

飯田)為替はいろいろなファクターがありますが、流通している貨幣の量の差、割合の部分で大体のレートが決まると、著名投資家のジョージ・ソロス氏が言っていました。アメリカは金融緩和を止める形になっていますが、また利下げという話が出ています。それを考えると、日本は緩和を続けているけれど少なくしているので、将来的には為替は動かないか、あるいはやや円高に振れるかもしれないぐらいになって来ている。

須田)そういった点で言うと、アメリカがもう1回金融緩和の方向に動くと、円高方向に動きますよ。ただ、それでいいのかと。

飯田)日本の経済としては、やや苦しくなって来る。

須田)結果論として円高に動いたからと言って、アメリカは見過ごしていいのかという問題もありますからね。

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