映画『翔んで埼玉』と田中康夫『なんとなく、クリスタル』の共通点

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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、日経BP総研・上席研究員の品田英雄が出演。映画『翔んで埼玉』と「承認欲求」について語った。

映画『翔んで埼玉』と田中康夫『なんとなく、クリスタル』の共通点
黒木)今週のゲストは日経BP総研・上席研究員の品田英雄さんです。以前は『日経エンタテインメント!』の編集者をやっていらっしゃいましたが、いまは編集のお仕事は?

品田)書く仕事が多いです。日経新聞の連載など、2つくらいやらせていただいています。

黒木)どういったテーマで書いてらっしゃるのですか?

品田)1つは、大人向けにエンターテイメントをお勧めする連載。もう1つは、最近流行っているものを、おじさん向けに解説するものです。この動画が面白いよとか、こういうお茶が面白いよというものを若い子に話を聞いて、企業のおじ様方にお伝えしています。

黒木)最近ですと、どんなものをご紹介されたのでしょうか?

品田)映画で言うと、『グリーンブック』。それと『翔んで埼玉』はぜひ、おじさんに観てほしいです。

黒木)おじさんに。

品田)おじさんに。原作者の魔夜峰央さんが埼玉に住んでいたときに、埼玉をディスる漫画を描いたのですが、あの気持ちは実は、60歳前後には良く分かるのですよ。80年代にブランド物が流行って来て、日本の社会が「これはいい」「これはださい」と言い合う時代がありました。田中康夫の『なんとなく、クリスタル』の世界に共通点を感じました。

黒木)どのようなところをポイントに見ればいいのですか?

品田)作っている人の気持ちになると、あれはすごくおかしくて、東京の高校生であるにも関わらず、主役が二階堂ふみさんという女性。しかもこれが男子高校生の役。相手役の高校生を、歳が大分上のGACKTさんがやっている。「これは何なんだ?」というところから始まり、埼玉の人は東京に行くときに、通行手形がなければ入れないという設定。
日本の社会が、いままではみんな中流と言われて、それほど差が無いと言われていたのが、平成の終わりごろから格差社会になって来た。マウンティングみたいな、どっちが上と言うような、勝ち負けを気にする社会になって来ています。

黒木)現代が。

品田)はい。タワーマンションでも「何階に住んでいると偉い」ということが、半分ギャグだけれどあるのですよ。どこに住もうと、その人が気持ち良ければいいではないですか。

黒木)そうですね。

品田)それをさも、「上に住んでいる方が高い」というようなことを言い始めた。

黒木)やはり人と違う、人より自慢できるステータスが生きる糧になっていたりするわけですか、いまの時代は。

品田)そうですよ。人間は片方では「私は違うのよ」と言いたがっている。SNSで“いいね”をたくさんもらうと嬉しかったり、目立つことはいいかなと思っちゃったりしますよね。

黒木)存在価値を認めて貰いたいとか。

品田)インターネットができて、世界で見て貰えることができるようになった。普通の人でも世界から注目される人がいる一方で、「俺はけっこういけてる」と思っているのに注目されない人がいる。そこで差を感じるようになったと思うのですよね。「自分は違う」ということを頑張って見せようという気持ち。「承認欲求」という言葉を最近よく使いますが、周囲から認められたいという気持ちが強くなっていると思います。

映画『翔んで埼玉』と田中康夫『なんとなく、クリスタル』の共通点
品田英雄(しなだ・ひでお)/日経BP総研・上席研究員

■1957年生まれ。
■学習院大学卒業後、ラジオ関東(現ラジオ日本)に入社。音楽番組を担当。
■1987年に日経BP社に入社。記者としてエンタテインメント産業を担当。
■1997年に「日経エンタテインメント!」を創刊、編集長に就任。
■2003年に発行人を経て、2007年に編集委員に就任。
■2013年からは日経BP総研・上席研究員を兼任。
若者の文化や世の中の流行を分析するエンタテインメントの専門家として活躍。
■著書に「ヒットを読む」(日経文庫)がある。

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