5月13日はスティーヴィー・ワンダーの誕生日~アメリカを代表する天才は69歳にして現役

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5月13日はスティーヴィー・ワンダーの誕生日~アメリカを代表する天才は69歳にして現役
現役。

スティーヴィー・ワンダーが現時点での最新アルバム『ア・タイム・トゥ・ラヴ』を出したのは、2005年、つまり14年前だ。その前作は、1995年の『カンヴァセーション・ピース』『ナチュラル・ワンダー』だから、その間隔約10年。一言でいえばなかなか新譜はでてこない。ところが、スティーヴィーのニュースはコンスタントに入ってくる。

「ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命も大事だ)」の動きがあればコメントもでるし、「跪き(ひざまづき=ニーダウン)運動」のときはスティーヴィーは賛同の意を表示する。もちろん、反トランプも明確だ。アレサ・フランクリンの葬儀にもきちんと顔をだす。また本数は多くはないがライヴ・コンサートもぼつぼつとやっている。

そういう意味で、スティーヴィーは69歳にして現役ばりばりのアーティストだ。

失明。

スティーヴィー・ワンダーは1950年5月13日、アメリカ北部ミシガン州サギノーというデトロイトの北西約150キロのところにある、当時は人口約9万の小さな街に6人兄弟の3番目の子供として生まれた。(ちなみに、2017年には人口は5万人を切っており、過疎化が進んでいるようだ)

早産で未熟児だったため保育器にいれられたが、ここで酸素過多のため失明。スティーヴィーが4歳のころ、母は子供たちを連れ、北部の都市として発展していたデトロイトへ引っ越し。このころから、すでに音に対して敏感で、音楽の才能を見せ始めていた。

11歳(1961年)でデトロイトの新進気鋭のインディ・レーベル、モータウン・レコードの創始者・社長ベリー・ゴーディーに認められ、モータウンと契約。1962年に「12歳の天才」として鳴り物入りでデビューした。最初はなかなかヒットがでなかったが、1963年5月にリリースされたライヴ・アルバム『ザ・トゥエルヴ・イヤー・オールド・ジニアス』がアルバム・チャートで1位、同アルバムからのシングル「フィンガーティップス(パート1、2)」がポップ・チャートで1位になり、大ブレイク。以後若干の波はあれどコンスタントに作品を出し、ヒットを生み出すようになった。

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大きな転機となったのは1971年5月13日。スティーヴィーが21歳になったとき。彼はそれまでモータウンと未成年で契約を結んでいたが、この誕生日を機に、自分自身の「クリエイティヴ・フリードム」(創作の自由)を獲得。それまでは基本的には、モータウンから与えられた楽曲を歌っていたが、これ以降は、自身が感じたこと、思ったことなどを直接自身の作品に反映するようになった。その結果生まれたのが、自分で曲を書き、楽器も演奏し、プロデュースしてできたアルバム『ミュージック・オブ・マイ・マインド(邦題、心の詩)』(1972年3月発売)だ。その前作1971年4月発表の『ホエア・アイム・カミング・フロム』も当時の妻でもあったシリータとの共作で、かなり「創作の自由」を得ていたが、この『心の詩』以降が完全に自分のものになった。

5月13日はスティーヴィー・ワンダーの誕生日~アメリカを代表する天才は69歳にして現役
続く『トーキング・ブック』(1972年10月)、『インナーヴィジョンズ』(1973年8月)、『フルフィリングネス・ファースト・フィナーレ』(1974年7月)、『ソングス・イン・ザ・キー・オブ・ライフ』(1976年9月)はいずれもスティーヴィー・ワンダーのアーティストとして最高峰の作品となり、さらにグラミー賞を獲得。彼のアーティストとしての名声を決定的なものにした。これまでにグラミー賞一般部門は25、同賞「ライフタイム・アチーヴメント賞」も獲得している。

最近のスティーヴィーの定例イヴェントは、毎年12月にロスアンジェルスのステイプルズ・センター(グラミー賞などが発表される会場、コンサートで使うと約2万人の収容人数)で行われるおもちゃを子供たちにクリスマス・プレゼントとして贈る「ハウス・フル・オブ・トーイズ」。ただライヴ・コンサートはスティーヴィーが声をかけたアーティストたちが惜しげもなく、登場する一大エンタテインメント・ショーだ。

2013年の同イヴェントでは、スティーヴィーの傑作アルバム『キー・オブ・ライフ』の全編を再現する企画を実施、これが大好評だったため、翌年、このアルバム再現ツアーが実現したほどだ。

来日は2010年8月のサマーソニックが最後。そろそろ来日してほしいところだ。

【著者】吉岡正晴(よしおか・まさはる):音楽ジャーナリスト、DJ。ソウル・ミュージックの情報を発信しているウェッブ『ソウル・サーチン』、同名イヴェント運営。1970年代には六本木「エンバシー」などでDJ。ディスコ、ブラック・ミュージック全般に詳しい。ラジオ番組出演、構成選曲、雑誌・新聞などに寄稿。翻訳本に『マーヴィン・ゲイ物語 引き裂かれたソウル』(デイヴィッド・リッツ著)、『マイケル・ジャクソン全記録』など。自著『ソウル・サーチン R&Bの心を求めて』など。毎月第一木曜夜10時『ナイト・サーチン』(ミュージックバード)を生放送中。最新情報は、<吉岡正晴公式ツイッター>で。
https://twitter.com/soulsearcher216

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