中国人民元 国際通貨になった場合のリスク

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ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(5月3日放送)に外交評論家の宮家邦彦が出演。中国の経済成長について解説した。

中国人民元 国際通貨になった場合のリスク

円や元、金融危機時に融通  日中韓とASEANの財務相・中央銀行総裁会議後、記者会見する麻生財務相。右は黒田日銀総裁=2日、フィジー・ナンディ(共同)

 

日中韓ASEANが共同声明

日本・中国・韓国とASEAN(東南アジア諸国連合)は2日フィジーの観光地ナンディで財務省中央金庫総裁会議を開き、共同声明を採択した。金融危機の際にアジアの多国間でアメリカドルを融通し合う協定を見直して、円や中国の人民元を加えてドルに偏らない安全網を築くことを検討すると表明している。また、米中の貿易摩擦など経済の下振れリスクを注視して、あらゆる保護主義に対抗すると再確認した。

飯田)メールを紹介します。千葉県いすみ市“笑顔でかんぬき”さん56歳の方。「ドルに偏らない決済の方向に、と話はまとまったようですが、人民元を国際通貨とするにはどうなんですか。いろいろ問題があるんじゃないですか。現実的にどうなんですかね」ということも頂いています。

宮家)私は経済の専門家ではないので、私の知る範囲でお答えします。

もともと1997年にアジア通貨危機があって、これは大変だと言うのでチェンマイ・イニシアティブというのをやって、皆でドルを融通し合いましょうねと、こういう話をした。だけどその後、リーマンショックがあり、これで相当な余波が来ましたが、中国は一応踏みとどまったというか、大規模財政支出をやって乗り切ったわけですよね。これで終わりかと言うと、そうではない。97年にアジア通貨危機で、2009年にリーマンでしょう。危機というのは大体10年おきに起きてるってことですよね。

ということは、いま何が起きてもおかしくないわけですね。実際、アメリカでいま言われているのは、リバリッジドローンって言って、信頼性の低い会社へのローン、これを証券化して売っているわけですよ。利息が高いですからね。ですから、いま金利が安いから皆買っている。けれども、もともとは信頼性の低い会社に対するローンだから、当然のことなら格付けが低く、ハイリスクなんですよ。それが変にはじけたら、昔サブプライムってありましたよね。あれと同じようなことになる。要するに10年前と全然手口は変わっていないんですよ。

飯田)で、証券化して。

宮家)そう、格付けの低いローンを証券化して、なんだかよくわからないものにして売ってしまえと。

飯田)1つだとリスク高いけれど、まとめれば。

宮家)皆でまとめれば怖くないみたいなね。でも実はやっぱり怖いんですよ。

飯田)あのとき懲りたはずじゃなかったんですかね。

宮家)いや、変わっていないと私は思いますね。ですからこのような形で、日中韓とASEAN諸国が集まって通貨を融通し合う体制を強化するということは極めて大事なんですよね。

問題は、ご指摘のあった通りドルだけじゃなく、今回は円と人民元も入れることです。人民元は、中国と商売している人にとっては結構な話かもしれない。日本も円建でやれば、日本の中小企業にとってはドルよりも助かる。安定性という観念からすれば、関係者にとってそのような通貨を入れることは大事ですよ。

じゃあ中国は大丈夫なのか。中国は入ったから元が国際化するかもしれないけれども、基本的に中国は為替を完全に自由にしてない。リバリッジドローンが引き金になるかどうかは別として、万一次回大きな通貨危機なり金融危機が起きたときに、中国が為替を自由にはしないですよね。おそらく逆に規制を強化するだろうと思う。

そうなってくると、人民元より円の方が良いだろう、円の前にドル、ドルがだめだったらやっぱり円になっていくということの方が、可能性としては個人的に高いと思っていますけどね。

逆にいえば、中国の人民元を本当に国際化したいんだったら、円と同じように為替を自由にして、本当の意味での国際化をちゃんとやんなさいよという圧力になるのかもしれません。その意味では、良くも悪くも両面あるということですね。

飯田)平時のいまの状態でも中国で利益を上げた企業がそれを為替を使って本国に持ち帰ろうとすると、全部は持ち出せない。

宮家)昔に比べればよくなったと思いますけれども、中国という国は何かあったときに最後は必ず規制を自由に強化できる国ですから、何が起こるかわからないという意味ではリスク要因があるということです。

飯田)でも、為替を自由にするという方向に舵を切っていくと、資本の自由化というようなことになると思うんですけれど、これは最終的には政治の自由も求めるみたいなところに繋がっていくのではないですか。

宮家)政治的自由化をやれたら大変なことですが、その前に、私が中国人だったら中国経済が危ないと思ったら自分の財産は全部外国に送金しますよね。そしたら中国から資金が流失しちゃうから、その時点で中国経済がおかしくなってしまう、だから為替の自由化なんて容易にはできないんだと思うんですよね。

飯田)やろうと思ったってできない。

宮家)日本みたいに為替が自由でもちゃんと皆が国債を買っているなんてすばらしい国民ですよ。中国だったら誰も買わないもん。危ないと思ったら全部貯めた金を外国に出して如何に保存するかと、それを考えているはずですよ。

飯田)そうですよね。だって共産党の幹部の子弟は皆アメリカや韓国に留学しているし。

宮家)そうですよ。彼らは自由に送金できるのかもしれないけれど、おかしいですよ。そのような人民元が簡単に国際化するとはとても思えないです。

 

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