花の82年デビュー組の隠れた名曲! 【歌謡曲ここがポイント!】

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歌謡曲 ここがポイント! チャッピー加藤(ヤンヤンハイスクール講師)

最近、ますます注目されている昭和歌謡。
この講座では、日本人として最低限覚えておきたい歌謡曲の基礎知識を、わかりやすく解説していきます。

また週刊文春がやってくれました。中村橋之助の不倫愛スクープですが、その際のマスコミ対応で大いに株を上げたのが、夫人の三田寛子です。その受け答えの見事さはもちろん、50歳になった現在も、16歳で歌手デビューした当時の可憐さがそのままなのは驚くべきことです。

実は私も熱烈なファンだったのですが、ぜひ押さえておいてほしいのは、彼女も「花の82年デビュー組」の一人だということです。リアルタイムで応援していた私から言わせてもらうと、新人賞レースにおいても同期デビューの小泉今日子・中森明菜より下馬評は高く、輝きもトップ級でした。論より証拠、こちらをどうぞ。

駈けてきた処女,三田寛子

デビュー曲『駈けてきた処女(おとめ)』のジャケット。こんなに完璧な制服姿が他にあるでしょうか?まさに「神ってる」。34年経った今も、これを凌ぐ制服ジャケには出逢っていません。しかも作詞:阿木燿子、作曲:井上陽水ですから、CBSソニーがいかに本気だったかが分かります。陽水の春らしいポップな曲調、彼女が生まれ持つ雰囲気をすくい上げた絶妙な歌詞…間違いなく名曲なのですが、残念ながらベスト10にはあと一歩手が届きませんでした。

第2弾『夏の雫』も、同じ阿木・陽水コンビ+編曲に坂本龍一を投入したのですが、曲が難解になったせいか今ひとつ売れず、南沙織『色づく街』をカヴァーするなど、路線も迷走。87年を最後に歌手活動には区切りを付け、タレント・女優の方向にシフトしていきました。独特のはんなり感というか、なぜか惹き付けられるあの歌声は稀有だったと思います。しかし…なぜ売れなかったんでしょうか?

ということで、つい前置きが長くなりましたが、小泉今日子・中森明菜・堀ちえみ・早見優・石川秀美といった「勝ち組」以外にも、82年組には押さえておくべき人材&佳曲があるのです。今回はジャケットと共にご紹介していきましょう。

オリオン座のむこう,白石まるみ

82年組の先陣を切って、1月にビクターからいち早くデビューしたのが白石まるみです。ドラマ『ムー一族』の郷ひろみの恋人役オーディションで、4万人の中から2位に選ばれ(1位は桂木文)、78年に芸能界入り。愛くるしい表情で人気を集めましたが、本人が学業を優先したため歌手デビューは19歳と、アイドルとしては遅いスタートになりました。

デビュー曲『オリオン座のむこう』はプロデュース&作曲は松任谷正隆、作詞は松任谷由実が担当。これも期待の高さが窺えますし、ユーミン作品の中でも隠れた名曲と言われていますが、なぜかセールスは伸びず、オリコンでは最高155位止まり。

星空を見上げながら、知り合って間もない彼に思いをめぐらす乙女心…ユーミンの詞は彼女のキャラにも合っていたと思うのですが、なぜ売れなかったのか、これも不思議でなりません。なお彼女の娘は、グラビアアイドルの守永真彩ですが、今年母娘で「WM」というユニットを結成。「キング・オブ・コント」に出場しました。コントもいいですが、次は母娘デュオもお願いします。

ねらわれた少女,パンジー,真鍋ちえみ

82年組で、これも惜しいことをしたな…と思うのが、真鍋ちえみです。3人組アイドル・パンジー(北原佐和子・三井比佐子・真鍋)のメンバーでしたが、なぜかレコードは別々に、違うレーベルからソロで出すという不思議な戦略でデビュー。

真鍋は三田寛子と同じCBSソニーだったのでよく覚えていますが、デビュー曲『ねらわれた少女』は、作詞が阿久悠、作曲は細野晴臣でした。二人とも気合が入りすぎたのか、かなり難解な作品になってしまい、これまた不発に終わりました。テクノ歌謡のコンピ盤には必ず収録される名曲なのですが、いかんせん早過ぎたのでしょう。

こんなふうに、82年デビュー組の曲には「売れなかった名曲」が他にもたくさんあります。最近は様々な復刻盤で聴くことができますので、ぜひ各自チェックしておいてください。

「82年デビュー組の隠れた名曲」ここがポイント!
<押さえておきたい82年組・異色デビュー曲>(※順位はオリコン)

・伊藤さやか『天使と悪魔(ナンパされたい編)』
…ドラマ『陽あたり良好!』のヒロイン。本人の意思でロックに。最高36位。

・中野美紀『未経験』
…デビュー曲のテーマがなんと妊娠・中絶!アクが強過ぎ200位圏外に。
・ルー・フィン・チャウ『スター誕生』
…ベトナム難民から歌手デビュー。詞曲は谷村新司。最高72位。

【チャッピー加藤】1967年生まれ。構成作家。
幼少時に『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴いて以来、歌謡曲にどっぷりハマる。
ドーナツ盤をコツコツ買い集めているうちに、気付けば約5000枚を収集。
ラジオ番組構成、コラム、DJ等を通じ、昭和歌謡の魅力を伝えるべく活動中。

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