大阪都構想は新しい時代の維新 二重構造解消で大阪全体を大きな都市へ

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ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(4月16日放送)にジャーナリストの有本香が出演。大阪都構想について解説した。

大阪都構想は新しい時代の維新 二重構造解消で大阪全体を大きな都市へ

2019統一地方選 大阪市長に当選が確実になった松井一郎氏(左)と大阪府知事に当選が確実になった吉村洋文氏。笑顔で握手をかわした=2019年4月7日 写真提供:産経新聞社

大阪都構想の行方

都構想を看板に掲げて、4月7日の大阪W選挙を制した大阪維新の会の松井一郎大阪市長と、吉村洋文大阪府知事。この都構想の行方は、地方自治全体にも波及して行くとみられる。

飯田)選挙が終わった直後も、そんな質問が会見で出ていました。大阪としてはこうやって行くのだというところをまず吉村、松井両氏はアピールしていましたが、有本さんに詳しく解説をいただきます。

有本)大阪都構想は、とにかく分かりにくいと言われていますよね。

飯田)みんなそうやって批判していました。

有本)私も数年前は、大阪での民放局のニュース番組に出ていましたけれど、やはり当時も各局でこれは何なのかということをやりました。

飯田)最初の住民投票の時期ですね。

有本)これは各論の部分を変に詳しく砕いてしまうから、逆に全体が分からないのですよ。この問題は実は大阪だけのものではなく、日本の地方自治が抱えている構造的な問題で、特に強大な政令指定都市がある府県にはついてまわっている問題です。ですから、例えば神奈川県と横浜市、あるいは愛知県と名古屋市とか、どこも同じ問題を抱えているのですよね。

飯田)福岡や埼玉や千葉、首都圏の都道府県は皆抱えている感じがしますね。

政令指定都市は「中二階」~戦後の妥協の産物

有本)いちばん顕著なのが横浜なのですけれども、これをある人が中二階だと。

飯田)中二階?

有本)政令指定都市とは、戦後の妥協の産物なのですよ。戦後の占領時代に、GHQが特別市を日本で5つ作ろうとした。この特別市というものは世界中にありますが、非常に強い権限を持った都市です。しかし当時、地元などでなかなか理解が得られなくて、妥協して中二階を作ってしまった。
要するに普通の市が1階だとすると、府県はその上にある2階です。その間の非常に中途半端なものという意味です。権限が強いとは言われますが、とても中途半端な権限だから、両方にとって邪魔になってしまう。特にいまのような時代だと、広域で行政を考える必要が出て来る。
例えば住民サービスは住民の身近なところにあればいいので、基礎自治体がそれをやるのですが、東京であれば区や市町村ですよね。それ以外の、例えばインフラ整備のようなことになると広域的な視点が必要なわけです。でも府とか県のなかに、そういった特殊な権限をもった政令指定都市があると、そこがウンと言わなければ広域で考えたインフラ計画が進まないこともあり得る。ですから、政令指定都市という中二階をそろそろ何とかすべきではないかと言われて、すでに10年以上経つのですよ。

大阪都構想は新しい時代の維新 二重構造解消で大阪全体を大きな都市へ
多くの利害と絡む問題~国会やマスメディアも大きな視点で取り上げるべき

有本)二重行政となる中二階を何とかしようと、議論を前に進めたいがために「大阪都構想」とネーミングしたのです。実は太田大阪府知事の時代からこの二重行政解消は課題になっていたのですが、一向に進まなかった。そして橋下さんの時代にこういう名前がついたのです。しかし、大阪都構想という名前に変なインパクトがあって、誤解を招いてしまったところがあると思う。
それとは別の話として、横浜などは逆に、中二階から自分たちは二階に行きたいと言っています。

飯田)神奈川県とは別に、もう1つ県のようなものをつくる。

有本)そうです。県ぐらいの、特別市という権限の強いところに自分たちは行きたいと言っているのですよ。

飯田)かつての構想にいちばん近い形にしようとしている。

有本)大阪は都構想で大阪市を解体して、大阪全体を大きな都市として考えようとしています。名古屋と愛知県も中京都構想みたいなことを考えていました。要するにこれは、「地方自治の枠組みをそろそろ見直しませんか」という動きなのですよ。ところが、これが多くの人の利害と絡んでしまう。例えばいままで政令指定都市の市議会議員だった人たちが、東京の区議会議員さんと同じような処遇になってしまうのですよ。

飯田)予算は当然縮小しますよね。

有本)しかも自分たちが扱う案件が全部、住民サービスの案件だけになってしまうわけでしょう。そういう点でも大勢の利害が複雑に絡み合うために、本当の目的は何ですかという核心の所ではなく、入り口のところで揉め続けているという実態なのですね。

飯田)ミクロな1個1個の視点で揉めてしまう。

有本)だから、住民から見るとひたすら分かりにくい話になってしまう。本来は国会やマスメディアも、もっと大きな視点で取り上げて議論すべきだと思います。いまは政令指定都市と府県の関係だけですけれども、この府県という枠組みも、廃藩置県からほぼずっと見直しができていないのだから、これはこれでいいのかという部分もありますよね。

時代や生活に合わせた議論をするべき

飯田)それこそ100万人に満たない県もあれば、何千万人という都道府県もある。一言で都道府県と言っても格差があるし、そうなるともっと大きく道州制にするべきなのかという話にもなりますね。

有本)そういう議論をすべきだと思います。だって廃藩置県の頃は、人は歩いて生活をしていたのですよ。いまと移動距離がまったく違うではないですか。そういう点でも大きな議論をすべきだと思いますね。その機会を、大阪都構想をもう1度盛り上げることで全国に波及させるというのであれば、ある意味で新しい時代の維新ですよね。

飯田)やっぱり地元から上がって来ると。

有本)ボトムアップで変えて行くということですよね。それからもう1つ、ダブルクロス選挙の期間中に吉村大阪府知事が「公明党を叩き潰す」みたいなことを言っていました。公明党の関係者には聞きづらい言葉だったかもしれませんが、要するに自公連立は当たり前になっているけれども、果たしてそれでいいのか。日本の政治をダイナミックに動かして行くために、いままでそういう枠組みだけで政治が動いて来ていることにも、一石を投じるきっかけになれば面白いなと思いますね。

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