10時のグッとストーリー

「車いすの人が着たい服を選べる世の中に…」17歳が目指すデザイナーへの道

番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

きょうは、難病を抱えながら「車いす利用者でも、着やすい服をデザインしたい」という夢を持ち、デザイナーを目指す17歳のグッとストーリーです。

車いすの方々のためのファッションを考える 樋口夏美 さん

今年(2019年)3月9日・10日の2日間、福岡市内で一風変わったファッションショーが行われました。モデルは普段、車いすに乗っている人たちがメイン。デザインを手掛けたのも車いす利用者で、そのなかの1人が福岡県八女市に住む、樋口夏美さん・17歳。

「車いすに乗っていると、自分の着たい服が自由に着られなかったりするんです。車いすの人が着たい服を選べる世の中にしたいんです」と言う夏美さんは、小学校1年生の頃に、脊髄性筋萎縮症という病気を発症。

体のなかの動かせる部分がだんだん減っていく難病で、いまは手を肩の位置まで持って行くのが精一杯。鉛筆を持って字を書くのですらひと苦労で、小学生のとき、特に苦労したのが「漢字の書き取り」です。漢字をいくつも書く宿題が出ると、夏美さんは苦しみながら徹夜で仕上げなければなりませんでした。

自らも脊髄性筋萎縮症のため、車いすを使用

朝までに終わらないこともしばしばで、授業に付いていけなくなったこともあり、次第に学校から足が遠のいて行った夏美さん。「……私、ずっと“引きこもり”だったんです」

中学校に進学したものの、ほぼ不登校で過ごしていたある日、当時の担任だった女性教師が、夏美さんにこんな言葉をかけてくれました。「勉強はいつでもできる。生きていかんといかんけん、まずはやりたいことを見つけに来たら?」

学校を「生きるための訓練の場所」と考え、気持ちが楽に

そうか、学校は「行かなければならない場所」ではなく、「生きるための訓練をする場所」と考えればいいんだ……そう考えると気持ちが楽になり、夏美さんは少しずつですが登校を再開。絵を描いたり写真を撮ったり、裁縫や調理実習にも取り組むようになりました。

「周りの人たちと喋りながら助けてもらったり、アドバイスをもらったりして、ああ、1人で抱えずにみんなでやっていけばいいんだ、って気付いたんです」

車いすのままファッションとして楽しめるデザイン服

中学卒業後の2017年11月、福岡市で車いす利用者が集まるイベントが行われ、新たな人たちとの出逢いを求めて参加した夏美さん。運命の出逢いが待っていました。

ファッションショーが行われ、車いすのモデルが着ていた「可愛くて着やすそうな雨ガッパ」に目を奪われた夏美さん。すぐに、そのカッパを手掛けた福岡市在住のデザイナー・鈴木綾さんのところに行ってこんなお願いをしました。「……私も、モデルになりたいです!」

徐々に自分でもデザインがしたくなったという夏美さん

最初はデザイナーを目指すつもりはありませんでしたが、鈴木さんといろいろ話をするうちに夏美さんは、ふとこんなことを思い出しました。

「そういえば私、小学生のとき『デザイナーになりたい』って思ったことがあったんです。障がいがあっても簡単に着られる服を作って、お母さんに楽をさせてあげたい、って」

その言葉を聞いて「いいじゃない、それ! 一緒に作ってみようよ」と鈴木さんに提案され、夏美さんは自分が着たかったスカートをデザインすることに。自分のイメージをラフな絵で描き、鈴木さんが作ってくれた型紙に沿って生地にハサミを入れ、ミシンで縫い……作業を進めて行くうちに、「自分もデザイナーになりたい」という思いが強くなって来た夏美さん。鈴木さんが去年開設した「車いす利用者のためのデザイン講座」で基礎を学び、鈴木さんのお手伝いをするようになりました。

デザインした服とともにモデルとして出演

3月9日・10日に行われた、車いす利用者によるファッションショー。夏美さんは鈴木さんの勧めで子供服をデザインし、その服を着た男の子とお揃いの服を着て、モデルとしても出演しました。お母さんのリカさんが「娘のあんな顔を見たのは初めてです」と言うぐらい、とびきりの笑顔でステージに立った夏美さん。夢はどんどん膨らんで行きます。

「デザインを学んだことで、いろんな人たちと出会うことができました。これからももっとデザインを勉強して、やりたいことをどんどん見つけて行きたいですね」

八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50

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