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お寺のお供え物を貧困家庭へ! グッドデザイン大賞『おてらおやつクラブ』とは

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お寺のお供え物を貧困家庭へ! グッドデザイン大賞『おてらおやつクラブ』とは

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

お寺のお供え物を貧困家庭へ! グッドデザイン大賞『おてらおやつクラブ』とは

グッドデザイン大賞展『おてらおやつクラブ 丸の内別院』

「Gマーク」でお馴染みの「グッドデザイン賞」……使いやすく魅力的なデザインに与えられる賞ですが、2018年度、最も優れた「グッドデザイン大賞」は何だったと思います? 貧困問題解決に向けてのお寺の活動、『おてらおやつクラブ』が受賞しました。モノだけではなく、こういった活動もグッドデザインに選ばれます。

クラブの代表は、奈良県にある安養寺(あんようじ)の住職、松島靖朗さん、43歳です。

お寺のお供え物を貧困家庭へ! グッドデザイン大賞『おてらおやつクラブ』とは

奈良県 浄土宗安養寺・三十二代住職 松島靖朗 さん

子供のころ松島さんは、お坊さんになるのが嫌で「フツーの生活をしたい」と、高校を卒業後に上京し、大学を出て一般企業に就職。その後、企業経営にも従事しました。

東京での生活はとても楽しくて、魅力的な人とも多く出会います。そんな魅力的な人ほど、なぜかフツーの生き方をしていない……自分は、このままフツーに生きて行くべきなのか? そこで松島さん、一念発起し、浄土宗総本山、京都の知恩院で2年半の修行を積み、8年前、35歳で僧侶となります。

お寺のお供え物を貧困家庭へ! グッドデザイン大賞『おてらおやつクラブ』とは

余ってしまうお供え物はたくさん((C)大久保啓二)

お坊さんになって、しばらくすると困ったことが起きました。それは、仏さまやご先祖さまへの「お供え物」が余ってしまうこと。おせんべい、饅頭、羊羹、クッキー、季節のフルーツなどなど。仏さまからの「おさがり」として家族でいただいたり、まわりへ「おすそ分け」したり、それでも増えるばかりでした。

そんなある日、大阪で母と幼い子が餓死するという事件が起きました。「最後に おなかいっぱい 食べさせられなくて ごめんね」、そんなメモを残して亡くなった親子を知り、愕然とします。

お寺には食べ物があるのに、社会の片隅には餓死する母子がいる……お寺と貧困に苦しむ家庭をつなぐことはできないものか。それが『おてらおやつクラブ』を始めるキッカケでした。

お寺のお供え物を貧困家庭へ! グッドデザイン大賞『おてらおやつクラブ』とは

グッドデザイン大賞展『おてらおやつクラブ 丸の内別院』より

まず松島さんは、貧困家庭を支援する団体を介して、大阪の母子家庭2世帯に、お菓子や果物、お米、タオルなどを定期的に送りました。

「そのときは、やり遂げた気持ちがあったんですよ。ところが支援団体から『あれだけではまったく足りないんです』と言われて、初めて貧困家庭が全国的な問題だと知ったんです」

お寺のお供え物を貧困家庭へ! グッドデザイン大賞『おてらおやつクラブ』とは

お供え物の発送会((C)大久保啓二)

「ここでとどまっていたらあかん!」と思った松島さんは、うちと同じようにお供え物で困っているお寺が多いはず、とSNSなどで呼びかけました。すると、47都道府県の寺院や支援団体から連絡がありました。こうして、近くのお寺と支援団体をつなぎ、貧困家庭にお菓子や果物、食品、日用品を届ける支援活動が本格的に始まります。

「日本は豊かな国なので、逆に貧困が見えにくいんですよ。そこで、この活動をもっと多くの人に知ってもらいたいと『グッドデザイン賞』に応募したら、大賞までいただきまして……」

お寺のお供え物を貧困家庭へ! グッドデザイン大賞『おてらおやつクラブ』とは

「おてらおやつクラブ」の活動はまだまだ拡大中((C)大久保啓二)

支援活動をやればやるほど、日本の貧困問題の深刻さが見えて来る、と松島さんは言います。
「おてらおやつクラブ」を始めて5年、手応えも感じるそうです。社会から孤立していた母親から、「お坊さんに見守っていただいているのがうれしい」という声。それから、子どもから数多くの手紙が届きます。そのほとんどが感謝の言葉ですが、なかにはこんな手紙がありました。

「おぼうさん、わがし(和菓子)は、もういいので、ぽてとちっぷ(ポテトチップ)を、おくってください」

「これって子どもの本心だし、成長だと思うんですよ。食べたいものを手紙に書いてくれたことが本当に嬉しかったですね。この活動をして、心と心が通じたような気持ちになりました」

お寺のお供え物を貧困家庭へ! グッドデザイン大賞『おてらおやつクラブ』とは

様々な寺院や団体が活動に協力((C)大久保啓二)

『おてらおやつクラブ』の活動は年々広がりをみせていて、2019年4月現在、1,153寺院、423団体。おやつを受け取った子どもは月間のべおよそ1万人に達しています。

また、「おてらおやつクラブ丸の内別院」が4月22日(月)まで、ニッポン放送の近く、「GOOD DESIGN Marunouchi」で開催中です。会場を「おてらおやつクラブ」に見立て、見に来た方々に活動を体験いただくことで、その仕組みや意義をデザインの視点から解き明かします。

期間中、会場では「おそなえ」を常時受け付けます。「おてらおやつクラブ事務局」を通して、経済的に困難な状況にあるご家庭へ「おすそ分け」としてお届けするそうです。受け付けているのは、2週間以上の余裕がある食品(市販の食品は賞味期限が分かるもの)、タオルや洗剤などの日用品。季節やイベントに合わせた「おそなえ」です。

※酒・アルコール類、換金性の高い金券などはご遠慮ください。

お寺のお供え物を貧困家庭へ! グッドデザイン大賞『おてらおやつクラブ』とは

グッドデザイン大賞展『おてらおやつクラブ 丸の内別院』より

2018年度グッドデザイン大賞展
「おてらおやつクラブ丸の内別院」

開催期間:2019/04/02(火)~2019/04/22(月)
時間:11:00~20:00
休館日:会期中無休
入場料:無料
会場:GOOD DESIGN Marunouchi
東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1F

2018年度グッドデザイン大賞展
https://www.g-mark.org/gdm/index.html

おてらおやつクラブ
https://otera-oyatsu.club

上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

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