月に眠るエネルギーを巡って起こる新たな世界戦争をご存知ですか? 【ひでたけのやじうま好奇心】

中秋の名月

中秋の名月 提供:産経新聞社

中秋の名月。
日本人が月を愛でている一方で、世界では月の内部に眠る新たな物質を巡って、様々な駆け引きが始まっています。

まずは、月を巡る最初の争いの話。
世界で初めて『人工衛星』の打ち上げに成功したのが、1957年ソ連の「スプートニク1号」。
この強烈なカウンターパンチに大きなショックを受けたアメリカは翌年にNASAを発足。
本格的な宇宙開発戦争が始まりました。

ところがその後、人類初の宇宙飛行を成し遂げたのもソビエトの宇宙飛行士ユーリ・ガガーリン。
ソ連に先を越されっぱなしのアメリカは1961年、大統領に就任したばかりのジョン・F・ケネディが議会でこう演説したのです。
「1960年代が終わる前にアメリカは月に人間を着陸させ無事に地球に連れ戻す!」
こうしてアポロ計画がスタートしました。

そして人類が初めて月に降り立ったのはアポロ11号のニール・アームストロングとエドウィン・E・オルドリンJr.。
60年代が終わろうとしていた1969年、ケネディの公約通りなんとか実現したのです。

アポロ計画に隠れて、有人飛行をしなかったソ連の月の探査はあまり知られていませんが、遠隔操作で何カ月も月面車で土壌の化学組成を分析。
無人でも様々な実績を挙げたことがもっと評価されても良かったのですが、アメリカの派手な動きには勝てませんでした。

日本万国博覧会,日本万博,エキスポ70,アメリカ館プレビュー,アポロ11

アポロ11号 日本万国博覧会エキスポ70・アメリカ館 提供:産経新聞社

こうしてアメリカはアポロ17号まで合計24人を月に送りましたが、この宇宙開発に注ぎこんだ費用は現在の価値に直すとなんと12兆円になります。

この膨大な金額に国民から反発が起こり、結局20号まで飛ばす計画が17号に減る結果になりました。

でも、経済的見地に立つと、アメリカは投資した12兆円以上のものを回収しており、宇宙開発によって生み出された3万を超える新製品は現代社会で大きな役割を果たしています。

たとえば、耐久性があり燃えにくくて薄くて軽い宇宙服の「テフロン加工」
現在、消防服や防火性カーテン、フライパンに使われています。
それから宇宙食だった「インスタント食品やレトルト食品」チタンフレームのメガネ、紫外線除けのサングラス、CTスキャン、空気の浄化システム、浄水器。
バーチャル・リアリティもNASAの開発です。

これら、宇宙開発のために考案された技術や材料で、一般に応用されたものを『スピンオフ』と呼んでいますが、宇宙開発の副産物=スピンオフは膨大です。
スピンオフは“トレンディドラマのサブストーリー”ばかりではありません。

中でも一番ダイナミックなのが「システム工学」の構築。
アポロ計画には、NASAの関係者6万人、アメリカ全土に散らばった2万の企業からエンジニア・技術者が40万人動員されました。
これらをまとめ上げる管理体制が「システム工学」でした。
実はこれが、アポロ計画最大の副産物と呼ばれています。

話戻ってこうしてアメリカは1960年代半ばから1970年代半ばにかけて65回の月面着陸がおこないました。
でもそれ以降、ソビエト連邦は金星と宇宙ステーション、アメリカは火星とそれより遠い惑星を目指すようになり、そこから10年以上、月に関心を持つ者はいませんでした。

ところが1990年、忘れられた感のあった月に久しぶりに探査機が接近したのです。
それを送りこんだのは、アメリカでもソビエトでもなく日本!
文部省宇宙科学研究所は「ひてん」を打ち上げ、まず孫衛星「はごろも」を月周回軌道に投入。
これに刺激を受けたのが、アメリカで、22年ぶりに無人月探査機「クレメンタイン」を打ち上げて“月に氷がある”と発表したのです。

 工学実験衛星,ひてん,MUSES-A

工学実験衛星「ひてん」MUSES-A (宇宙航空研究開発機構(JAXA)より)

アメリカはどこか別の国が宇宙に進出するとすぐに反応を示して対抗意識を燃やすのですが、日本の次に火をつけたのが中国。

中国は2007年から月への衛星を打ち上げ始めて、ついに2013年月面に軟着陸し、無人の月面探査機を稼働させました。
その目的は、地球のエネルギー源になりうる「ヘリウム3(スリー)」の採取のためでした。

ヘリウム3とは…
“スイ、ヘー、リーベ、…”と覚えた原子番号の2番目ヘリウム。
ヘリウムと言えば例えば風船の中味とか、吸うと声が変わるガスとしておなじみ。
そのヘリウムは地球の自然界にはあまりないですが、太陽の中にはたくさんあります。
そして、そもそもヘリウムは、巨大なガスの球・太陽の中で水素と核融合反応を起こしてできたもので、これが月の表面に散らばっているのです。

月には大気がないので、月ができてから45億年の間にヘリウム3は月の表面の砂にずっと吸着され続けてきたと考えられていますが…このヘリウム3はとてつもないエネルギー源だと考えられているのです。
計算では、月の砂に吸着されているヘリウム3をすべて使えば、現在の世界で使われている電力の数千年分のエネルギーが得られるとされています。
また、日本全体の1年間の消費電力をまかなうためには数トンのヘリウム3があればよいといわれています。

ヘリウム3は放射性廃棄物や放射線の量も少ない「理想の核融合燃料」です。

ただし、砂そのものがヘリウム3というわけではなく、月の砂100万トンからヘリウム3が10トン取り出せるということなので、処理するのが大変ということで、まだまだしなければいけないことは山積み。

よってヘリウム3によるエネルギーを使えるのは、まだまだ先の話ではあります。
でも、中国の月進出によってアメリカを刺激しヘリウム3を巡った新たな宇宙開発戦争が起こったと見る向きもあります。

Google Lunar X Prize

Google Lunar X Prize(グーグル・ルナ・エックスプライズ)

今、google主催で行われている「月探査コンテスト」。
民間のロボット探査機を月面に降り立たせて、指定された場所から高解像度のムービーや写真を地球に送信するなどのミッションのクリアを競うコンテストで、賞金総額30億円!

着陸地点から500m以上走行することと、月面に純民間開発の無人探査機を着陸させることが条件で、政府または国家主導の月面探査機の場合は、賞金は1,500万ドルに減額されるなど、なかなかユニークなシバリがあります。

2017年のコンテスト終了に向けて、競争に加わる参加者たちの活動を描くドキュメンタリームービー「Moon Shot」の制作責任者をスターウォーズ/フォースの覚醒のプロデューサーJ.J.エイブラムスが務めるなど、話題性も豊富。
アメリカ、イスラエル、日本の民間会社が参戦して新たな宇宙開発に名乗りを上げています。

一時は終わってしまったかに思えた月面探査が、今、新たな側面を迎えていることに思いを馳せながら、中秋の名月を楽しんでみるというのはどうでしょうか。

9月13日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より