人とはさみしい生きもの 【瀬戸内寂聴「今日を生きるための言葉」】 第35回

瀬戸内寂聴

「犀の角のようにただ独り歩め」。

何か自分が行きづまったときや、たとえようもなくさびしいときに、ふっとわたしの口をついて、このお釈迦さまのことばが出てきます。すると不思議に心はなだめられ、不如意も、怒りも怨みも消えてしまうのです。わたしはひそかにこれを自分の呪文としてきました。哀しみや怨みやさびしさに捕らわれている自分が、荒野をさまようただ独りの一角獣に見えてくるのです。

しょせん人間は孤独な動物だったんだという諦念が、あらためて胸によみがえってきます。

瀬戸内寂聴

瀬戸内寂聴プロフィール

撮影:斉藤ユーリ


出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫