ロックンローラー内田裕也が手がけた日本映画たち

By -  公開:  更新:

【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第598回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベりたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

2019年3月17日、79歳で死去した内田裕也。日本のロックンローラーの草分け的存在で、映画俳優としても個性あふれる存在感で観客を魅了して来ました。妻・樹木希林の死からわずか半年での“お別れ”には、誰もが驚いたことでしょう。

そこで今回は、内田裕也の映画俳優・製作者としての魅力が堪能できる4作品をセレクトしました。


映画界においても“仕掛け人”だった! 内田裕也が放った名作、問題作。

ロックンローラー内田裕也が手がけた日本映画たち

※写真はAmazonより

俳優としてはもちろん、フィルムメーカーとしてもその才能を発揮していた内田裕也。なかでも、『十階のモスキート』は名作中の名作です。

妻に離婚され、サラ金に手を出した現職警察官がカネの返済に困り、ついには郵便局強盗を企てるまでを描いた本作は、『水のないプール』につづく内田裕也企画の実録犯罪映画。脚本は、これが映画監督デビュー作となった崔洋一監督と内田裕也が共同執筆しています。

先日行われたお別れ会「内田裕也Rock’n Roll葬」で弔辞を述べた崔洋一監督が、本作の誕生秘話を明かしたところによると、1982年に「頭にきたから映画を作ろうよ。俺は新しい人と組みたいんだ」と、内田から直々に映画制作のオファーを受けたとのこと。「電話の受話器から裕也さんがガンガンと飛び出して来た」と当時を振り返った崔監督の言葉どおり、ロック魂あふれる傑作です。特に、真面目に生きる警察官が徐々に狂って行く過程を迫真の演技で魅せる内田裕也は必見!

ロックンローラー内田裕也が手がけた日本映画たち

※写真はAmazonより

内田裕也演じるテレビの人気突撃レポーターの奮闘を通じて、ワイドショーに踊らされる大衆を皮肉った快作『コミック雑誌なんかいらない!』。本作で内田裕也は、「キネマ旬報賞」主演男優賞、「報知映画賞」主演男優賞、「毎日映画コンクール」では共同脚本の高木功とともに脚本賞も受賞。カンヌ国際映画祭監督週間にも出品され、海外でも評判となりました。

ロス疑惑、日航機墜落、豊田商事事件など実際に起こった事件を取り入れたり、当時、世間をお騒がせしていた芸能人や事件の主役が実名で本人が出演するなど、現実と虚実が入り乱れた問題作で、これまで反社会的な映画を企画・主演して来た内田裕也の面目躍如とも呼べる作品です。

ロックンローラー内田裕也が手がけた日本映画たち

※写真はAmazonより

パリでのオールロケと内田裕也・ビートたけし・宮沢りえという豪華キャスト共演が話題となった『エロティックな関係』。レイモン・マルローのフレンチ・ミステリー「春の自殺者」をベースにした、奥山和由製作総指揮、内田裕也製作・脚本(長谷部安春と共同)・主演のサスペンス映画です。

内田裕也の俳優としての魅力は、自我を消して“役”になりきる、所謂“役者道”とは真逆で、自身の個性や存在感を全面に押し出して演じるところにあるのであって、彼が演じるキャラクターさえも自分の“色”に染めてしまう。そして、その存在感、過激さ、エネルギッシュさは決して押し付けがましいものではなく、独特の危うさと味わいに満ち満ちているからこそ、観る者の視線を惹きつけてしまうのでしょう。本作でも、パリの街を黙って歩く内田裕也の姿は、それだけで絵になります。

ロックンローラー内田裕也が手がけた日本映画たち

※写真はAmazonより

内田裕也にとって最後の映画出演作となった『星くず兄弟の新たな伝説』。1985年に公開された伝説のカルトムービーの30年ぶりの続編で、スターを夢見て月にやって来た男たちが、成功するために必要な“ロック魂”を探す冒険に出るロックミュージカル映画です。本作で内田裕也が演じた役どころは、何と、ロックの神様! いやはや、これ以上の適役はない! 何ともナイスなキャスティングです。

本当に“ロックの神様”になってしまった裕也さん、きっと今頃は奥様の樹木希林さんとともに、天国でロックンロールしているのでしょうね。改めて、ご冥福をお祈り申し上げます。ロック魂よ、永遠なれ!

ロックンローラー内田裕也が手がけた日本映画たち

<作品情報>
十階のモスキート(1983年)
DVDリリース
監督:崔洋一
脚本:崔洋一、内田裕也
出演:内田裕也、アン・ルイス、小泉今日子、中村れい子、宮下順子、風祭ゆき、ビートたけし、横山やすし、阿藤海、清水宏、下元史朗、鶴田忍、梅津栄、小林稔侍、高橋明、浅見小四郎、草薙良一、伊藤公子、安岡力也、仲野茂、趙方豪、吉行和子、佐藤慶

コミック雑誌なんかいらない(1986年)
DVDリリース
監督:滝田洋二郎
脚本:内田裕也、高木功
音楽:大野克夫
出演:内田裕也、渡辺えり子、麻生祐未、原田芳雄、小松方正、殿山泰司、常田富士男、ビートたけし、スティービー原田、郷ひろみ、片岡鶴太郎、港雄一、久保新二、桑名正博、安岡力也、篠原勝之、村上里佳子、小田かおる、志水季里子、片桐はいり、橘雪子 、趙方豪、梨元勝 、嶋大輔、三浦和義、桃井かおり、逸見政孝、横澤彪、伏見直樹とジゴロ特攻隊、螢雪次朗、ルパン鈴木、池島ゆたか、藤井智憲、真堂ありさ、しのざきさとみ、清水宏 、長友啓典、川村光生、叶岡正胤、斉藤博、新井義春、高橋良明、金野恵子、青柳文太郎、掛田誠、小寺大介、篠田薫、泉本教子、河原さぶ、下元史朗、池島ゆたか、斉藤博、おニャン子クラブ

エロティックな関係(1992年)
DVDリリース
監督:若松孝二
脚本:内田裕也、長谷部安春
製作総指揮:奥山和由
出演:内田裕也、宮沢りえ、ビートたけし、荒戸源次郎、佐藤慶、宇崎竜童、叶岡正胤、斉藤洋介、ジョー山中、ジェニファー・ガラン

星くず兄弟の新たな伝説(2018年)
2019年3月2日DVD&Blu-rayボックスリリース
監督:手塚眞
脚本:手塚眞、ケラリーノ・サンドロヴィッチ
原案:近田春夫
音楽:近田春夫赤城忠治、窪田晴男、江蔵浩一、麻来
出演:三浦涼介、武田航平、荒川ちか、ISSAY(DER ZIBET)、藤谷慶太朗、高木完、久保田慎吾、谷村奈南、田野アサミ、ラサール石井、板野友美、野宮真貴、浅野忠信、夏木マリ、井上順、内田裕也 ほか
特別出演:リリー・フランキー、綾小路翔、高田文夫、庵野秀明、犬童一心、黒沢清、林海象、浦沢直樹、石井岳龍、サンプラザ中野くん、伊武雅刀 ほか
©2016 星くず兄弟プロジェクト
公式サイト stardustbros.com

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

Page top