「令和」~「万葉集」から引いたこれだけの理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月2日放送)にジャーナリストの有本香が出演。新元号を巡り、日本の文化、国柄などを改めて解説した。

「令和」~「万葉集」から引いたこれだけの理由

新元号を発表する菅義偉官房長官=2019年4月1日午前、首相官邸 写真提供:産経新聞社

新元号「令和」~日本の古典から初となる、万葉集からの出典~

安倍総理)今回は歴史上初めて国書を典拠とする元号を決定しました。特に万葉集は1200年余り前の歌集ですが、一般庶民も含め、地位や身分に関係無く幅広い人々の歌が納められ、その内容も当時の人々の暮らしや息遣いが感じられ、正に我が国の豊かな国民文化を象徴する国書です。

新元号「令和」に関する総理の会見の模様。4月1日、政府は新元号「令和」を発表。新元号の出典は日本最古の歌集、万葉集だった。これまでの元号は中国の古典から選ばれて来たが、政府は今回、漢文学に加えて国文学、日本史学、東洋史学の専門家にも元号案を依頼し、初めて日本の古典が出典となった。

飯田)皇太子殿下の即位に伴う5月1日から、この「令和」という元号が施行となるわけであります。いろいろな論点が指摘されていますが、総理が質疑応答のなかで若い人たちへどういうメッセージがあるのかと聞かれた辺り、平成のヒット曲にも触れながら述べておりました。お聞きください。

安倍総理)平成の時代のヒット曲に「世界に一つだけの花」という歌がありましたが、次の時代を担う若者たちが明日への希望と共に、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そのような若者たちにとって希望に満ち溢れた日本を作り上げていきたいと思っています。

飯田)批判しようと思えば、いくらでもされるものです。命令の令だと、上から目線だという批判が出ていたりしますが、出典は万葉集。

有本)そうですね、野党の方からそういう批判が出ているのは毎度のことだと思うのですが、残念だなあと思ったのは、自民党のなかの石破さんも同じようなことを言っているところですね。
今回は異例尽くしですよね。漏れたら他のものにするという対応策だったようですけれども、政府関係者も、昨日の新元号発表が無事に漏れることも無く本当にほっとしているようです。200年ぶりの御譲位ではないですか。光格天皇以来ですから、言ってみれば生きている人のなかでは前例のないことをやるわけです。伝統に乗っとりながら、現代の国民の理解を得て進めなくてはいけない。それでいて、いろいろなことに遺漏があってはいけないでしょう。これからまだ御即位の儀式もありますけれど、ほっとしたという雰囲気だったようですね。

文化のクロスオーバーを象徴する典拠である「万葉集」

有本)典拠を初めて、万葉集という国書から出典したということですけれども、総理もおっしゃっていたように、万葉集は本当に画期的なものだと今更のように思います。1300年前に4,500首くらいの歌が収められている、日本最古の歌集ですよね。これがまた驚くことに、天皇や貴族、あるいは豪族、こういう人たちが歌を詠むのはわかるではないですか。でも一般庶民である、防人から農民、遊女までの歌も収められているのは世界に例がないですよね。しかも1300年前です。そういう意味では、歌というものを遍く人が詠んでいたこの文化力の高さ。それから、歌の前では身分よりも歌の良し悪しが評価される、これはすごいことだと思いますよね。昨日のトレンドワードのなかにも万葉集も挙がっていました。手前味噌になりますけれど、去年私が編集して出た『日本国紀』という本にも万葉集の先進性について厚く書かれていますが、今後この万葉集にも注目が集まるといいですよね。

飯田)そして外との関わり方というか、批判する人は漢籍の孫引きみたいなものだと言っていますが、それを「中国ではこういう歌われ方をしているそうだが、我々は身分の違いなく歌を詠もう」という外との関わり方、ワンクッション消化してから出して行くというような。

有本)きょうの朝刊各紙も一面で、大きな見出しでこの件を書いていますが、少しずつ違います。そのなかで意外に良いなと思ったのは日経新聞の記事ですね。日経新聞はその辺りをうまく表現しています。春秋という、一面の下の囲みのところです。

飯田)朝日新聞で言うところの天声人語みたいなものですよね。

有本)「文化のクロスオーバー」という言葉を使っているのですね。万葉集から引いているのだけれども、アジア文化との関わり、そういうものを背景に持つことも今回典拠したものにあります。もちろんそこでの意味は違うのですが、そもそもの伝統としては漢籍からいい言葉を見つけて来るということです。

独自の元号を使う~外からのものを取捨選択してきた日本

有本)これはちょっと誤解があるのですが、元号を現在使っているのは日本だけですよね。かつては中国の王朝、或いは朝鮮半島、ベトナムも使っていた。日本は元号も用いるということだけは中国の王朝に倣った。だから漢籍から引いて来ました。しかし日本は独自の元号なのですよね。701年でしたか、大宝という元号が始めだろうと言われていますけれど、このときから独自の元号です。
ところが朝鮮半島は服属関係にあったので、中国の元号を使っています。日本だけが、元号を使うところだけは学んだけれども、独自であるという部分に「日本がどのように生きようとしていたのか」ということが1つわかります。
改めて自分たちの国のことを勉強するいい機会にもなったと思います。ある地方紙がアンケートを取ったら、若い世代ほど新元号に肯定的なのですよ。面白いですね。

飯田)足下を見直して、もう1回知ろうという。

有本)そうですね。20代、30代までの世代がむしろ元号が変わることに対する期待感が強い。これは面白いし希望が持てますね。総理の会見のなかで私もそうだなと思ったのが、万葉集そのものが1300年昔のものであるけれども、日本の国民文化の高さを表しているものだということです。そういう国柄をこれからも伝えて行かなければいけないと。本当にそうだと思いました。

飯田)批判する向きは、それこそこれで内向きになるみたいなことを言いますが、そうではなくて、そもそも論として外に開かれた上で自分たちで消化した言葉を出している、それが万葉集だということですね。

有本)元号がそうであるように、外から入って来たものを自分たち流に着直してしまうところが、日本人の1つの伝統です。だからと言って、大陸にあったものを全部受け入れているわけではない。昔も取捨選択しているのですよね。いくつかの中国王朝にあった制度、風習、こういうものでも日本が敢えて入れなかったものはいくつもありますから。宦官はないし、科挙の制度もないですね。

飯田)そういう難しい試験だけの試験秀才をとるというのも。

有本)ありません。それから律令制度は向こうに学んで作ったけれども、これもかなり日本流にアレンジをしています。いまでも日本人は外来の文化を自分たちのものにしてしまう文化があります。これらも含めて国柄だということも、今回いろいろな意味で見直す必要があると思いますね。

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