日本ハム・斎藤が試される「オープナー」という役割

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、19日に行われたオークランド・アスレチックス戦で好投した、北海道日本ハムファイターズ・斎藤佑樹投手のエピソードを取り上げる。

日本ハム・斎藤が試される「オープナー」という役割

【プロ野球MLBプレシーズンゲーム日本ハム対アスレチックス】日本ハム先発の斎藤佑樹=2019年3月18日 東京ドーム 写真提供:産経新聞社

「とてもいい経験だったし、野球選手として楽しかった」(斎藤)

19日、東京ドームで行われたプレシーズンゲーム、日本ハム−アスレチックス戦。このゲームに先発登板したのが、斎藤佑樹でした。

早稲田実業時代、夏の甲子園優勝で「ハンカチ王子」と呼ばれたのは13年前。早稲田大学を経てプロ入りし、今年で9年目。1年目は6勝、2年目は5勝を挙げましたが、その後の6シーズンは合わせてわずか4勝。昨年(2018年)も2軍暮らしが多く、3試合に登板して0勝1敗でした。

再三、チャンスを与えられながら結果を出せないもどかしさに、「斎藤はもう終わったんじゃないか」という声も出るなか、今シーズンは実戦登板で好投を続けています。

アスレチックス戦も、メジャーリーガーを相手に先発で2回を投げ、1安打1失点。その1安打はピスコティに食らったホームランだけで、球速こそ最速138キロ止まりですが、抜群の制球力と、変化球を交えた配球でバッターのタイミングを外し、最少失点でマウンドを降りました。

「1人1人の打者を、丁寧に抑えることを意識している」

と語る斎藤。これで実戦登板は4試合目ですが、計9イニングを投げ、失点は今回の1点のみ。「今年の斎藤は、何かが違う」と、投げるたびに周囲の評価も上がっています。

ところで気になるのは、栗山監督の起用法です。4試合すべて先発なのですが、最長は3イニングで、いずれも早々と斎藤を降板させているのです。アスレチックス戦終了後の公式会見で、栗山監督は隣に座った斎藤に頭を下げました。

「佑樹、ごめんなさい。本当は長く投げさせてあげないといけないけど……」

先発で使うつもりなら、なぜすぐに降板させるのか?……そこで思い浮かぶのが、いまメジャーで新たなトレンドになりつつある「オープナー」としての起用です。

ふつう先発投手は、勝利投手の権利が付く5イニング以上投げることを目標にマウンドへ上がりますが、「オープナー」は主にリリーフ投手が務め、上位打線を抑えてマウンドを降ります。その後は、本来の先発である2番手投手が6回ぐらいまで投げ、あとは継投で逃げ切る、という戦略です。

こうすると、相手打者は「第1打席の配球を参考に、第2打席で狙い球を絞る」ということができなくなりますし、序盤で失点する可能性も低くなります。さらにチームにとって大きいのは、いわゆる「ローテーションの谷間」をオープナーが埋めてくれれば、先発要員が1人少なくて済むのです。

実は今シーズン、日本ハムの開幕ローテは、上沢、有原、オリックスから移籍した金子、マルティネスの4人が当確ですが、あと2枠が埋まっていない状態です。もし斎藤がオープナーとしてフル回転してくれたら、先発のコマ不足を解消できます。

策士で知られる栗山監督のこと。金子も移籍会見でオープナーに興味を示していましたし、もしかすると先発投手+複数のオープナーでローテを回す、という戦略も視野に入れているのかもしれません。斎藤はこうコメントしています。

「目の前の打者を抑えることに集中して、後の起用法は監督に任せます」

新戦略で、斎藤再生なるか? これがうまく行けば、大谷の二刀流に続き、日本球界にまた革命が起こりそうです。

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