コミュニケーションで使ってはいけない3つの言葉とは?

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「メディアリテラシー」では、フリーアナウンサー柿崎元子が、メディアとコミュニケーションを中心とするコラムを掲載している。今回は、コミュニケーションのズレについて解説する。

コミュニケーションで使ってはいけない3つの言葉とは?
【他者の視点を持つ】

自分はコミュニケーション下手だと思い込んでいる人は案外多いものです。人前で自己紹介するのが恥ずかしい、他人に話しかけるときに何を話したらよいのかわからない、突然では嫌がられるのではないか、異性から話しかけられるのは迷惑だと感じるのではないかなど、人と関わることについて心配している人が多いと感じます。

最初にお話ししておきますが、コミュニケーションにおいていちばん大切なことは「他者の視点を持つ」ことです。つまり相手の立場になることや相手の目線で考えること。自分の発する言葉が相手にとってどう受け止められるのかを常に考えながら話す。これが上手な対話の極意です。しかし、相手の立場で考えるのはそう簡単なことではありません。なぜなら人によって価値観、考え方、感じ方が違うからです。

私たちは自分の尺度でモノを考え、自分を中心にしがちです。先日、女子高生から聞いた面白い話を事例としてお話しましょう。学校内で女子に圧倒的に人気がある数学のN先生が転勤することになったそうです。以下、会話で説明します。

A子:ねぇねぇN先生、春から◯◯高校に転勤しちゃうんだって。
P美:聞いたよー、すっごくショック!
A子:私もマジ泣いたわー。でさ、最後の日に花束あげたいんだよね。どう?
Y代:私もそう思ってたんだよね。みんなで少しずつ出し合えばいっぱい買えるよね。
A子:あ、じゃーピンクのチューリップとかどう? きっとかわいいよね。
Y代:黄色のチューリップも入れようよ。むちゃくちゃいい感じ。
M子:でもさ、N先生恥ずかしいんじゃない? 一人暮らしの家に花持って帰っても困るだろうし。
P美:だったらスタバのプリペイドカードにすれば? かさばらないし。
Y代:いやー、金額がわかるものはあげたくないなぁ。
A子:そうだよ、やっぱり気持ちをこめて花がいいと思うけど…。
M子:気持ちこめたら重すぎない? 勘違いされても困るし。
全員:うーん。

コミュニケーションで使ってはいけない3つの言葉とは?
【価値観が違うことで生じる意見の違い】

みなさんはどうお考えになりますか? 私は、2つのグループで価値観の違いが典型的に出ていて興味深いと思いました。
A子やY代の意見は、“自分たちの気持ちを花に込めて表現したい”という主張で、主語はWeです。P美やM子は先生の視点で話していて、N先生が嬉しいか否かが論点となっています。ふたりは“実際に使ってもらいたいモノ”を主眼に話しているので、その点であえて分けるとすれば、物をあげるか、気持ちを示すか…という選択肢かと思います。

コミュニケーションで大切なことは「他者の視点を持つ」こととお話しました。そう考えると後者の2人の方がN先生の気持ちを考えていると理解することができます。しかし、ここで花を贈りたいと言った2人の気持ちも考えてみましょう。花も形があるモノですからプリペイドカードと本質的には同じです。しかし、2人の頭のなかでは花は記念に贈る大事なモノであり、自分たちの好きな花を送ることが究極的に感謝の気持ちを示すことと同義なのです。

このように、価値観の違いが意見の相違になることは日常よくあることです。女子高生たちは一時考え込んでいましたが、もう少し調べることにしたそうです。決め手になるのはやはり相手の気持ちや考え方、つまりN先生の情報です。N先生がモノをあげると喜ぶのか、気持ちを示すことに感動するのか。また、花が好きなのか、ピンクや黄色の花でよいのか、スターバックスに行く人なのか、そもそもコーヒーが飲めるのかなど情報を集めることにしました。何をあげることになっても、お互いに意見を出し合い様々な選択肢を議論したことは、彼女たちにとって有意義な時間になると思います。


【3Dead Wordに気をつけよう】

人にはそれぞれに考え方があり、それは“個性”に関わることでもあります。相手と考え方が違っても、どちらかが間違いというものではありません。自分の考えが絶対ではない、つまり方法論が違えば別の意見も存在することを忘れないようにしましょう。

さて、もうひとつコミュニケーションのズレを防止する方法についてお話しておきましょう。3つのDから始まる次の言葉を使わないようにするというものです。それは「でも、だって、どうして」です。これらは相手の意見を否定する言葉です。ズレを決定的にすると言っても過言ではありません。

あなたが何か提案を受けたとしましょう。それに対して「でもお金がかかりますよね」とか「だって大変ですよ」あるいは「どうしてしなければならないのですか」と言ったとしたら、相手はどう思うでしょうか。意見が違うのだなと感じるでしょう。一気に気持ちがマイナスに触れ、行動する力を減退させてしまいます。
私は3つの悪い言葉の意味で3Dead Wordと呼んでいます。3Dは意見の違いを表面化させ、次の行動にブレーキをかけてしまいますので気をつけましょう。「なるほどそういう考え方もありますね」「いい考えですね」などと共感するのがよいと思います。

春は別れもありますが出会いも多くあります。新たなコミュニティーで初めての人に接すると、物おじしない人や誰とでも仲良くなれる人がうらやましくなります。相手の考え方や存在を認めることから始めてみましょう。そしてどんな話をしたらこの人は喜んでくれるだろうか、どんな声掛けをしたら相手は自然に会話に参加できるだろうか、など相手目線で考えてみてください。一生懸命考えているうちに緊張感は吹き飛んでしまいますよ。

コミュニケーションで使ってはいけない3つの言葉とは?

連載情報

柿崎元子のメディアリテラシー

1万人にインタビューした話し方のプロがコミュニケーションのポイントを発信

著者:柿崎元子フリーアナウンサー
テレビ東京、NHKでキャスターを務めたあと、通信社ブルームバーグで企業経営者を中心にのべ1万人にインタビューした実績を持つ。また30年のアナウンサーの経験から、人によって話し方の苦手意識にはある種の法則があることを発見し、伝え方に悩む人向けにパーソナルレッスンやコンサルティングを行なっている。ニッポン放送では週1のニュースデスクを担当。明治学院大学社会学部講師、東京工芸大学芸術学部講師。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修士
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