大統領選出馬表明の米元下院議員ベト・オルーク氏~その人物像とは

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月15日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。アメリカ大統領選へ出馬を表明した民主党ベト・オルーク氏について解説した。

オバマ氏の再来か~アメリカの民主党、オルーク氏が大統領選への出馬を表明

アメリカ民主党のベト・オルーク元下院議員は14日、2020年アメリカ大統領選挙への出馬を表明した。46歳のオルーク氏は、メキシコ国境に近い南部テキサス州エルパソ出身の白人男性。物腰や演説の口調などがオバマ前大統領や故ロバート・ケネディ元上院議員を連想させることから、若者を中心に人気がある。保守王国と言われるテキサス州で行われた去年の上院選では共和党の現職をギリギリまで追い詰め、民主党のホープとして脚光を浴びている。

飯田)テキサス・共和党の現職の上院議員と言うと、大統領選にも出た人ですよね。

宮家)そうです。テッド・クルーズさんという人で、どちらかと言うと保守的な人ですけれども、民主党のジョンソン大統領はテキサス州の知事でしたから、一昔前はこの州は民主党の牙城だったのです。それがレーガン政権以降、保守系の民主党員がみんな共和党に寝返ってしまって、いまは共和党の方が強いのですが、そのなかでオルーク氏はテッド・クルーズ上院議員に肉薄した。その意味では希望の星なのです。オルークと言うくらいですから、アイルランド系ですよね。
面白いのは、ベトという名前。これは確かスペイン語のニックネームです。本当はロバート・フランシスという名前もありますが、この人はスペイン語がペラペラです。

飯田)なるほど、テキサスだし。

宮家)そして白人男性ではあるので、オバマさんのように「初めての」という話題性があるわけではないけれど、トランプさんのいい加減なところを見ていると、この人がとてもまともに見えるのです。しかも左派ではなく中道なのですよ。弁舌爽やかで、安心して聴いていられるので人気が出て来ました。そうは言っても、エルパソの市会議員から下院議員になって6年くらいやったけれども、一介の下院議員が大統領選に出るなんて普通はないですよ。米国内政ではまったく常識に反するのだけれど、トランプさんでも大統領になれるのだったら下院議員だってなれるのでしょう。今彼は民主党大統領候補の1人の可能性として脚光を浴びています。会ったことはありませんがスピーチや話し方を見ていて、この人はまともだなと思います。

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分裂する所属政党をまとめられるかが鍵

宮家)ただ、問題はアメリカがいま2大政党ではないことなのです。共和党が2つに割れて、民主党も2つに割れて4つの政党があるような状態です。つまり、まともな共和党と変な共和党、まともな民主党と変な民主党。この人はどちらかと言うと、まともな民主党なのだけれど、中道でも左傾化が進んでいる民主党のなかではリベラルな人たちからは反感を買って、必ずしも民主党をまとめることができるかどうかはわかりません。民主党をまとめないと大統領選挙には出られないでしょう。だけど、あまり左に寄ってしまうと今度は本選挙で勝てなくなってしまう。
左に寄ると、トランプさんに「あいつは社会主義者だ」とレッテルを張られるので、中道にいてトランプさんがいかに変かということを印象付けなければいけない。それをやるためには予備選で勝たなければいけない。そのために左の人たちをやっつけなきゃいけないのが、彼にとっての課題です。しかも民主党内ではいま十数人の候補者が出ているから、そのなかから勝ち抜いて頭を出すのは非常に難しいと思います。しかし、良い候補者の1人だとは思います。

飯田)予備選に勝つためだと割り切って、予備選用の政策と本選用の政策を分けて出したりすると……。

宮家)二枚舌と言われるだけですよね。米国の大統領選挙では過去の記録は全部残っているから、信用できないと思われても仕方ないです。日本の選挙も難しいとは思うけれど、アメリカは良くあんな消耗なものを1年以上もやるよね。プライバシーもないし、下手をしたら高校、大学時代に何をやったかまですべて調べられる。非常にしんどい仕事だと思いますよ。

元副大統領も出馬表明

飯田)この方は46歳。若手が出て来る一方で、オバマ政権の副大統領だったバイデンさんが出るのですね。

宮家)彼が10年若ければ大統領になっているかもしれません。トランプさんが民主党から取ってしまった白人男性・ブルーカラー・低学歴の票、バイデンさんはある意味でこれを体現している人なのです。白人男性で中小企業を知っていて、労働者の気持ちも分かっています。本当は2016年にヒラリーさんではなくて、彼が大統領選に出ていたらまた状況は変わったのかもしれませんが、もう75歳を過ぎてしまった。もっとも、トランプさんも70を過ぎているから老人対老人の戦いになるのかもしれないですが。「若いフレッシュな」というものがアメリカの民主主義の基本だと思うので、個人的にはバイデンさんはちょっと難しいと思います。

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