しゃベルシネマ

大人になりたくなかった“あの頃”を覚えてますか?

【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第585回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、3月15日に公開された『まく子』を掘り起こします。


直木賞作家・西加奈子の小説が、せつなくも美しい世界に…


山あいの温泉街で、旅館「あかつき館」を営む両親と暮らすサトシは小学5年生。母・明美は代々続くあかつき館を切り盛りし、父・光一は料理長として働いている。町では誰もが顔見知り、クラスメイトも小さい頃からずっと一緒で変わらない。そんな環境のなかで、サトシは自分の体の変化に悩み、女好きの父親に嫌悪感を募らせていた。

ある日、コズエという美しい少女が転入して来る。彼女の不思議な言動に最初は困惑していたサトシだったが、コズエが抱える大きな“秘密”を知ることで、サトシがいままで見て来た世界に変化が現れて行く…。


西加奈子が『サラバ!』で第152回直木賞を受賞後の1作目として書き下ろした小説「まく子」。児童小説でありながら異例の売り上げ部数を記録し、幅広い世代から愛されるストーリーが待望の映画化となりました。


主人公のサトシを瑞々しく演じるのは、連続テレビ小説「梅ちゃん先生」や映画『真夏の方程式』での好演が印象に残った山﨑光。猛烈な速さで体が大人に変わって行く女子たちを恐ろしく感じ、精神的に成長しない男子たちを冷めた目で見つつも、大人へと変化して行く自分に戸惑いを覚えるという、思春期の少年が持つ“ゆらぎ”を繊細に体現しています。

不思議な美少女・コズエ役には、これまでモデルとして活躍して来た新音(にのん)。サトシと同い年ながらも大人への階段を天真爛漫に上って行く少女を演じる姿は、初演技とは思えないほど自然体の美しさを放っています。

共演には須藤理彩、つみきみほ、村上純(しずる)、根岸季衣など、大人たちの名演も見応えたっぷり。なかでもサトシの父親・光一役を草彅剛が、色気のある演技で新境地を開拓しているのも注目です。


子どもから大人への過渡期に体験する恐怖、憧れ、楽しみ、不安。思春期って様々な感情を経験するけれど、過ぎてみればなんて素敵な時間だったのだろう…。そんな気づきさえも与えてくれる、不思議な映画です。

幸福感に包まれる優しいラストが、きっとあなたの“明日への1歩”をそっと後押ししてくれることでしょう。


まく子
2019年3月15日からテアトル新宿ほか全国ロードショー
監督・脚本:鶴岡慧子
原作:西加奈子「まく子」(福音館書店 刊)
主題歌:高橋優「若気の至り」(ワーナーミュージックジャパン/unBORDE)
出演:山﨑光、新音、須藤理彩、草彅剛、つみきみほ、村上純(しずる)、橋本淳、内川蓮生、根岸季衣、小倉久寛
©2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)
公式サイト http://makuko-movie.jp/


八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。
機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。
初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。
トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com

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