2年目のジンクスを打ち破れ ダイヤモンドバックス平野

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フリーアナウンサーの節丸裕一が、スポーツ現場で取材したコラムを紹介。今回は、昨季、日本人ルーキー最多登板記録を塗り替えたダイヤモンドバックスの平野佳寿を分析する。

2年目のジンクスを打ち破れ ダイヤモンドバックス平野

ロイヤルズ戦の6回に登板し、1回を無安打無失点に抑えたダイヤモンドバックスの平野佳寿投手=2019年3月5日、アメリカ・アリゾナ州サプライズ 写真提供:時事通信

J SPORTSでのスプリングトレーニング取材中に、ダイヤモンドバックスのキャンプ地スコッツデールで平野佳寿と会うことができた。昨季は日本人ルーキー最多登板記録を塗り替える75試合に登板。前半戦からオールスター選出の可能性さえある好投を続け、シーズン終盤にはクローザーを任されるようになった。2年目の今季をどんな心境で迎えるのだろうか。平野にいろいろ話を聞くと、1年目の成功の理由が分かった気がした。あまり難しいことを考えないのだ。

日本球界からメジャーリーグに移籍した投手の多くは、滑るボール、硬いマウンドに苦労するが、加えて先発投手、救援投手ともに、登板間隔や登板までの準備の仕方に戸惑うことも多い。先発なら、中4日を基本とする調整、救援なら指示があってから日本時代よりかなり少ない球数で肩を作らなければいけないことなどだ。

平野にその辺りをぶつけると「10球ぐらいで肩を作らないといけないんだ、とすぐ分かったので、それはそれでやろうと思いました。作りきれなくても、マウンドに行ってからも投げられるわけだし。いろいろ、割と早くに慣れましたね」。

さらに、武器とする落ちるボールについても尋ねると、平野投手のフォークボールはとりわけ回転数が少なく、落ち方が一定ではないとのこと。「どう落ちるか自分でもわからない」と軽く笑って話していたが、投げた本人が分からないような変化だから、相手打者に狙い撃ちされたとしても、完璧に捉えるのは容易ではないだろう。この回転数の少なさは、ボールをリリースするときの手首の使い方から来るそうで、ボールを持って実演してくれたのだが、本人が回転数を少なくすることを狙ってそうしているわけではないとのこと。昨季指摘されて「あー、そうなんだ」と思ったそうだ。

やるべきことをやりながらも、余計なことは考えない。どこか他人事のように軽く考える。アメリカ向きだな、と感じた。

昨季の活躍で、今年は他球団から研究されることは間違いない。それでも昨季を越えて行くために、新しいボールに取り組んでいる。「やはり、まっすぐと落ちるボールだけではなく、第3のボールがあれば的も絞りにくくなるので」。

平野は京都産業大学時代からスライダーとカーブを投げていて、オリックス入団後も先発時代は直球、フォークに、この2球種を織り交ぜていた。その後リリーフに転向し、ほぼ全て直球とフォークだけ、という組み立てになったのだが、今回取り組んでいるカーブは、かつて日本で投げていたカーブとは握り方を変えた。「この握りだとボールをよく弾けるし、回転の仕方が4シームになる。日本時代の握りだと回転が2シームだったんですけど」。つまり、よりスピンの効いたカーブが投げられるというわけで、ここまでは感触は良いそうだ。 先日書いた通り、田中将大も新たにナックルカーブに取り組んでいるし、前田健太も自身の武器を増やそうと新しい握りのカーブとスプリットチェンジとも呼ばれる新しいチェンジアップの精度を上げようとしているそうだ。

メジャーリーグは日々変化し、進化する。そのなかで生き残り、さらにステップアップして行くために各選手が取り組む新しい球種。彼らが新たな武器をどのように使って行くのか、そのピッチングスタイルの変化にも注目したい。

さて、2年目の今季について平野に尋ねた。ハーパーがナ・リーグ(フィリーズ)に残り、アレナドも契約延長、マチャドが同地区のパドレスへ移籍、とメジャーリーグを代表する強打者との対戦が増える可能性があるのだ。「正直、ピンチでは対戦したくないです」と笑顔で答えた平野からはマイペースで順調に調整が進んでいるからこその余裕が感じられた。アメリカでも言われる「2年目のジンクス」を乗り越えて、昨季以上の活躍を見せてくれることを期待したい。

節丸裕一(せつまる・ゆういち)
プロ野球実況19年目、MLB実況18年目のフリーアナウンサー。キャンプから、オールスター、日本シリーズ、Wシリーズ、日米野球、WBC、プレミア12など、野球の主要な国際大会の実況、取材多数。

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