スポーツアナザーストーリー

中大・堀尾 東京マラソン5位は河川敷のおかげ 

話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、3日に行われた東京マラソンで、初マラソンにして、みごと日本選手トップの5位に入賞した中央大・堀尾謙介選手のエピソードを取り上げる。

東京マラソン 2019 3月3日 都庁 日本人トップ 5位 堀尾謙介 堀尾 藤原監督

【東京マラソン2019】日本人トップの5位でフィニッシュする堀尾謙介=2019年3月3日、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

「メガネで視界がぼやけて、後ろが来ているかとひやひやした」

3日に行われた東京マラソン。都庁前をスタート、東京駅前をゴールとする42.195kmで争われた今年のレースは、終始冷たい雨が降るなか、男子は中央大4年・堀尾謙介が、日本選手トップとなる2時間10分21秒のタイムで5位に入りました。

堀尾はこれが初マラソンでしたが、大学生としては初めて、東京オリンピックの代表選考会となるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ、9月15日開催)への出場権を獲得。日本記録保持者・大迫傑ら、MGCを目標にするトップランナーたちが顔を揃えるなか、厳しいコンディションにもかかわらず、最高の結果を出した堀尾には、陸連関係者からも賞賛の声が上がりました。

「いだてんメガネくん」として知られている堀尾。ゴールを目前に、後続の選手に抜かれないかと何度も後ろを振り返りましたが、降り続く雨でメガネが曇ってしまい、自分が日本選手のなかで何位なのか最後まで分からなかったそうです。トップだと知ったのはゴール後。日本陸連が定める「日本人3位まで、2時間11分0秒以内」という基準を満たして、みごとMGC切符をつかみました。

「MGCはワンチャン(=ワンチャンス)取れればいいかなと思っていた。本当に現実かな」

堀尾は、今年の箱根駅伝にも中央大のエースとして出場。2区を走り、区間5位と好走を見せました。中央大の藤原正和監督は2010年に、東京マラソンを日本人で唯一制した名ランナーですが、堀尾にはかねてから「お前にはマラソンのセンスがある」と言い続けて来ました。

堀尾は身長が183センチと高く、足が長いのでストライド(歩幅)も伸び、さらにアキレス腱の長さがスピードを加速させます。藤原監督は「まるでケニア人選手」と、そのポテンシャルを絶賛。堀尾本人も、

「自分の持ち味は長距離を走り切ること。それを生かせるのはマラソンだ」

と、4年生になった去年の春からマラソンを意識。藤原監督の指導の下、他の部員よりも長い距離を走るようになりました。

今回、大迫が低体温症のため途中棄権したように、悪天候に苦しむランナーが多かったなかで、初マラソンの堀尾がなぜいきなり結果を出せたのか?……その秘密は、普段からのトレーニングにありました。

「中大でいつも、冷たい向かい風の吹く河川敷を走ってますから、人よりも(寒さへの)耐性はできてたと思います」

堀尾は大学4年間、東京・日野市にある中大寮近くの河川敷を、毎日走り込んで来たのです。冬は氷点下になることもある過酷な環境に慣れていたので、今回の悪天候はむしろお手のもの。35キロ過ぎでペースアップし、初マラソンとは思えない積極的な走りで逃げ切れたのも、普段の鍛錬の賜(たまもの)でした。

ただし、課題も残りました。それは「サブテン」(2時間10分を切ること)を達成できなかったこと。恩師・藤原監督は、初マラソンの日本人学生最高記録(2時間8分12秒)を持っており、師を超えることはできませんでした。

「あらためて、監督の偉大さを知りました」

堀尾のマラソン人生は、まだまだ始まったばかり。この春からは実業団の名門・トヨタ自動車入りが決まっており、服部勇馬ら、MGCの出場権を持つ先輩が3人もいます。「食らいついていきたい」と語る堀尾にとっては、願ってもない環境です。

「僕自身、まだサブテンはできてませんし、東京マラソンで勝てたことは忘れて、チャレンジャーとして挑みたいです」

本当の勝負は、9月のMGC。他のランナーたちも、今度は堀尾をマークして来ます。そのなかで、今度はどんな力強い走りを見せてくれるのか? 堀尾のメガネは、MGCのさらにその先、東京オリンピックも見据えています。

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