中国が仕掛ける“ビッグベイエリア構想”のもう一つの狙い

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ニッポン放送「宮家邦彦のOK! Cozy up!」(2月22日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。昨日、本格始動した中国のビッグベイエリア構想について解説した。

ビッグベイエリア 中国 香港 マカオ 大経済圏 構想 一国二制度 返還 50年間 2047年

大経済圏構想が本格始動  中国が構築する大経済圏「ビッグベイエリア」(中国・広東省の9市、香港、マカオ)=2019年2月21日 写真提供:共同通信社

本格始動した中国のビッグベイエリア構想

これは、有明でも横浜でも幕張の話でもない。中国の話である。中国南部の広東省と香港、マカオを一体化させて大経済圏を築くビッグベイエリア構想が昨日、本格始動した。習近平国家主席が主導する国家戦略で、高度の自治が約束された1国2制度のもとにある香港やマカオを経済的に取り込む狙いもあるということ。なお、香港民主派からは中国の影響力が強まって1国2制度の形骸化が進むとの懸念も出ている。

新行)ビッグベイエリアのこの構想、中国が狙っているものは何なのでしょうか?

宮家)ベイエリアと言うとサンフランシスコベイを思い出しますが、サンフランシスコにしろ有明にしろ、何がポイントかというと、同じシステムのなかで、同じ国のベイの地域が発展して行くということです。しかし、中国の場合は勝手にベイエリアと呼んでいますが、もともとはその高度な自治が認められている、1997年に50年間保証されているはずの香港が含まれているのです。イギリスと中国で合意をしているわけですから。そのような地域をあえて霞ませるような形で、ビッグベイエリアなんて言われてもね、要するに中国が香港、マカオを飲み込むということですよね。「高度の自治」というのが徐々に薄まって、経済的な結びつきと称しながら、実際には中国の経済的な圧力だけではなく、政治的な圧力も含めて強めて行った結果、香港でもマカオでも本来あるべき自治の姿が形骸化して行く。これは上手い手だなとは思いますけれど、本当にこれで良いのですかねえ。

もともとは、中国を変えようという考え方は90年代、80年代の改革開放が始まった頃からありました。89年に天安門事件があった後、対中経済制裁をしたわけですが、日本や一部の国々は、中国に投資をして資本主義をやらせた方が良いと考えたわけです。資本主義をやれば中国の社会がいずれは変わる、そして市民社会ができる。そうすれば中国の政治体制もいずれは変わると。だからいまこそ対中投資をして、中国を国際経済の中に取り込むべきだという議論があったわけです。その一環としておそらくこの香港の1国2制度もあったと思います。本来は香港が封じ込められるのではなく、香港のシステムが中国に広まって行くだろうという発想があったのかもしれない。

しかしこの試みは大失敗に終わったわけです。中国は経済成長だけはするけれども、集めた富を基本的には体制の維持と軍拡に使ってしまった。まるで我々が思っていたことと違うことが起きている。その極めつけがこのビッグベイエリア構想で、これによって実際にとどめを刺そうとしているのです。英中合意は50年間ですから実際には2047年まで続くはずでしょう。あと30年位あるのに、話が違うじゃないかと私は思いますけれど。当然のことながら、香港の民主活動家の連中はデモをするのですが、これもどんどん封じ込められていく可能性があるということです。

新行)中国としては経済が減速しているなかで、これをまた弾みにしたいみたいな、そんな思惑もあるのですか?

宮家)それはそうでしょう。でも実際には経済的には香港の影は薄くなっています。もう内陸と言うか、中国が強くなっていて、それに香港が徐々に徐々に従属とまではいかないけれども、遅れをとっているような状況です。その意味ではこのビッグベイエリアというのは、中国の発想からすれば非常に自然なことなんだろうけれど、香港から見れば来るものが来たかという感じですよね。

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