中日・松坂 ファンと接触~何が起きたのか? 

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、キャンプ中、ファンとの接触で右肩に違和感を発症した中日ドラゴンズ・松坂大輔投手のエピソードを取り上げる。

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【プロ野球中日沖縄キャンプ】ランニングをする松坂大輔=2019年2月9日 北谷公園野球場 写真提供:産経新聞社

「本人の中でも、『うまく治るんじゃないか、痛みが消えるんじゃないか』とか、起きたときに『とんでもない事故になったわけではない』と厳しく考えていなかったと思う。数日間、悩んだと思う。不慮の事故という形になる」

中日・与田監督は残念そうな表情でコメントしましたが、キャンプであってはならないことが起こってしまいました。移籍2年目、背番号を「99」から「18」に変更し、完全復活を目指す松坂大輔投手が、右肩違和感のためしばらくノースロー調整で様子を見ると、11日に球団が発表。しかもその理由が、「ファンに右手を引かれたこと」だったというのです。

そのアクシデントが発生したのは、数日前のこと。ブルペン横にある投手陣のロッカーから、球場の三塁側通用口に移動している最中の出来事でした。この20mほどの通路は、出待ちのファンが並び、“花道”のようになっています。

ファンが手を伸ばし、選手も気軽にタッチしながら移動するのですが、ときにマナーを逸脱する人が現れます。手を強く握られたのか、松坂は右腕を後方に引っ張られるような形になり、肩に軽い違和感を覚えたとのこと。

右肩は4年前に手術を受けた、ナイーブな箇所。10日はキャッチボールを行っていましたが、11日の練習では、北谷球場でウォーミングアップを終えると、チームメートの輪から突然離れた松坂。ここで初めて、首脳陣に右肩の違和感を訴えました。

「キャッチボールをやるのは、しばらく時間を取りたいんです」

少し話し合いがあった後、与田監督もこれを了承。松坂はランニングと、室内での打撃練習を終えると、無言で球場を後にしました。幸い痛みはないようですが、当面は大事を取ってノースロー調整が続く見込みです。

グリーンカード取得のため、キャンプ序盤に米国へ戻ることになり、そうでなくても調整が遅れていた松坂。今季は中6日でローテーションに入ることを目標にしていましたが、これで開幕に間に合うかも微妙になって来ました。

「起きてしまったことに関しては、防止策を考えないと。だからと言ってファンと一切、接触禁止というのもできない」(与田監督)

このことが報道されると、ファンの間でも「こういうマナー無視の観客がいる以上、ある程度の規制を設けるのは仕方ないのでは」という声も上がりましたが、キャンプは選手とファンが間近で触れ合える貴重な場。遠方からわざわざ沖縄まで足を運んでいる人も多いため、そう簡単に「接触禁止」というわけにもいかず、悩ましいところです。

横浜高校出身で、松坂の後輩でもある中日の選手会長・福田永将は11日、この件について「まずはファンの良心に訴えることが大事になるか?」と報道陣に問われると、

「そこしかない。いちばんはそこだと思う」「(選手会としては)サインは極力、書いていこうという姿勢です。ファンの方に、ちょっとだけ気を遣ってほしいと思います」

とコメントしました。

松坂に関しては、今回のキャンプでもらったと思われる、サイン入りグッズの転売がネット上で確認され、球団が注意喚起をしていたところでした。しかし、こういうことが起ころうと、松坂のファンに対する姿勢に変化はありません。サインに関しても、

「自分の練習のペースは守らせてもらいますが、それ以外の時間であれば、できるだけ書いてあげたいと思っています」

去年も今年も、自分から進んで即席サイン会を始め、長蛇の列ができても、時間まで延々とサインに応じた松坂。その根底には「ファンの方々が、チームや選手を支えてくれている」という意識があるからです。

そもそも春季キャンプはファンサービスの場ではなく、グラウンドで最高のプレーを披露するための準備をする場。そういうプレーを見せて、チームを勝利に導くことが、本来のファンサービスのはずです。ファン側も、選手の厚意に甘えるのではなく、彼らが「戦いの場」にいることを分かった上で、接するべきではないでしょうか。

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