米朝首脳会談~日本が恐れるトランプ大統領の「故なき妥協」

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月8日放送)に外交ジャーナリストの手嶋龍一が出演。27日から開催される2回目の米朝首脳会談について解説した。

トランプ 米朝 首脳会談 ベトナム ダナン 金正恩 北朝鮮 核放棄 INF 全廃条約

トランプ米大統領の一般教書演説を聞き、立ち上がって拍手をするペンス副大統領(後列左)と、着席したままのペロシ下院議長(同右)=2019年2月5日、ワシントン(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

2回目の米朝首脳会談を前に、外務省の幹部がアメリカ側と面会へ

今月27日から開催される2回目の米朝首脳会談に向けて、アメリカのビーガン特別代表が北朝鮮の平壌で協議を行うなか、外務省の金杉アジア大洋州局長がきょうにも韓国ソウルを訪問し、ビーガン氏との面会を調整していることがわかった。

飯田)27、28日にベトナムで米朝首脳会談が行われるということは、先日のトランプ大統領の一般教書演説で明らかになりました。これを前に日本がどう動くかということですね。

手嶋)そうですね。日本が米側と接触するということは、北朝鮮に対する核交渉でトランプ政権が、とりわけトランプ大統領が故なき妥協をするのではないかと心配をしているからだと思います。現に去年6月のシンガポール会談で、口先だけで金正恩委員長が核の廃棄を約束しましたが、その後、期限を区切り、日程を示して核を廃棄し、それを専門家によって査察するというこの3つについて、何1つ進展をしていない。これをアメリカ側も心配して2度目の会談ということになるのでしょうけれども、北朝鮮側は、既に核の廃棄を宣言しているのだから、その見返りに北朝鮮に対しての経済制裁を段階的に解除しろと言っています。一方のアメリカ側は完全に核の放棄が確認されなければ、経済制裁を緩めることはできないという原則を少なくとも、これまでは言っています。

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2019年1月18日、北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長(右から4人目)と面会するトランプ米大統領(左端)[ホワイトハウスのスカビノ・ソーシャルメディア部長のツイッターより]=写真提供:時事通信

北朝鮮が朝鮮戦争を休戦から終戦にしたい理由

手嶋)今度のダナン会談では、北朝鮮側はかなり強行に迫るでしょう。そしてトランプ大統領は2年後の大統領選挙を控えて成果を上げたい。いま北朝鮮は厳しい経済状況にありますから、経済制裁の緩和ということなのですけれども、実は、一部人道支援について少しずつ穴が開きつつあって、そうなると北朝鮮は「もっと緩和を」という条件を持って歩み寄るのではないかと予想されます。
さらに重要なことは、朝鮮戦争はいま休戦状態にありますから、北朝鮮は一旦それを正式な終戦協定に切り替えるようにと、シンガポール会談以来求めています。ここに事実上トランプ大統領が吸い寄せられるのではないかという心配があります。今度のダナン会談で、例えば共同声明みたいなものでそれを盛り込むかどうかはわかりませんけれども、全体としてはそちらに向かっています。北朝鮮側とすれば、終戦協定となったらアメリカの先制攻撃を受ける心配はほとんど無くなる。特に核施設みたいなところは、極秘の所も含めて全部分かっていますから、それに攻撃を受ける可能性が大きく減じて来る。とすれば、密かに核ミサイルの開発を進める。いくつかのアメリカの情報機関は開発を全然やめていないと言っていますし、トランプ政権の責任者たちも、北朝鮮が核ミサイルを放棄する兆候はないと断言しています。そういう状況ですので、大統領選挙を意識して、ここで故なき妥協が行われるかどうか、日本も含めて国際社会が関心を持たなければいけないと思います。

核軍拡競争の主戦場は東アジア~日本は台風の目に

飯田)北朝鮮はアメリカに届くミサイルは放棄したけれども、日本には中距離や短距離で十分届きますよね。そこに核弾頭を乗せられることになると、日本にとって大変な脅威になる。

手嶋)そういうことになりますね。中距離ミサイルになりますと、非常に懸念すべき動きは、INF中距離核戦力全廃条約です。このINF条約からアメリカもロシアも離脱ということになりますと、そもそも中国は入っていませんから、中国に対しても備えなければならない。日本海からずっと海岸にロシアの巡航ミサイルと中距離ミサイル、そして中国、北朝鮮に対しても備えなければならない。最大のターゲットは在日米軍基地やグアム島というところになります。従って、今度の核軍拡競争の主戦場は残念ながら東アジア。その台風の目は日本ということになってしまいます。

飯田)いま外交部署がいろいろ出て来ていますけれど、30年前にこのINFをやるとき、ウラル山脈よりもこちら側に中距離を配備するなということを中曽根政権が相当交渉して盛り込ませた。これは核戦力の戦場がここになるのを防ぐためにやったわけですよね。

手嶋)そうですね。

飯田)30年後にその悪夢がまた蘇って来るわけですか。

手嶋)そのような厳しい情勢になって来ている。これはよく新冷戦という風に言われますけれど、冷戦新冷戦は核戦争が起こらない冷たい対立ですよね。残念ながらそんな保障はないということです。なぜならば冷戦期はそういう縛りがあった、いまはない、ということです。

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