中日・根尾と野茂英雄の意外な関係

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、中日ドラゴンズ・沖縄キャンプに参加しているドラフト1位ルーキー・根尾昂選手のエピソードを取り上げる。

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【プロ野球中日沖縄キャンプ】守備練習をする根尾昂=2019年2月5日 読谷平和の森球場 写真提供:産経新聞社

「できることを集中して取り組めたので、充実していたと思います」

自主トレ中に発症した、右ふくらはぎの軽度の肉離れのため、大事を取ってキャンプは2軍スタートとなった中日期待の黄金ルーキー・根尾昂(大阪桐蔭高、18歳)。5日、読谷(よみたん)球場で第1クールを打ち上げました。

リハビリが主の別メニュー調整で、全体練習には加わりませんでしたが、回復は順調なようで、5日間を振り返ったコメントが冒頭の言葉です。実に根尾らしい優等生発言ですが、2軍スタートになったおかげで、守備の名手・荒木雅博2軍内野守備走塁コーチに、捕球や送球の動作など“プロの守備”を実演指導してもらえました。

「いちばんの収穫でした」と語った根尾。6日は初めての休日でしたが、ゆっくり静養に充て、あくまで無理はしない方針です。

「確実によくなってます」と言う根尾ですが、しかし無理は禁物。特にふくらはぎは1度痛めると慢性化することも多く、ここで無理をして本当に故障につながっては元も子もありません。しかし1軍キャンプ地の北谷(ちゃたん)では、「根尾待望論」が根強くあります。その筆頭が、与田剛新監督。

「(根尾が)体に違和感を感じず、周りが見ても十分動きに問題ない、となったら、今の状況を確認するために、こちら(1軍)で様子を見よう、と考えている」「彼の、“野球人としての動き”を確認する」

自主トレ中も快音を響かせていたバッティング、高校生離れしたフィールディング、そして全力での走り……根尾の能力を、早く自分の目で見極めたい、という思いがあるのです。

もっとも、試合に出るのはまだまだ先の段階。与田監督自身、現役時代に1年目からフル回転してヒジ・肩を痛めた苦い経験を持つだけに、絶対無理はさせないはず。

「彼は10年、15年とプレーしていく選手。無理をする時期じゃない。じっくりと治してからでもいいと思う」(与田監督)

……と言いつつも、戦力面で考えれば「すぐにでも1軍に呼びたい」のが本音。監督業はまことに悩ましい仕事です。

そんな与田監督が、粋な計らいをしてくれました。1990年、ともにセ・パの新人王に輝いた親友・野茂英雄さんを、スペシャルゲストとして沖縄キャンプに招いたのです。これには選手たちも驚き、感激。根尾もその1人でした。

実は、根尾は中学3年生だった2015年夏、中学世代から選抜された「NOMOジャパン」のメンバーとして、アメリカ遠征を経験していたのです。これは野茂さんが中学生世代に「世界を知って、成長してほしい」と始めたプロジェクト。

「海外の選手とも野球をさせていただき、新鮮だった。メジャーリーグも見学させてもらった。すごく貴重な経験でした」(根尾)

このとき、野茂さんから伝えられた言葉が、根尾の心に深く刻まれています。

「これから進路をしっかり考えて、自分の道を頑張っていってほしい」

独特のトルネード投法や、独自の調整法を貫き、日本人メジャーリーガーのパイオニアとなった野茂さん。自分の信念をしっかり持って、それを貫き通して来た根尾にとっては、特に心に刺さったひとことでした。

野茂さんは北谷だけでなく、3日に2軍キャンプ地・読谷にも足を運びました。野茂さんの姿を見つけると、すぐに駆け寄り、丁寧にあいさつした根尾。「お逢いできてよかったです」と、3年半ぶりの再会を喜びました。

「中学のときはすごいと感じていましたが、プロに足を踏み入れて、偉大な方だなと(あらためて)感じました」

野茂さんに「頑張れよ」と声を掛けられ、表情をキッと引き締めた根尾。まだまだ先が長いプロ野球人生、焦らず、確実に、階段を上って行ってほしいものです。

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