講談とは共感の芸である

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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、講談師の神田松之丞が出演。講談師になった経緯について語った。

黒木)今週のゲストは講談師の神田松之丞さんです。
ラジオを聴いたことが講談師の道に入るきっかけになったとおっしゃっていましたけれど、落語家の道もありましたよね? アナウンサーとか他の職業もありますよね。なぜ講談を選ばれたのですか?

神田)僕が最初に講談に出会ったのは、18~19歳ぐらいにラジオで講談を聴いたときでした。その後、談志師匠を好きになって、師匠が講談好きだから観に行くという流れでした。初めて聴いたときに、面白いのにあまり評価されていないジャンルだなと思いました。若気の至りで生意気ですが、もっと面白くできるのではないかと。もちろん素晴らしい先生方がその当時からいたのですが、若い男の講釈師で自分が聴きたい人を作りたいというプロデューサー感覚もありました。講談というジャンルをもっと面白くできるのではないか、そういう視点で最初から見ていましたね。

黒木)私のかじった知識では、落語家は800人いらっしゃるのに講談師は80人しかいない。しかも女性が多い。すごい差ですよね。

神田)本当ですよね、10分の1です。少ないということは需要も少ない。小さいところだから目立つだろうということではもちろんなくて。とても面白い芸能なのに誰も面白いとなぜ言わないのか、怒りにも似た、「もっと評価していいでしょうこれは」というプレゼンみたいな感じもあったかもしれないですね。意外だったのは、例えば赤穂浪士の忠臣蔵。300年以上も前のお侍の気持ちなんて、侍でもない我々が分かるのかと疑問を持っていました。でも、1人の演者がただ滔々と喋ると、頭のなかに絵が浮かんで来て、さらに300年も前のお侍の矜持、プライドとか侍の儚さとか、そういったものをそこにいる演者とお客さんがまるで魔法のように共有する。「講談というものは共感の芸だ」と思いました。普段では分かり得ない、「こんな心ときめくようなことがあったのか、我々はやはり日本人だったのだな」という、思ってもいない感情が講談を聴いていると出ました。お芝居でもそういうことはあるでしょうし、落語でもあるでしょうが、1人の演者が声も張らずに訥々とやっていることで、カルチャーショックを受けたのはすごいなあと思いました。

黒木)それで弟子入りをされたのですか?

神田)そうですね。いろいろ素晴らしい先生がいたのですが、うちの師匠がいちばん素敵だなと思って、入りました。

黒木)前座時代はどういうことをされるのですか?

神田)みなさん馴染みがないと思いますが、師匠方の気を遣うのです。師匠が来たらお茶を入れたり、コートをすぐに掛けたり、履物を揃えたり。着物を着せたり畳んだり。師匠が鼻をかんでいたらゴミ箱を出したり…。それを四年半ぐらいの期間、設けてくれています。

講談とは共感の芸である
神田松之丞(かんだ・まつのじょう)/ 講談師

■1983年・東京都豊島区出身。35歳。
■日本講談協会、落語芸術協会に所属。
■2007年、3代目神田松鯉(かんだ・しょうり)に入門。
■2012年、二ツ目昇進。
■2015年、「読売杯争奪 激突!二ツ目バトル」で優勝。
■2016年、「今夜も落語漬け」3分漫談、「真冬の話術」で優勝。
■2017年、「平成28年度花形演芸大賞」銀賞受賞。
■2020年2月に真打ちへ昇進することが決定。
■連続物と言われる「寛永宮本武蔵伝」全17席、「慶安太平記」全19席、「村井長庵」全12席、「天保水滸伝」全7席、「天明白狼伝」全10席、「畦倉重四郎」全19席、また一席物と言われる数々の読み物を異例の早さで継承。
■持ちネタは入門11年で140を超え、独演会のチケットは即日完売。 メディアを席巻し、講談普及の先頭に立つ活躍をしている。
■いまや勢いある高座が世代を超えて圧倒的な支持を受け、「講談界の風雲児」、「チケットのもっとも取れない講談師」とも言われている。

ENEOSプレゼンツ あさナビ
FM93AM1242 ニッポン放送 月-金 6:43-6:49

番組情報

黒木瞳のあさナビ

毎週月曜〜金曜 6:41 - 6:47

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毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳

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