細かい趣味嗜好に特化した検定ビジネス「進化」の秘密【ひでたけのやじうま好奇心】

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「検定ブーム」が叫ばれて久しいですが、思い返せばブームの先駆けは、2003年の「博多っ子検定」、2004年スタートの「京都検定」。
ここから、いわゆる『ご当地検定ブーム』が起こりました。
今はどうなっているのか?
「京都検定」は受験者を減らしながらなんとか続いていますが、やめてしまったご当地検定はたくさんあります。

では「検定ブーム」は去ってしまったのか?というと、そうではありません。
より細かいところに特化した検定が続々と誕生して成功しています。

いまの検定の流れは2つあります。
一つは、ネットで気軽にクリックして楽しめる「ファン検定」
たとえば、「嵐検定」や「キスマイ検定」
大人気グループ・嵐や、Kis-My-Ft2についての設問がネットで出題してあり、受験料はナシ。その代わり、賞状などの特典もなし。

女性3人組「Perfume」は、去年の夏ファンクラブ主催で検定を実施。
30分50問をネットで受験して、上位1000人が
特別なライブに行けるという特典を用意、大好評だったそうです。
(ライブチケットは4400円かかりますが)

そしてもう一つが、さまざまな「趣味検定」
こちらは、受験料を払い、テキストで勉強して、会場で試験を受け、合格したら認定証を手にする。
趣味ですから、“就職に役に立つ”でも“仕事に役に立つでも”ない、何のメリットもないのに、みんな喜んで受けているというのです。

成功している趣味検定にはどんなものがあるのかと言いますと…
ビール好きが様々な知識を問われる「日本ビール検定」
パン好きが歴史・材料・作り方・トレンドなどあらゆる方面の知識を試される「パンシェルジュ検定」
神道の文化・歴史・皇族について問われる「神社検定」
どちらも安定して受験者を集める“成功した検定”です。
ではこうしたヒトを呼ぶ検定は誰が仕掛けているのか?
調べてみると、ある会社に突き当たりました。

それは、書籍や雑誌を本屋に卸す出版取次会社大手として知られる、日本出版販売株式会社=日販(にっぱん)です。

ご存知のように、「本が売れない」「返品率が高止まり」となり、業界の収益を圧迫。
加えてネット書店が活況を呈して、書店店頭の売上は厳しい。
よって日販も苦しい立場かもしれない。

そんな中、何か新たな活路を見出そうと始まったのが「検定事業」だったのです。
そもそも日販は、書店が受け付けたTOEICや英検・漢検の受験料を引き取って主催者に渡すという「受験料回収委託業務」を行っていました。
ですから、そもそも運営のノウハウはある。

日販が手掛けた最初の検定は…
一人の社員が大のロック好きだったことから、「ロック検定」を企画。
この企画書を持ってMTVジャパンに売り込んだのです。
問題を作るのは、主催者のMTV。
そして日販は受験料を集め、会場を決めて、受験票を配送し、受験当日の試験官などを配備し、採点し、合格者に認定証を送る、という運営を全部する。
これが「面白い!」「達成感が味わえる!」と評判を呼びました。

そこで日販では次々と「検定企画書」を作って、企業や団体に呼び掛け、検定をいくつか実施するうちに様々な『勝利の検定方程式』が出来上がってきました。

その方程式とは・・・
①検定の損益分岐点は受験者数2000人。
これを越えないと、もうけは出ません。
受験料5000円だとして単純な受験料収益1000万円。
日販はだいたい10%を手数料として受け取っています。

②検定が決まったら、必ず「公式テキスト」を作る。
本がないと、受験者は何を勉強したらいいのか路頭に迷います。
その点、日販は出版社とのお付き合いが日々ありますから、主催者に出版社を紹介することが出来ます。

さらにはその公式テキストが書店で売れれば、これまた本取次の日販にとって大きなメリットを産むことになります。

③”初年度から1級は開催しない。初年度は初級と中級のみにする“。
最初から一番難しいところを目指す人は少ない。
しかも主催者も最初は手探りです。
また初級と中級の2つの階級を実施することで、両方を受ける受験者が非常に多くなるメリットがあります。
これは“どちらかが受かればいい”という受験者心理を突いているのです。

…こうした方程式を基に、
ビール検定は「大手ビールメーカー」
パンシェルジュ検定はパン教室の「ホームメイドクッキング」
神社検定は「神社本庁」
それぞれが主催者になり、年々認知されて、受験者は右肩上がりとなっています。

成功のためにもうひとつポイントがありまして、たとえば、ビール検定なら大手ビールメーカーが主催者ではありますが、「その企業色をあまり出さないこと」!
問題も他社のビールや外国のビールなどにも及ぶようにしたことが、ファンの気持ちをがっちり掴んだと言えるのです。

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こうして、日販は年間60~70もの検定を運営する日本一の検定事業会社になったわけですが、今年スタートの注目を集めている検定があります。
5月29日に第1回が開催される「大河ドラマ検定」。
やはりこれも日販の検定事業チーム4人のうちの一人が大変な大河ドラマ好きだったため企画して、NHKに持って行き「じゃあやりましょう!」ということになりました。

公式テキストを見ますと、これまでの大河ドラマ54作品のあらすじやみどころ、キャストなどがしっかり紹介されていて、本自体としても面白い。

そして受験者集めが好調なのが、9月に行われる「チョコレート検定」は大手お菓子メーカーが主催です。
こちらも味、歴史、製造法など奥が深く、主催者がびっくりするほどファンが多かったことが日々受験者が増えることで証明されています。

では企業側に取って、検定実施のメリットは何か?
ファンを増やせることはもちろんのこと、受験者のデータが得らえる点が一番大きいのです。

たとえば、食べ物の検定を行った会社が、受験者にのちに「特製エプロン」を。

「新鮮組検定」の合格者にのちに、シリアルナンバーに入った「刀」をオリジナルで作って売る。

新しい物が次から次へと生まれていく「検定」しかし過去には消えていった検定もあったそうで。。。

4月5日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

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