合意なきEU離脱となれば英国のトヨタの工場は1日もたない

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ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(1月22日放送)にジャーナリストの有本香が出演。イギリスのEU離脱について解説した。

合意なきEU離脱となれば英国のトヨタの工場は1日もたない

「英EU離脱へ」EU離脱案、大差で否決  15日、EUとの離脱合意案の採決前に英下院で演説するメイ首相=ロンドン(ロイター=共同)

イギリスのメイ首相、EU離脱合意の代替案を提示

イギリスのEU離脱合意案が今月15日、イギリス下院で否決されたことを受け、メイ首相は現地時間21日午後、代替案を下院に提出した。今月29日、その採決が行われる。

飯田)離脱合意に対する議員の懸念を和らげる方針を言明して、より柔軟な姿勢で臨むということです。それから労働者の権利保障を巡る野党労働党の要求を実行し、アイルランド国境の管理強化に対する懸念緩和策を見出すとした。ロイターも具体的なことが書いていないですけれども。

有本)そうですね。具体的なことがまだわからないという段階なのでしょう。1つはアイルランドとの国境の問題が大きいです。ですからこれはアイルランドとイギリスが二国間交渉をするかどうかということになるのでしょうかね。

飯田)北アイルランドとアイルランドの関係について、イギリス在住の方からメールをいただいています。私が昨日のニュース解説のところで「イギリス領の北アイルランド」という言い方をしたのですが、そうではない。北アイルランド、ウェールズ、スコットランド、イングランドの4つの連合国ということになっていますが、全て独立の主権国家であり、議会もあるということです。北アイルランド議会は現在稼働していないそうですが、イギリス領というコメントは非常に気になりました、と。UKのなかに北アイルランド側はあって、南のアイルランドとの境目をどうするか。

有本)どうするかという問題ですよね。これは野党の側、労働党を中心にしてかなり攻勢を強めています。例えば合意無き離脱という可能性をメイ首相は排除しないということになって、これに対して労働党側は反発して協議をずっと拒否して来たということです。だけど、メイ政権のなかにもいろいろな考えの人がいるから、強行派の人たちもいる。まだいろいろなやり取りがあるでしょうから、これは目を離せないところだと思います。今後のスケジュールとしては今月末に代替案の採決をする、仮にそれが否決した場合は3月の段階で時間切れだということですか。

飯田)時間切れですね。

合意なきEU離脱となれば英国のトヨタの工場は1日もたない
日本にも大きな影響~イギリスのトヨタの工場は部品が止まったら1日もたない

有本)一部の方は、これがもし時間切れになって合意無き離脱となったときに、世界の経済にも影響を与えると言います。場合によっては日本の消費増税にも影響が来るのではないかと。日本企業も相当影響を受けるし、いまの段階でも方向が定まらないから企業もどうしようか困っているでしょうね。

飯田)サプライチェーンと言われる部品のやり取りなども、ドーバー海峡を越えてEUとイギリスの間でやっています。一説によるとイギリスのトヨタの工場は部品が止まったら4時間しか持たないとか。

有本)1日持たないという話ですものね。それは大問題ですよね。

飯田)いまから部品の在庫を積み増すにしても限界があるでしょうし。

有本)そうでしょうね。これは日本にとって遠いところの話ではないわけですよ。経済にも相当影響しますね。

飯田)離脱強行派の人たちの言い分を見ると、「離脱するぞ、クラッシュするぞ」と言い続けることでEU側が譲歩してくれるだろうと。

有本)EUへのカードということですよね。向こうへの圧力をかけろということなのでしょうけれども。

飯田)チキンゲームで瀬戸際外交。やっていることは、北朝鮮とあまり変わらないではないですか。

有本)変わらないかもしれない。ただ、この強行派の人たちがこういうことを言うのは普通の国ではありですが、日本ではないでしょう。

飯田)確かにね。

有本)日本は政府のやっていること、例えば韓国との関係でも、それに対してもっと強硬なことを野党が言わないでしょう。「何やっているんだ」という国内の声も、相手側は見ているわけです。その部分では、野党というか政権内にもそういう声があるというのは、ある意味では健全と言えば健全だと思います。

合意なきEU離脱となれば英国のトヨタの工場は1日もたない

ラグビーの「聖地」トゥイッケナム競技場を英国のメイ首相(右)と共に訪問し、子どもたちにボールを渡す安倍晋三首相(右から2人目)(イギリス・ロンドン)=2019年1月10日 写真提供:時事通信

離脱となると世界の流れも変わる

飯田)いろいろな議論が出て来る。しかも、もともとのEU離脱に至った経緯を考えると、移民の人たちがたくさん入って来ると自分たちの仕事が奪われるのではないかとか、グローバリズムは良いものではない、悪いものだ、というような庶民の声は行き場のない怒りであったわけですよね。

有本)私も地方を近年見ていませんが、イギリスの地方の街は本当に様変わりしているようです。もともとの住民がいない。そこに外国人がポンと来て、全く違う風景が広がっているという状況でしょう。これに対してNOという声があったから、離脱という決断をしたわけです。言ってみれば、グローバリズムが行き過ぎたところに来て、それに対してのせめぎ合いですよね。そこに今回イギリスが決断をして、どんな形であれ離脱するということになると、世界の流れも変わって来る可能性があります。

飯田)モノと人の流れを「とにかく自由に自由に」というところから、ある程度は国境を設けて、「自分の国の人たちは自分たちで守るということもした方がいいんじゃないの」という方向にね。

有本)トランプさんの戦っている部分もそういうことですからね。際限なく自由化の方向に向かう流れにNOと言うところが、最終的につきつけられるかどうかの観点でも見た方がいいですよね。日本だって同じような選択を迫られていますから。

飯田)そこで1つ、論点として横浜市港南区の“よしのり”さん、37歳の方。「このEU離脱の混乱ぶりを見ると、国民投票というものは難しいなと感じました。恐らく、もう1度国民投票をやったらEU離脱反対が多数になるのではないでしょうか」。

有本)かもしれませんね。

飯田)結局、真ん中の部分で折り合っていくことを、イエス・ノーの国民投票は否定してしまうような気がしているのですけれど。

有本)そういうことですね。私も、友人や知人はロンドンに住んでいる人が多いのです。だからロンドンに住んでいて高学歴、高収入の人たちは全員が離脱反対です。いまの政権に対しても批判的な人たちが多い。私たち外国人はどうしても接点を持つ人たちがそういう層に限られますからね。だから余り実態が分からないところがある。世界中で同じ状況があると思うけれども、大都市に住んでいる特定の層の人たちと、地方で暮らしている人たちでは、日常的に受けている恩恵や脅威は全然違うわけです。そういうことも含めて、世界をグローバル化してどんどん1つの流れになっていると言いながら、その他で2つに分かれて行っているということですよね。

飯田)グローバルな部分で、国境は無いものみたいに。

有本)広がりの面では1つになって行っているけれど、縦に分かれて行っているところがありますよね。

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