ペットと一緒に

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8歳から夢見た盲導犬との生活~4頭が自立へ導き世界を広げてくれた!

【ペットと一緒に vol.127】


文さんは18歳から、30年間で4頭の盲導犬と暮らして来ました。文さんと盲導犬との出会いから、学生生活や育児生活をサポートしてくれた盲導犬との生活を紹介します。


将来、ぜったいに盲導犬と暮らす!

生まれたときから全盲だった文さんが盲導犬と初めて関わったのは、8歳の頃でした。デパートの屋上で開催されていた東京盲導犬協会(現アイメイト協会)の盲導犬のイベント会場で、体験歩行をしたのだそうです。

「そのとき、私は将来必ず犬と歩く! と決めたんです。犬と意思疎通をはかりながら歩くという体験をとおして、盲導犬がそばにいてくれれば、私は好きなときに好きなところに行けるんだと気づきました」と、文さんは振り返ります。

アイメイト協会では盲導犬のことを「アイメイト」と呼んでいます ©公益財団法人アイメイト協会

けれども、盲導犬と暮らすとなると、使用者自身が盲導犬の行動や健康管理を行わなければなりません。当然のことながら8歳の少女には困難なため、文さんは18歳になるまで、盲導犬との生活を心待ちにしていたそうです。

晴れて18歳になると、盲導犬使用者として必要なことを学ぶため、文さんはアイメイト協会に泊まり込んで行われる4週間の歩行指導合宿に参加しました。

「私の盲導犬になる犬と、食事をするときも寝るときもずっと一緒に過ごすんです。こうして犬との信頼関係を築いていきます。最終的に、人の助けを借りずに盲導犬とどこへでも出かけられるようになるまで、歩行指導員と一緒に街へ出て練習を重ねるんですが、なかなかハードな毎日でしたね(笑)。自分で状況判断をしながら犬にすばやく指示を出すことの重要性を学ぶと同時に、犬に頼るのではなく、自立して盲導犬と暮らしていくことへの覚悟も生まれました」(文さん)

歩行指導合宿の様子(※写真は文さんではありません)©アイメイト協会

文さんは最終テストにも無事合格し、高校生で念願の盲導犬との生活をスタートさせることができました。


3者3様の盲導犬との暮らし

盲導犬を迎えてから、文さんの生活は大きく変わったと言います。
「好きなところへ好きな時間に、ひとりで気兼ねなく出かけられるようになりました。休日にはコンサートに行ったり、ファーストフード店に立ち寄ったり……。残念なことに、当時は盲導犬と一緒だと入店拒否をされることも多かったですけどね。でも、盲導犬ユーザーになったからには、盲導犬がきちんと受け入れられる社会を切り開くミッションが与えられたと思って頑張って来ました」と、文さんは語ります。

盲導犬とカフェで過ごすひととき(※写真は文さんではありません)©アイメイト協会

文さんは大学へも盲導犬とともに通い、卒業後は結婚をして東京から九州へ移り住みました。
「最初の盲導犬は、いろいろなことを一緒に切り抜けてきたパートナーですね。一心同体のようにして日々暮らして来ました。だから盲導犬が10歳を過ぎた頃、ふたり同時に『もうこれ以上は仕事は無理かな』と感じる瞬間が来ました」

引退した盲導犬の生活 ©アイメイト協会

アイメイト協会へ連絡をして1頭目が引退をしたあと、文さんは再び2頭目との関係を構築するために歩行指導合宿に参加しました。

「私が妊娠中に訓練をしたので、思い出深いですね。2頭目もメスでしたが、とにかく仕事一本の犬でした。遊ぶことに興味を示さないし、よしよしされるのも好きじゃない。マイワールドを持った個性派(笑)」とのこと。
文さんは2頭目と暮らしている間に、3回の出産をしました。

3頭目は、初めてのオスだったとか。
「その頃になると、歩行指導合宿が楽しみになっていました。家事や育児から解放されて、食事が出て来ますから(笑)。それにしても、3頭目はかなりの“おっとりくん”でしたね。同じ盲導犬でも、それぞれ性格はだいぶ違うと思います」と、文さん。

子供が道端で駄々をこねて動かなくなると、盲導犬も子供のもとへ戻って一緒にゆっくりと歩みを進めながら公園に行ったり、保育園の送り迎えをしたりする毎日だったそうです。

「公園の空気はおいしいな」と言っているような盲導犬 ©アイメイト協会


盲導犬はストレスもなく長生き

1頭目と2頭目はそれぞれ15歳の天寿をまっとうし、3頭目は14歳半で引退生活を送っています。

「盲導犬は働き過ぎて短命だと考える方もいるようですが、そんなことはありません。生粋のワーキングドッグであるレトリーバーは、作業欲求が高く、人にほめてもらえるのを最大の喜びとする犬種です。盲導犬は24時間、信頼関係を築いた人と一緒にいられて、しあわせなのではないでしょうか。もちろん、人が1日に歩ける距離しか歩きませんし、寝そべって休憩できる時間もたくさんあります。盲導犬は、決して過酷な仕事ではありませんよ」(文さん)

アイメイトユーザーの仕事中に足元でくつろぐ ©アイメイト協会

実際に、筆者がこれまで取材して来た獣医師やドッグトレーナーによると、刺激不足や留守番時間が長すぎること、飼い主とのコミュニケーション不足が原因でストレスを感じ、足先を舐めたり被毛をむしったりして皮膚炎になったり、家具を破壊したりする犬が少なくありません。

「ストレス行動やストレスによる体調不良を起こす盲導犬は、聞いたことがありませんね」と語る文さんは、ニューヨークでは盲導犬と一緒に馬車にも乗ったそうです。
「もともと、犬と馬は同じ現場で仕事をしていた動物同士なので仲良し。盲導犬も、旅行はきっと刺激的で楽しかったんじゃないかな」

盲導犬と旅行を楽しむ使用者も多い(※写真は文さんではありません)©アイメイト協会


視覚障害者の自立を願って

文さんは現在、4頭目の盲導犬と一緒に暮らしています。
「自分がかわいいっていうのをよく知っている、明るい性格の子ですね(笑)。動物病院が大好き。獣医さんに自分からお腹を見せて甘えているので、いつも診察室で笑いを誘っています。月に1度、私が入れるお風呂も大好きで、なかなか出たがりません」と、文さんは笑います。

2年ほど前から、文さんは在宅ワークを始めました。視覚障害者の支援をする仕事だそうで、つい先月は急用ができ、17時まで働いてから18時過ぎの電車で、文さんひとりで東京へ向かったこともあったとか。

「この軽快な行動は、盲導犬がいるからできること。私は、ガイドヘルパーさんには気を遣ってしまうのと、家族の時間を割いてもらって手を煩わせたくないんです。『私は私で、自由に動けるから』という自信と気楽さを得られたのは、盲導犬のおかげです」

盲導犬と一緒ならばどこへでも行ける! ©アイメイト協会

8歳の頃の夢を叶えて盲導犬との暮らしを送っている文さんはまた、次のように強く述べます。
「盲導犬によって、私は自立できました。でも、盲導犬に頼るのではなく、盲導犬のためにも視覚障害者自身が自立をしたいと思うことと、実際にしっかりと自立することが重要なんです」

もし、街で働く盲導犬や介助犬や聴導犬を見かけても、決して写真や動画を撮ったり触ったりしないでください。また、盲導犬ユーザーが迷っているような様子に気づいても、急に視覚障害者の方の体に触れたりせずに「こんにちは。通りすがりの者ですが」など、声で自分の存在を知らせてから話を進めてください。視覚障害者は急に触れられたり大声で呼びかけられると驚いてしまうからです。

「間違って赤信号を渡りそうなときは、とっさのことでむずかしいとは思いますが、大声を出さずに深呼吸を1回してから、声をかけていただければ助かります」と、文さんは言います。
今後さらに、補助犬とそのユーザーへの理解が広がりますように。働く犬たちが、社会で広く受け入れられるようになりますように。

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