アメリカの対中国政策転換~敵対路線で一丸に

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月17日放送)に国際政治学者、慶応義塾大学教授の細谷雄一が出演。アメリカの対中政策転換と、アメリカの出方を窺う中国の軍事力について解説した。

アメリカの対中国政策転換~敵対路線で一丸に
アメリカ国防総省が公表~中国の軍事力は一分野で世界をリード

アメリカ国防総省傘下のDIA(国防情報局)は中国の軍事力に関する報告書を公表し、ミサイル開発などについて「一分野で世界をリードしている」と指摘。台湾を統一して独立阻止を図る狙いがあるとして、急速に核戦力の強化も進めている中国に強い警戒感を示した。2018年の中国の国防費は、公表の18.5兆円を上回っているという指摘をしている。

飯田)アメリカにとってはここがいちばんの脅威と言って良いのかわかりませんが、1つのポイントというわけですか。

細谷)いまの世界の特徴としていくつか指摘する必要があると思いますが、1つ目は世界の今後の行方が非常に不透明になっています。従来は国際法に基づいた支配というものが世界のなかで秩序を創っていたわけですが、最近は軍事力によって世界が大きく動いていっています。アメリカ政府もいま軍拡を進めていますが、それは恐らくその潮流に乗っているということがあると思います。
もう1つは、トランプ政権が中国に対して非常に強硬な路線を取り始めましたから、それに対して中国もかなりの程度軍事力を強化するという従来の方針を取り続けています。

アメリカの対中国政策転換~敵対路線で一丸に

5日、総統府で、海外メディアとの会見に応じる蔡英文総統=2019年1月5日 写真提供:産経新聞社

対中強硬姿勢には超党派で結束

飯田)対中に関してというのは、台湾をどんどん支援して要人の往来の解禁であったり、台湾旅行法、アジア再保証イニシアチブ法も台湾支援のような法律ですよね。超党派で通ってきているということは、アメリカが一丸となってきているということですか?

細谷)最近の動きで中国に対する不信感、もともと民主党は労組とも繋がっていて、非常に安いコストで中国が生産することに対して不満があったわけです。イデオロギー的な共和党の一部の中国に対する強硬論者と合わせて、いまのアメリカ政府の対中強硬姿勢はトランプ政権が牽引しているというよりも、むしろ議会や世論、メディア、産業界が後押ししているということで、非常に強い反中的な動きがしばらく続いていくと思います。

飯田)去年の10月にペンス副大統領がハドソン研究所というシンクタンクで演説をして、それが冷戦をスタートさせたと言われたチャーチル首相の鉄のカーテン演説になぞらえる傾向もありますが、そのくらいの対峙の仕方をこれからして行くということですか?

細谷)そうですね。アメリカの著名な外交評論家にウォルター・ラッセル・ミードという人がいて、この人が新聞のコラムで、今回のペンス演説、は1971年のニクソン・ショック以降最大の政策の転換であり、従来の米中協調路線から米中対決路線への転換だ、と書いて、大変衝撃を与えました。私がアメリカ人の専門家にこの記事について聞いたときに、みながその通りだ、と言っていました。やはり最大の政策転換であって、これからアメリカは長期的に中国との関係が敵対的になっていくのだと思います。

飯田)日本ではトランプさんが強硬だからこうなっているけれども、例えば政権が代わればまた転換があると言う人もいます。その説で言うともうそこまで転換してしまえば政権交代しようが変わらないということですか?

細谷)いまのアメリカは政治の二極化ということが言われていて、あらゆる分野で真っ二つに分かれているのです。ところがこの中国問題は、なぜか超党派で結束しているのです。さらに中国にとっても非常に困るのですが、トランプ政権は全く予測不可能なのですよ。例えば、それまで北朝鮮に対して非常な強硬な路線を取っていたのが、突然対話に転じるわけです。中国にしても、台湾の問題をめぐってトランプ政権がどう出るか、より一層台湾に接近するのか、あるいは見捨てるのか。恐らく今回の中国の行動も、アドバルーンのようにアメリカがどう反応するのかを見極めているところが大きいと思います。

アメリカの対中国政策転換~敵対路線で一丸に
読めないトランプ政権~アメリカの出方を窺う中国

飯田)年明けの1月2日に習近平さんの演説があって、そのなかで武力併合は基本的には否定するのだけれど含みは残すというものと、1つの中国という政策と一国二制度を繋げています。もう共産党が支配すると言っているようなもので、あれもアドバルーンと見た方が良いですか?

細谷)中国は自国の軍事力を急速に増強していることで、以前ほどはアメリカに対する恐怖感がないのです。ですから、武力行使をしてもアメリカが介入しないだろうと考える。それだけ中国は強くなったということ。もう1つは、やはりトランプ政権の今後の動きが読めないということで、今回やや強硬な発言をして、それに対してトランプ政権がどう反応するか確かめているのだと思います。

飯田)その問題は他人事じゃなくて、アメリカ軍が台湾を守るのか守らないのかは、日本にとっても非常に重要な問題になってきますよね。

細谷)韓国からの米軍撤退、削減の話もありますし、つい先日にはNATO脱退の可能性についての話も報道でありました。在韓米軍もNATOもそうですが、戦後当たり前だと思ってきたものがこれからいろいろと崩れて来るということを、我々も台湾も考えていかなければいけません。

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