スポーツアナザーストーリー

これだけある 広島・長野に関する「いい話」

話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、巨人にFA移籍した丸佳浩選手の人的補償で、広島に移籍。10日に背番号が「5」に決定した長野久義選手のエピソードを取り上げる。

【 広島、巨人長野を獲得へ】2017年7月、広島戦で2ランを放つ巨人・長野=マツダ 写真提供:共同通信社

「3連覇している強い広島カープに選んでいただけたことは、選手冥利に尽きます。自分のことを必要としていただけることは光栄なことで、少しでもチームの勝利に貢献できるように精一杯頑張ります」(移籍発表当日の、長野コメント)

何かと物議を醸した、人的補償による長野の広島移籍。内海哲也の西武移籍に続く生え抜きスター選手の流出に、巨人ファンからは「なぜプロテクトしなかったんだ?」と批判の声も上がっていますが、守れるのは28人だけ。持っていかれては困る若手を中心にプロテクトした結果、長野が漏れてしまったのです。

年俸が2億円超のベテランで、FA権取得も間近な長野を、若手育成に重きを置く広島は選ばないだろう、と読んでいた巨人。山口オーナーが「なんとも痛い」と言ったように、大きな誤算でした。

しかし、拒否できないルールとはいえ、前向きなコメントで広島移籍を了承した長野の株は大きく上がりました。実は長野は、プロ野球球界でも指折りの「気配りの人」なのです。

悩んでいる若手がいれば、食事に誘って親身になって話を聞いてあげたり、チームに馴染めない外国人選手に英語で話し掛けたり、チームを離れることになった選手がいれば、自ら幹事を買って出て送別会を開いたり……内海が移籍することになった際も、送別会の幹事は長野でした。

選手会長を務めていた2016年のオフには、戦力外通告を受け、トライアウトに挑んだチームメイトを激励するため、自ら会場まで足を運んだほど。そんな話が山ほどあるので、球界に長野のことを悪く言う人は、ほとんどいません。

17年オフ、巨人を自由契約となった村田修一(現・巨人ファーム打撃コーチ)は、他球団からのオファーが届かないまま、独立リーグのBC栃木に入団。そのとき、野球道具などを支援してくれたのが、日大の後輩である長野でした。

昨年9月28日に東京ドームで行われたDeNA戦では、村田を招き異例の“引退セレモニー”が行われましたが、その試合で劇的なサヨナラホームランを放ち、お立ち台でこう叫びました。

「村田さん、見てますかー?!」

戦力的なことはもちろんですが、チームのまとめ役がいなくなったことを惜しむ声もまた多いのです。

広島での背番号選びにも、その「気遣い」がいかんなく発揮されました。長野にふさわしい1ケタの空き番号は「5」と、丸が付けていた「9」の2つ。広島フロントは「お好きな方をどうぞ」と選択を委ねましたが、長野が選んだのは「5」でした。

実は、「9」は緒方監督が現役時代に背負った番号でもあり、丸が去った後は、売り出し中の若手・野間が一人前になったときに引き継がせたい……そんなムードを、長野は敏感に察知。自分が「9」をつけるべきではないと「5」を選んだのです。

現在、滞在先のロスで自主トレ中の長野。カープナインとの合流はまだ先になりますが、チーム内だけでなく、広島市民の間でも、早くも歓迎ムード一色とか。丸をライバル球団に持っていかれたショックも、長野が巨人戦で活躍すれば溜飲が下がる……そう思っているカープファンは多いのです。

「長野さんには、聞きたいことがいっぱいある」と語る野間。「新井さん」が引退したいま、チームの精神的主柱として、長野がどんな働きを見せてくれるのか? 4連覇を狙うチームのキーマンであることは間違いありません。

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