往年の名女優はカメラ女子だった…『イングリッド・バーグマン 〜愛に生きた女優〜』 しゃベルシネマ【第61回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

ハリウッド黄金期に活躍した女優さんたちは独特の輝きと美しさを持ち、そんな彼女たちに今なお魅了されている人も多いかと思います。
そこで今回の「しゃベルシネマ」では、『イングリッド・バーグマン 〜愛に生きた女優〜』から、イングリッド・バーグマンの知られざる魅力を掘り起こします。

「自分らしく生きること」を追求し続けた、イングリッド・バーグマン生誕100周年記念ドキュメンタリー

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「君の瞳に乾杯」の名セリフでも有名な『カサブランカ』をはじめ、『誰が為に鐘は鳴る』『ガス燈』など、数々の代表作で知られるスウェーデン出身の名女優、イングリッド・バーグマン。

知性あふれる美貌と卓越した演技力で7度のアカデミー賞ノミネートと3度の受賞歴を持ち、ハリウッド黄金期において特に才能が光る女優の一人として、人々を魅了した。

しかしその一方で、プライベートで不倫騒動に3度の結婚と、スキャンダルも多く、その一生は波乱万丈なものだった…。

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このドキュメンタリー映画は、2015年のイングリッド・バーグマン生誕100周年を記念して制作されたもの。
バーグマン自身が撮影した写真や貴重なプライベート映像に加え、日記、手紙、子どもたちへのインタビューを通し、女優として家庭人としてのバーグマンの魅力が浮き彫りになっています。
本作は同年のカンヌ国際映画祭でプレミア上映され、喝采を浴びました。

スクリーンを彩るイングリッド・バーグマンは、聡明で美しく穏やか。
そして、強い意志の持ち主。
家族を愛し、自らの信念のままに真っ直ぐに生きる姿は、仕事と家庭の両立を目指す現代女性の生き方とも通じるものを感じさせます。

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『イングリッド・バーグマン 愛に生きた女優』の公開日となった8月27日、今回が初来日となるスティーグ・ビョークマン監督の登壇による初日舞台挨拶が行われ、八雲ふみねが司会を務めました。

ドキュメンタリー制作監督から見た“素顔のイングリッド・バーグマン”とは…。

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スティーグ・ビョークマン監督がベルリン国際映画祭に訪れた際、イングリッドの娘で女優のイザベル・ロッサリーニがビョークマン監督に「母のドキュメンタリー映画を一緒に作りましょう」と依頼したことからスタートした、このプロジェクト。
本作を観て驚くのは、そのプライベートショットの多さです。

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「イングリッドは写真家だった父親の影響を受け、写真や映像を撮るのが大好きで、常にカメラを持ち歩いてました。また手紙や日記を書くことも好きでした。これらの資料は生前からイングリッドが大切に保管し、死後は子どもたちに受け継がれていたんです。映画を制作するにあたって、ホームムービーや写真をイングリッドの家族から提供された時、その膨大さに驚きましたね。どれを使用するか、選ぶのにとても苦労しました」と、バーグマンについての秘話を語るビョークマン監督。

イングリッド・バーグマンは故国スウェーデンから始まり、ハリウッド、ローマ、パリ…と居を変えますが、引っ越しのたびに自ら撮影した写真や映像をすべて持って移動していたというからオドロキです。
さらにビョークマン監督によると、その膨大な写真や映像の中にバーグマン自身が撮影した長編映画もあったとか。
彼女がどんな物語を紡いだのかも気になるトコロですが、イングリッドは今風に言うと“カメラ女子”だったんですね~。
しかも、モノを捨てることが出来ず、なんでもかんでも後生大事に取っておく性格だったとは…。
ブームに乗っかって、中途半端な断捨離にハマっている私としては、ちょっぴり反省です。

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本作はイングリッド・バーグマンと同じくスウェーデン出身の女優、アリシア・ヴィキャンデルがナレーションを務めていることでも話題となっています。

アリシア・ヴィキャンデルと言えば、これから公開となる『ジェイソン・ボーン』でヒロインに抜擢されるなど、ハリウッドでの活躍が期待される若手女優の一人。
「アリシアは『リリーのすべて』で本年度アカデミー賞助演女優賞を受賞するなど、国を超えて活躍する旬な女優。
彼女の持つ美貌と気品は“現代のイングリッド・バーグマン”と言っても過言ではないと思います」と、ビョークマン監督はアリシアに若き日のバーグマンの面影を投影して、ナレーションに起用したとのこと。

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黒澤明、溝口肇といった名匠たちの日本映画が大好きだと話す、スティーグ・ビョークマン監督。
約2週間の日本滞在中に、京都や奈良にも足を運び、初めての日本を満喫したいと仰ってました。
「イングリッド・バーグマンはとても強い女性だったと思います。保守的な価値観が強かった時代にたとえ批判や中傷を受けても自分の思いを貫き、家庭も仕事も恋もすべてを手に入れても良いと示した人。彼女が映画で演じたキャラクターとは違う生身のイングリッドを感じてほしい」と、観客に語りかけてらっしゃいました。

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映画の公開を記念して、Bunkamuraギャラリーでは「イングリッド・バーグマン写真展」 が9月5日まで開催中。
こちらも秘蔵映像や本邦初公開の写真、日本公開時の映画ポスターなど見応えたっぷり。
入場無料ですので、映画鑑賞の前後に併せてお楽しみ下さい!

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2016年8月27日からBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
監督:スティーグ・ビョークマン
プロデューサー:スティナ・ガーデル
ナレーション:アリシア・ヴィキャンデル
音楽:マイケル・ナイマン
出演:イザベラ・ロッセリーニ、イングリッド・ロッセリーニ、ロベルト・ロッセリーニ、ピア・リンドストローム、フィオレラ・マリアーニ、リブ・ウルマン、シガニー・ウィーバー、ジャニーン・ベシンガー ほか
©Mantaray Film AB. All rights reserved.
公式サイト http://ingridbergman.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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