中国の無人探査機が月に着陸~本当の狙いは宇宙での軍事利用

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月4日放送)に外交評論家・キャノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。中国の宇宙空間での軍事戦略について解説した。

中国の無人探査機が月に着陸~本当の狙いは宇宙での軍事利用

「新華社」 中国の月探査機「嫦娥4号」、月裏側への着陸に成功  3日、北京航天(宇宙)飛行管制センターで撮影した着陸プロセスのイメージ図。中国の月探査機「嫦娥4号」が3日午前10時26分(日本時間同11時26分)、月裏側の予定エリアに無事着陸した。中国国家航天(宇宙)局が明らかにした。(北京=新華社記者/金立旺)=2019(平成31)年1月3日、提供:新華社/共同通信イメージズ

 

嫦娥(じょうが)4号が月面着陸に成功

この嫦娥というのはもともと中国の神話に出てくる仙女のこと。「嫦娥4号」とは、中国が打ち上げた無人探査機を指す。中国政府は3日、中国の無人探査機「嫦娥4号」が世界初となる月の裏側への軟着陸に成功したと発表した。探査機は、今後月の表面の構造や、鉱物成分を調査する。中国の習近平指導部は2030年までにアメリカやロシアと並ぶ宇宙強国となることを標榜しており、人類の未開拓地とされる宇宙空間での権益確保を狙う見通し。

飯田)これがいったいどういうものを意図して、狙いが何なのかというところです。

宮家)科学的には、誰もやっていないことをやったということでニュースになるのでしょう。だけど、アメリカが月に人を送り込んだのは60年代です。もう何十年も前の話ですよね。それを中国がやっと追いかけてやっているということですよ。ヘリウムがあって、核融合で使えるなどと探査をして権益を独占するんじゃないかと言われますが、そんなことを考えている場合だとは私は思いません。なぜなら、これには物凄くお金がかかるからです。もし本当に経済的にペイするのだったら、アメリカが40年前にとっくにやっていますよ。経済的にペイしないから、いまは中断して別のことをやっているわけです。
中国にとっては経済的合理性の問題ではない。戦略的な合理性の問題で、すなわち米露に追いつく意味の方が大きいのです。そうなれば彼らのやっていることに説明はつくのですから、中国に月の裏側の資源を独占されるのとはまるで別のことです。いまは陸海空だと言っていますが、実際の対決はどこで起きているかというと、目に見えないサイバーと宇宙なのです。宇宙の世界といっても地球の大気圏外で行われていることだけでなく、惑星のレベルで競争が起きていて、それが軍事的に利用されていくことの方が問題なのです。ですから、月の裏側まで行ったということが軍事的に、そして安全保障の問題から中国にとってどういう意味を持つのかということを考えなければいけない時期にきていると思います。主戦場はサイバーと宇宙だと私は思っています。

飯田)いまのところは地球側からロケットを飛ばして衛星を破壊するという実験を中国はやっていますが、今度は宇宙から宇宙空間へ攻撃、みたいなことになってくるのでしょうか?

宮家)スターウォーズみたいなことはまだできないけれど、それだけ遠隔操作が正確にできる事実というのは、実戦においていろいろな妨害があるわけですから、それを破ってコントロールができるということにも繋がりますから、彼らは経済的な合理性でなく政治、軍事的な合理性でやっている可能性が高いです。その意味では一歩前進したと見るべきだと思いますよ。

日本の軍事的な宇宙進出は構想にない

飯田)日本も「かぐや」という探査機を出して月に関してもやっています。

宮家)悪いと言っているわけではないですが、決定的に違うのは、日本は宇宙を軍事的に利用するという発想が全く無いのですよ。それはそれで正しいのですが、他の国はそうではない。ある程度防御という観点から、日本に対する軍事的脅威が宇宙からも来ることは念頭に置かなければいけないと思います。防衛という観点で、全く軍事利用を排除してしまうのは如何なものかと思います。

飯田)こんなときに専守防衛の範囲がどこまでか、なんて……。

宮家)いままでの議論は2次元的な世界だったのですよ。3次元になって行くときに、いままでの議論のままではどうなのかと思います。

 

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