訓練開始で大騒ぎとは!? 【イイダコウジ そこまで言うかブログ】

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去年の9月に安全保障関連法が成立して11か月。この法律に反対派は「戦争法案」といい、「日本が戦争できる国になる!」と言ってきました。
そうした反対の声に配慮したのか、成立してしばらくは法律に盛り込まれた新任務は現場の自衛隊に付与されて来ませんでした。
その新任務について、ようやく訓練を始めると稲田防衛大臣が今日の会見で発表しました。
予想された通り、法案に一貫して反対だったリベラル系のメディアを中心に大騒ぎです。
各紙夕刊一面に載せていますが、特に扱いが大きかったのが東京新聞。
一面トップで見出しも大きく展開しています。

『防衛相、訓練開始表明 安保法 運用段階へ』(8月24日 東京新聞)http://goo.gl/RKdg4I
<稲田朋美防衛相は二十四日午前の記者会見で、昨年九月に成立した安全保障関連法に基づく自衛隊の新任務について、訓練を開始すると表明した。他国を武力で守る集団的自衛権行使も含め、同法に盛り込まれたすべての新任務が対象。可能なものから順次、訓練に着手する。当面は、南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に十一月に派遣される陸上自衛隊の交代部隊に「駆け付け警護」などの新任務を訓練させる。>

リードの後の書き出しの一文に、「反対を押し切るひどい政権だ」という思いがにじんでいます。

<安保法は違憲の疑いが指摘され、廃止を求める世論も依然強い中、訓練を経て本格的な運用段階に移行する。>

訓練が始まっただけでもこの騒ぎ。先が思いやられるわけですが、法律を厳格に守るのを旨とする自衛隊だけに、こうした命令がなければ訓練すらすることができないのです。本来であれば、法律が成立した時点で法的要件はクリアしているはずですから、訓練を重ねて、いつ下命されても対応できるようにしておくのが当然なんですが、自衛隊はある意味訓練すら自分の意志で行うことができないんですね。素晴らしい文民統制!

さらに、駆けつけ警護やPKO参加各国との宿営地の共同防衛については、これまで現場にしわ寄せがいっていた部分を解決するものです。もはや公然の秘密になった感もありますが、今までは宿営地警備については他国軍が襲われてもそこに自衛隊員がいたことにして警備する。あるいは、まず偵察などの名目で自衛隊員が襲撃を受けた宿営地に進出し、その隊員警護の名目で個別的自衛権を発動し対処するといったことが隊員間で申し合わされていたそうです。我が国の法律はようやく変わりましたが、現場の状況がそれに合わせて変わっているわけではないので当然です。
現場は出来る範囲で知恵を絞って対処するしかありません。そうした現場の事実を知らずに、あるいは知っていて知らんふりをして訓練開始というだけで大騒ぎ。隊員の生命が大事だと言うのなら、しっかり訓練をして自分の身を守れと叱咤するのが当然でしょう。訓練すらするな、でもPKOは国際貢献だから反対せずに送り出すでは無責任と批判されても仕方がありません。

さらに、その訓練にも心配なことがあります。これは、ある自衛隊の関係者に聞いたことなんですが、陸上自衛隊では実弾射撃の訓練を行った際、訓練終了後には空になった薬きょうの数まで数えるそうです。そして、空薬きょうが紛失した場合、隊員総がかりで探すそうです。「自衛隊 薬きょう」で検索すると、直近でもこんなニュースがヒットしました。

『使用済み薬きょう30発紛失 青森・陸自第9師団「再発防止に努める」』(6月8日 産経新聞)http://goo.gl/zquNJC

空の薬きょうが30発、全体の弾数から言えば1.5%に過ぎない数が、しかも自前の演習場内で紛失してもニュースになってしまう。こんな国、他にありません。市街地で実弾が紛失すればニュースでしょうが、コントロール下にある演習場で、しかも空の薬きょうですからね。

これがどうして心配かといえば、紛失すればこうして騒ぎになるわけですから、隊員たちは実弾演習でも知らず知らずのうちに空の薬きょうの行方を気にしてしまいます。最前線で一瞬でも緊張を解いたらやられるというところで、いつもの習い性で目線を切ってしまったら...。もちろん、現場の方々は淡々と、そんなことのないように訓練に訓練を重ねるのでこうした心配は杞憂に終わるでしょうが。

それに、陸は薬きょうが残って勘定できるからこうして問題になるわけで、海自や空自は訓練をして空薬きょうが飛び出ても海に沈んでしまうので問題にもされません。陸自だけこうして大騒ぎするのがいかにむなしいことかが分かると思います。いずれにせよ、隊員の皆さんが淡々と訓練ができるよう環境を整えるべきなのではないでしょうか?いちいち揚げ足取りすることが文民統制であるとは、私には思えません。

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