犬と暮らす幸せを一人でも多くの人に…。「普通の飼い主」だった私が、動物ボランティアを始めた理由 【わん!ダフルストーリー】

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■震災後、新たに2頭が家族に…

金子さんと茶々(左)とCOO。女神湖にて(w680)

金子さんと茶々(左)とCOO。女神湖にて

各地に甚大な被害をもたらし、多くの人の人生を変えた東日本大震災。
千葉県に住む会社員・金子弥生さんも震災を機に自身をみつめなおし、大きく生き方を変えた一人です。

震災前はご家族、そして愛犬のCOO(クー、ウエストハイランドホワイトテリア、6歳)と一緒に、ごく普通の生活を送っていた金子さん。
震災で直接の被害は受けなかったものの、被災地の惨状に胸を痛め、「自分にできることはないだろうか?」と考えたといいます。
「仕事や家庭のこと、そしてCOOのことを考えると家を長時間空けて現地でボランティアをするのは難しい。じゃあ、できることは何だろう?って考えたのです。そして出てきた答えが、犬を助けることでした。私は幼いころから犬が大好きで犬と一緒に暮らしてきましたから、犬と接することは大好きだし、得意でもあります。得意なことなら無理なくできるはず…と思い、犬に関するボランティアを探したのです」と金子さんは当時を振り返ります。

まずネットで検索してみたところ、被災により飼い主と離れ離れにならざるを得ない犬を首都圏のシェルターまで運搬するボランティアの募集を発見。
「これなら自分にできる」と、早速活動に参加、複数の被災犬を首都圏まで送り届ける役割を果たしました。
この経験を通じて、「無理をしなくても、ありのままの自分でできることをすればよい」という学びを得た金子さん、次に取り組んだのは、福島県いわき市のブリーダーAさんへの支援活動でした。

個性もそれぞれの3頭(w680)

個性もそれぞれの3頭

「Aさんはトリミングサロンの経営をしながら、ブリーディングを手掛けていましたが、震災で両立が難しくなり、約200頭の犬を抱えて窮地に陥ってしまったのです。動物関連のビジネスをしているために、保護団体の支援も十分に受けられないということでした。それを見かねたある女性がボランティアで里親募集サイトを運営、私はそのサイトを見たのがきっかけで、里親探しをお手伝いすることになったのです」。

里親募集をネット等で呼びかけるボランティア活動を行う傍ら、金子さん自身も、Aさんの施設からノーフォークテリアの茶々(雌、9歳)を自宅に引き取り、続いて別のブリーディング施設からマルチーズのまるみん(雌、4歳)を引き取り、今は計3頭の愛犬と一緒に暮らしています。
「茶々はクールで気が強い姉御肌、COOは甘えん坊でやんちゃ、先天性の障害があるまるみんはマイペース…と、三頭三様の個性があって、見ているだけで楽しいですね。里親を探している他の犬たちも、新しい家族のもとで、こんな風に幸せに過ごしてもらいたいなあと願っています」。

■「犬のおかげで毎日が本当に楽しくなった」「前向きになれた」里親から届く喜びの声!

我が家の天使 まるみん(w680)

我が家の天使 まるみん

「幸せになってほしい」との願いが強いからこそ、里親と犬たちとのマッチングの際にはかなり慎重になってしまうという金子さん。
ブログやSNSを駆使して里親募集の情報を拡散、「引き取りたい」と連絡をしてきた人とはまずメールでやり取りをして、住環境などを確認。
その上で電話で数度やり取りをして「この人なら大丈夫」と確信を得られた人にだけ、犬を譲渡しているそうです。
手数料として一部を受け取っているのみで、交通費やフード代などの諸経費はほぼ自腹。
「手間暇も費用もかかりますが、犬たちが幸せになってくれるなら、苦にはなりません」。

努力の甲斐あって金子さんのもとには「犬を迎えたおかげで、毎日が本当に楽しくなった」「犬のいる暮らしがこんなに素晴らしいとは思わなかった」「生き甲斐を見つけることができた」など、里親となった人たちからの喜びの声がたくさん寄せられているそうです。

「犬って本当にすごい力をもっているんだなぁ…って、改めて驚いています。ただ一緒に過ごすだけで人を笑顔にし、優しい、前向きな気持ちで満たしてくれるなんて、すごいですよね。この力をもっとたくさんの人に知ってほしい。そして犬を愛する人がもっともっと増えてほしいと願っています。そうすれば日本は犬にとってもっと暮らしやすい国になるのではないかと思うのです」。

■犬のためにできることを、1つずつコツコツと

まるみん宙を飛ぶ!(w680)

まるみん宙を飛ぶ!

仕事やボランティアに忙しいながらも、3頭の愛犬に囲まれて充実した日々を送る金子さんですが、1つだけ、心にひっかかっていることがあるそうです。それは、COOのこと。
「ずっと私たちの愛情を独り占めして自由に暮らしていたのに、突然、茶々とまるみんがやってきたことによって、心に傷を与えてしまったのではないかと、いつも気になっています」。実際、COOは茶々がきたときも、まるみんが来たときも、ストレスのためかおう吐をしてしまうことがあったそうです。

「今も、気の強い茶々と障害のあるまるみんとの調整役になってくれていますし、COOには本当に苦労をかけてしまっているな…と申し訳なく思っています。せめて、遊ぶのが大好きなCOOのためにたっぷり時間をとってあげたいのですが、今はまだ仕事が忙しくて旅行やドッグランに頻繁に出かけることもできません。そこで、最近、思い切って自宅の庭に人工芝を敷きました。わざわざ出かけなくても家でたっぷりCOOと遊べるようにしたんですよ」。
COOはもちろん茶々やまるみんも、この新しいお庭が大好き!何かと忙しい平日も庭にちょっと出るだけで、犬たちと一緒に遊ぶことができるようになりました。
「庭で幸せそうに遊んでいる犬たちを見ているだけで、私もとても幸せな気持ちになります。これからも、こんなふうに幸せな気持ちで犬たちと一緒に生きていきたいなと前向きな気持ちになれるんですよね。本当に犬の力はすごいです」。

定年後、時間ができたら動物愛護やアニマルセラピーなどについて本格的に学び、動物愛護活動に貢献していくのが目標という金子さん。
少年院での更生プログラムとして保護犬のケアを取り入れる活動など、学んでみたいことがたくさんあるそうです。
「これまで犬には、本当にたくさんの贈り物をもらって生きてきました。これからの人生、犬たちへの恩返しのつもりで、自分にできることを1つずつやっていきたいと思っています」。

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  わん!ダフルストーリー Vol.27

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