人は不幸を味わうほど、人の痛みに敏感になれるもの 【瀬戸内寂聴「今日を生きるための言葉」】 第18回

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人間の愛とは、大体において自分本位なものです。

とくに男と女のセックスをともなう愛は、仏教では〝渇愛(かつあい)“と呼ばれます。

渇愛とは肉欲の愛。喉が渇いてたまらない感じで、飲んでも飲んでも心は乾きつづけます。

渇愛は、わたしがあなたを愛しているのだから、あなたもわたしを愛してくれ、と要求します。愛のお返しを求めます。それも元金だけでなく、利息もつけてほしいと望んでしまいます。

自分が欲していたら押しつけがましく与え、それの報いてくれないと怒る。じつに勝手なものなのです。

瀬戸内寂聴

瀬戸内寂聴プロフィール

撮影:斉藤ユーリ


出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫