プーチン大統領まで巻き込んだ“最後の皇帝の恋”

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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第531回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、12月8日公開の『マチルダ 禁断の恋』を掘り起こします。


ロシア最大のスキャンダルにして最大のタブーを映画化

プーチン大統領まで巻き込んだ“最後の皇帝の恋”
1890年代、ロシア・サンクトペテルブルク。ロマノフ王朝ロシア皇帝アレクサンドル3世の息子で王位継承者であるニコライ2世は、バレリーナのマチルダ・クシェシンスカヤに一目惚れし、恋に落ちる。惹かれ合い、情熱的な逢瀬を重ねていくマチルダとニコライ。しかし宮廷は、王位継承者であるニコライとバレリーナの恋を許さなかった。

やがてニコライの婚約者でヴィクトリア女王の孫娘・ヘッセン大公女アリックスも、マチルダへの嫉妬と憎悪を募らせることに。そして父の死後、ニコライは皇后である母の強い希望でアリックスと結婚。それでもマチルダへの想いを断ち切ることができないニコライは、王位を捨てる決心をするが…。

プーチン大統領まで巻き込んだ“最後の皇帝の恋”
ゴールデン・グローブ賞ノミネート、アカデミー賞外国語映画賞ロシア代表選出など、ロシアが世界に誇る気鋭アレクセイ・ウチーチェリ監督による『マチルダ 禁断の恋』が、ついに日本に上陸。王位継承者と伝説のバレリーナの切ない恋。この実話に基づく物語は、当時のロシア帝国だけでなく、現代ロシアにおいてもセンセーションを巻き起こす超話題作となりました。

プーチン大統領まで巻き込んだ“最後の皇帝の恋”
ロシア国外の観客が観たならば、ラブストーリーとして存分に楽しめる本作ですが、この歴史的事実は、ロシア全土ではよく知られたところ。しかもロシア国内では“聖人”として神格化されているニコライ2世の禁断の恋とセックスが題材にされているところから、皇帝の名誉を傷つけてしまうということを危惧して抗議が勃発。

上映中止を求めるキリスト教過激派組織が映画館への放火を警告したり、国会議員が先頭に立って論争を巻き起こしたり、果てはウチーチェリ監督を尊敬するプーチン大統領が本作について言及するほどの騒動にまで発展したのです。

プーチン大統領まで巻き込んだ“最後の皇帝の恋”
とは言え、エカテリーナ宮殿やマリインスキー劇場、ボリショイ劇場などの実際のロケーションにて撮影された映像美は、豪華絢爛の一言。俳優たちが身につけている衣装や宝石も眩いばかりに美しく、やがて滅びゆく帝政ロシアの衰微と、皇帝の悲恋を重ね合わせたその世界観は見応えたっぷり。芸術作品としても楽しめること請け合いです。

プーチン大統領まで巻き込んだ“最後の皇帝の恋”
マチルダ 禁断の恋
2018年12月8日からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー
監督:アレクセイ・ウチーチェリ
出演:ラース・アイディンガー、ミハリナ・オルシャンスカ、ダニーラ・コズロフスキー、ルイーゼ・ヴォルフラム、トーマス・オスターマイアー、インゲボルガ・ダクネイト ほか
©2017 ROCK FILMS LLC.
公式サイト http://www.synca.jp/mathilde/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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