原油減産で暫定合意~それでも原油価格が上がらない理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月7日放送)に外交評論家・キャノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。OPECの原油減産の暫定合意について解説した。

原油減産で暫定合意~それでも原油価格が上がらない理由

OPEC総会で取材に応じるサウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相=2018年12月6日、ウィーン(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

OPEC、原油の減産で暫定合意

主要産油国で構成するOPEC(石油輸出国機構)は6日、ウィーンで定例総会を開いた。急落する原油価格のテコ入れをはかるため、産油量の削減で暫定的に合意している。なお減産は来年の1月から実施する見込みだが、原産量などの詳細はまだ確定しておらず、OPECは7日にロシアなど非加盟国と拡大会合を開いて正式決定する見通し。

飯田)減産となると、ガソリンとか灯油の価格に影響するのかと思いますが。

宮家)でもこれはあくまで、暫定の合意をしたということです。暫定は暫定なので、誰も守らないかもしれないということですよ。

飯田)誰も守らないかもしれない?

宮家)いま値段が下がっています。1バレルあたり70ドルまで下がったけれど、60ドルを切るかもしれません。そこでイラン制裁が来る。イランの石油が出なくなる。もちろん密輸するのですが、それは一応置いといて。そうするとマーケットに出て来るのは少し減りますね。

飯田)そうですね。

宮家)となると、産油国だったらどうします? 増産しますよね。

飯田)減った分シェアが取れますものね。

宮家)当然ですよね。みんながそう思ったらどうなります? みんなで増産したらだぶつく。するとまた値段が下がるわけです。減産で暫定合意ということは、みんなで「絶対ダメだよ」と暫定で合意しているのです。だけど、本当に減産をしたとき、自分だけが抜け駆けするのですよ。だからこういう場合はときどき値段が下がる。減産ができなくて、そんなに思うように上がらない。

飯田)かえって下がったりすることがある。

原油減産で暫定合意~それでも原油価格が上がらない理由

サウジアラビアの反体制記者ジャマル・カショギ氏(バーレーン・マナマ)=2014年12月15日 写真提供:時事通信

ジャーナリストのスキャンダルの影響で動きにくいサウジ

宮家)ということがあり得るので、私はまだ眉唾だなと思っています。それからもう1つ大事なことは、サウジアラビアの生産量です。日産100万バレルぐらい減らしたいということですが、サウジアラビアの生産量はいま1,050万バレル前後です。大体1,000万バレル以上ですよ。だから1割減らしてしまえば、それで行ってしまう。

飯田)サウジからすれば。

宮家)でもそうしたらサウジは100万バレル分大損で、周りの国が得をするだけではなくて、もしかしたらそれで増産するかもしれない。そうするとサウジは値段が上がらないで、さらに減産もしてしまう。そんな馬鹿なことをするわけない。しかし、例のジャーナリストのスキャンダルの関係でそんなに無茶苦茶なことはできず、動きにくい。そうなると、本当に思う通り減産ができて値段が元に戻るかもしれないですね。戻ると言っても70ドルはちょっと高めだと思いますが。原油の価格は、80年代90年代までは大体1バレルあたり2~30ドルでした。乱高下しますが、いまで4~50ドルというところが適正水準ではないですかね。

飯田)トランプ大統領としては、原油価格が上がるのは良くないことですか?

宮家)良くないでしょうね。ですからサウジアラビアに対しては、「お前、間違っても減産なんかすんなよ」と、無言の圧力を掛けているかもしれません。サウジはわかっていると思いますが。

飯田)サウジもそこは忖度する部分。

宮家)きょう初めてやるわけではないですから。

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