あるインド人男性が生理用品を手作りした、切実な理由

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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第526回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、12月7日公開の『パッドマン 5億人の女性を救った男』を掘り起こします。


インドでNo.1ヒット! 驚きと感動に満ちた実話を映画化

あるインド人男性が生理用品を手作りした、切実な理由
パッドマン…と聞いて、新たなヒーローの誕生をイメージした人もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし彼は、バットマンやスパイダーマンのように特殊能力を持っているわけでも、世界の平和を守っているわけでもありません。彼が救ったのは、5億人の女性たち。パッドマンとは、現代のインドで“生理用品”の開発と普及に人生を捧げた、実在の人物なのです。

あるインド人男性が生理用品を手作りした、切実な理由
インドでは生理用ナプキンは輸入品に頼っていたため、とても高価なもの。どのくらい高価かと言うと、ファストフード店でオーダーするドリンクの約11倍! しかもこれは、本作の舞台である2001年、要するに21世紀になってからのお話。インド国内における生理用ナプキンの普及率が、その当時、わずか12%だったという事実に衝撃を覚える人も多いことでしょう。

あるインド人男性が生理用品を手作りした、切実な理由
北インドの田舎にある小さな工房で働くラクシュミは、妻のガヤトリと結婚式を挙げたばかり。幸せな結婚生活を送っていたが、ある日、ラクシュミは妻が生理になったときに、不衛生な古布を使って処置しているということを知り、ショックを受ける。そして高価な生理用品を妻にプレゼントしたものの、家計を考える彼女から拒否されたため、ラクシュミは自分で衛生的な製品を作ることを決意。

しかし生理用品の研究とリサーチに明け暮れるラクシュミには、村人たちから奇異な目が向けられ、数々の誤解や困難に直面していく…。

あるインド人男性が生理用品を手作りした、切実な理由
インド映画らしいエンターテイメント性を追求しながら、衛生的なナプキンが手に入らず、生理障害に悩むインドの女性たちの実情、そしてインド社会における女性の自立にまで踏み込んだ本作。モデルとなったアルナーチャラム・ムルガナンダム氏は、このナプキンの開発にまつわる数々の功績が認められ、2014年には米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたほか、インド政府からは2016年に褒章パドマシュリを授与されました。

“生理用品がテーマの映画”と言われると、インド人に限らず我々日本人も、いささか気後れしてしまうかもしれません。しかし想像を越えるほど壮絶でハートフルなラクシュミの生き様は、女性だけでなく男性にも知ってほしい! 観る前と観た後で、その“ギャップ”の大きさは、2018年公開作品のなかでもNo.1です!!

差別に試練、何があっても諦めない不屈の精神の持ち主、ラクシュミ。そこにあったのは、ただただ、愛する人を守りたいという想いのみ。パッドマンこそ、史上最高のリアル・ヒーローなのです。

あるインド人男性が生理用品を手作りした、切実な理由
パッドマン 5億人の女性を救った男
2018年12月7日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督・脚本:R.バールキ
出演:アクシャイ・クマール、ソーナム・カプール、ラーディカー・アープテー ほか
©2018 SONY PICTURES DIGITAL PRODUCTIONS INC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト http://www.padman.jp/
第31回東京国際映画祭 特別招待作品

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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