南シナ海問題に怒るアメリカ~米中冷戦の幕開け

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月16日放送)に外交評論家・キャノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。ASEAN首脳会議での米中の様子について解説した。

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15日、東アジアサミットで言葉を交わすペンス米副大統領(左)と中国の李克強首相=2018年11月15日 シンガポール(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

ASEAN一連の首脳会議が閉幕~南シナ海をめぐって米中が互いに牽制

ASEAN(東南アジア諸国連合)を中心とする一連の首脳会議は、15日、3日間の日程を終え閉幕した。会議では、中国が軍事拠点の構築を進める南シナ海の問題が主な議題となったが、アメリカと中国が互いに牽制する場面も見られた。

飯田)アメリカからはペンス副大統領、中国は李克強首相。立ち話では非難とその反論があったようです。

宮家)トランプさんが来なくて良かったですね。彼が来ると何をするかわからないから。ペンスさんはまともな人ですから、ちゃんと事務方の振り付け通りに動いてくれますよね。それでガチンコでやったわけですが、これがアメリカの本音ですよ。
私に言わせれば、これは中国の満州事変です。つまり、あの後で日本は対外的に孤立して行きました。中国にとって、南シナ海の岩を埋め立てても、岩は岩で島にはならない。人工島と言っているけれど、島だったら国際法上で領海と領空ができますが、岩ですから。公海なのです。そこで国際仲裁裁判所がダメと判断を下した。これはリットン報告書です。中国にとってはレッドラインを渡ってしまったと思っているのです。

飯田)もう戻れない。

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孤立する中国~南シナ海人工島建設でレッドラインを越えた

宮家)あとは孤立化しかありません。アメリカはこれでキレたのですから。これからもアメリカは言い続けるでしょう。中国は、いままでASEANのなかにラオスやカンボジアという言うことを聞いてくれる国がいるので、ASEANでの満場一致の中国非難はブロックして来た。だけどアメリカがここまで怒っているから、ASEAN各国も引いてしまう。起こるべくして起こったことだと思います。これからも当分の間、解決はしないでしょう。中国はあそこまでやってしまったことの原状回復はできないでしょうからね。

飯田)埋め立てて滑走路まで作ってしまいましたからね。

宮家)ミサイルも配備していますから。ミサイルが中距離弾道ミサイルで、恐らく「空母キラー」と言われていて、あんなものを何10発も打ったら、さすがのイージス艦でも守れないかもしれない。そうすると、アメリカの空母、もしくは第7艦隊が南シナ海に入れなくなる。ということは、中国が主張する九段線のなかにアメリカが入れなくなってしまう。こうなることが最大の問題で、それをめぐってやっているわけですから。これはどちらも引けませんよ。

飯田)日本も、南シナ海を通って大量の物資が来ていることを考えると……。

米中の対立は冷戦状態へ

宮家)本来はあんな線なんてないですからね。日本の湾岸へ行く重要なシーレーンですから。フィリピンを迂回して行くルートもあるけれど、そっちの方が良いわけはないからね。

飯田)相当コストがかさんでしまうと。

宮家)そもそも、公海を占領するなんて、公道にブロック塀を置いて「うちのもんだ」と主張するようなものですから、これはガチンコでやるでしょうね。だけどドンパチはしませんよ。中国が戦争なんてやるわけはないです。10年後、20年後は知りませんが、いまの状況でアメリカ海軍と喧嘩なんてしたら、コテンパンにやられます。アメリカだって中国と戦争はしません。大陸に入って行ったって戦争はやめてくれないからね。冷戦ですね。

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