ザ・タイガースのラストを飾ったシングル「誓いの明日」。48年前の今日リリース!

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1967~68年のGSブーム期にシーンの頂点に君臨し絶大な人気を誇ったザ・タイガースだったが、69年以降のブーム衰退期はさすがの王者も時代の流れと無縁ではいられなかった。69年3月には以前から燻っていたバンド内のトラブルの火種が加橋かつみ脱退というかたちで“炎上”。なんとか“全焼”は免れて岸部シローを加えての新体制で再出発するものの、今度は瞳みのるが所属事務所の渡辺プロダクションに脱退を通告するという事態に(『週刊明星』がスクープ報道している)。バンド内に火種を抱えた不安定な状態であることに変わりはなかった。

GSブーム衰退の中でも69~70年にかけて3~4か月ごとのローテーションで新曲シングルのリリースが続いていたし、主演映画『ハーイ!ロンドン』制作や沢田研二、岸部修三・シロー兄弟のソロ・プレジェクト・アルバム発表、田園コロシアムでの野外コンサートなど、話題性に富んだ活動を展開していたため、傍目には気付き難かったがが、すでに70年代に入ってから何度かバンドと事務所の間では解散が協議され、田園コロシアム・コンサートのひと月前である70年7月には解散が内定。10月には年内解散が内々での決定事項となっていたのである。

ザ・タイガースのラストを飾ったシングル「誓いの明日」。48年前の今日リリース!
そんな中、9月上旬からアルバム『自由と憧れと友情』のレコーディングがスタートしているが、メンバー全員が解散を前提として制作に携わった実質的ラスト・アルバムという意味では、ザ・ビートルズの『アビイ・ロード』制作時と似たシチュエイションでのセッションと言えるだろう。レコーディングされた全12曲の中から、最もタイガースのラストを飾るにふさわしい歌詞とタイトルの楽曲ということから、先行シングル・カット曲に選ばれたのが「誓いの明日」で、今から48年前の今日1970年11月20日、ザ・タイガース通算15作目のシングルとしてリリースされている。

ザ・タイガースのラストを飾ったシングル「誓いの明日」。48年前の今日リリース!
作詞を後期タイガース楽曲の常連作家とも言える山上路夫、作曲・編曲を同じナベプロ所属のザ・ハプニングス・フォーのリーダーであるクニ河内が手がけているが、このコンビによるタイガース・オリジナルとしては、70年3月リリースのシングルのカップリング「都会」「怒りの鐘を鳴らせ」に続いて3曲目であり、オリコン18位にランクされた。

当時、日本グラモフォン(のちのポリドール)でタイガースの担当ディレクターであった折田育造の証言によると、アコースティック・ギターやパーカッションをフィーチャーしたサウンド、4人のハーモニーで始まる歌い出しなどは、同じ日本グラモフォンから日本盤がリリースされていたクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(CSN&Y)を意識したものらしい。GSブームが終わり、ニューロックと呼ばれた新しいロックの波が押し寄せていた時代へのタイガースなりの対応だったのだろう。

B面に収録されたのは、アルバム『自由と憧れと友情』のオープニングを飾った森本太郎作曲の「出発のほかに何がある」。タイガース御用達の美容院『たぶろう』の経営者・安田富子の夫君であるジャン得永が作詞を手がけた唯一の作品であり、岸部シローのソロ・ヴォーカルがタイガースのシングルに収録された、これまた唯一の作品であった。

「誓いの明日」が発売された時点では、まだタイガースの解散は公式に表明されていなかった。しかし、女性週刊誌など芸能メディアでは盛んに解散説が流布されていたこともあり、AB両面で解散の決意と新たな旅立ちを匂わせる内容のこのシングルに、戸惑いを隠せなかったファンは多かったし、中にはメンバーからの最後のメッセージと受け止め、近い将来確実に訪れるであろうXデイへの覚悟を決めたファンも少なくはなかったのである。

ザ・タイガースのラストを飾ったシングル「誓いの明日」。48年前の今日リリース!
1970年12月8日、ザ・タイガースは正式に解散を発表。翌71年1月24日の日本武道館でのコンサートで、レコード・デビューから約4年に亘る歴史に一旦幕を下ろす。この最期のコンサートはもちろんのこと、その後、82年の瞳みのるを除くメンバーによる同窓会コンサート、2011年の“ほぼタイガース”ツアー、2013年の再結成ツアーでも「誓いの明日」は演奏され、「ラヴ・ラヴ・ラヴ」と並んでタイガースのライヴのフィナーレを飾る定番曲として定着していくのである。

ザ・タイガース「誓いの明日」ジャケット撮影協力:中村俊夫&鈴木啓之

【著者】中村俊夫(なかむら・としお):1954年東京都生まれ。音楽企画制作者/音楽著述家。駒澤大学経営学部卒。音楽雑誌編集者、レコード・ディレクターを経て、90年代からGS、日本ロック、昭和歌謡等のCD復刻制作監修を多数手がける。共著に『みんなGSが好きだった』(主婦と生活社)、『ミカのチャンス・ミーティング』(宝島社)、『日本ロック大系』(白夜書房)、『歌謡曲だよ、人生は』(シンコー・ミュージック)など。最新著は『エッジィな男 ムッシュかまやつ』(リットーミュージック)。
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