第一次世界大戦終結から100年~マクロン大統領が各国に呼びかける「結束」の意味

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月12日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。第一次世界大戦と、そこからの教訓について解説した。

サラエボ ビスマルク フランス マクロン大統領 トランプ 第一次世界大戦 100周年

第1次世界大戦の終結100周年を記念する式典に出席した米独仏首脳。前列左からトランプ大統領、メルケル首相、マクロン大統領(フランス・パリ)=2018年11月11日 写真提供:時事通信

第一次世界大戦終結から100年~ヨーロッパでは第二次世界大戦よりも重要視される戦争

第一次世界大戦終結から100年を迎えた、昨日11月11日。フランス・パリ中心部の凱旋門で記念式典が開かれ、大戦に関係した60カ国以上の首脳らが参加した。ドイツのメルケル首相、アメリカのトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領、日本からは麻生副総理兼財務大臣が出席し、マクロン大統領は「愛国心を持つこととナショナリズムとは正反対のものだ。我々は恐れではなく希望を築くべきだ」と述べ、自国第1主義や排他的な風潮が広がる現状に警鐘を鳴らし、各国に結束を呼びかけた。

飯田)「パトリオティズム(愛国心)とナショナリズム(国家主義)は違う」と演説したようです。

須田)日本は第一次世界大戦、第二次世界大戦という形でネーミングされていますよね。比較的日本が中心で戦った第二次世界大戦と違い、第一次世界大戦は、あまり日本では意識されていません。
ところが、ヨーロッパではむしろ第二次よりも第一次世界大戦の方が、重要視されています。特にイギリスやフランスではGreat War(大戦争)とも表記されています。それだけ大きな意味合いを第一次世界大戦は持っているのかな、と思います。
第一次世界大戦は、それまでの戦争と明らかに様相を変えたわけです。最大の特徴は「総力戦」です。国家存亡をかけて戦争を行いました。それまではどちらかと言うと、職業軍人が中心の局地戦が主でした。しかし、それ以降は工業化が進み、愛国心やナショナリズムの精神が国民に生まれたのもあり、「国家存亡をかけて戦争を行う」という点で「徹底的に相手を叩きのめす戦争」になったのは、第一次大戦が初めてなのです。

なぜ皇太子殺害事件が第一次世界大戦に発展してしまったのか

須田)そして、意外と意識されずに忘れがちですが、第一次世界大戦が発生した理由についてです。教科書的には「サラエボでユーゴスラビアの民族主義者がオーストリア皇太子を殺害したのが原因」とされています。しかし、なぜそれだけでこんな規模の戦争になってしまったのでしょうか? これは、第一次世界大戦前の世界の、特にヨーロッパにおいて、プロイセン(後のドイツ帝国)のビスマルク首相がいましたよね。教科書などでは「鉄血宰相」と言われていますが、彼は外交の天才で、各国と同盟を組みました。「戦争を抑止するために集団的安全保障体制をとろう。例えばA国とB国で戦力差があれば、必ず戦争が起こる。戦力差がないように、同盟を組んで戦力を均衡にして、牽制しよう」という集団的自衛権、安全保障の発想です。
そして、その体制があったために、いざ戦争が起きたら、同盟国同士がどんどんドミノ倒しみたいに戦争を始めてしまったのです。だから、これは今日の世界においても、さまざまな教訓を含んでいるのでは、と思います。

現代にナショナリズムと愛国心の問題が戻っていると指摘する人もいる

飯田)結局、集団安全保障や集団的自衛権、戦力の均衡だけでは、最終的に戦争を防ぐことができない。

須田)むしろ、1度戦争が始まると、ドミノ倒しのように戦争が広がってしまう。そういうリスクも持っているのです。

飯田)その教訓から、第一次世界大戦後に国際連盟ができた。ところが、それを提唱したアメリカは、上院が「モンロー主義だ」と言って参加しませんでした。評論家によっては「その状態が、現代にまた戻って来ているのでは」と言う人もいます。

須田)当時のアメリカだけでなく今日においても、マクロン大統領が指摘しているように「ナショナリズムと愛国心」の問題が、どんどん各国で起こっている。だから、状況はより悪くなっているという意識なのだと思います。

飯田)そのなかで、どう防いで行くのか。まだまだ議論は最初の段階ですか?

須田)ただ、一方で「歴史に学ぶこと」の重要性はあると思います。

飯田)いまこそ、この第一次世界大戦を学ばなければいけないのですね。

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