日本は災害対策予算について発想の転換が必要

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月8日放送)に上智大学総合グローバル学部教授の前嶋和弘が出演。アメリカのハリケーン被害への例をあげ、日本の災害による補正予算について解説した。

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地震で発生した北海道厚真町の土砂崩れ。広範囲で土が露出している=2018年9月6日午前、北海道厚真町 写真提供:産経新聞社

補正予算~西日本豪雨や北海道地震などの復旧費用が盛り込まれる

昨日、平成30年度の第1次補正予算が成立した。野党は安倍改造内閣の新閣僚の資質を追求したが見せ場はなかった。
また、外国人労働者受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案も、条件闘争のようになり、論点がぼやけ、論戦は低調なものとなった。

飯田)今回の補正は総額9,356億円。西日本豪雨や北海道胆振東部地震の復旧費用などが盛り込まれています。これだけ災害があると困りますよね。

前嶋)そうですね。もっと言えば、補正予算ではなく当初予算(本予算)に入れておくとか。台風は間違い無く年間通してたくさん来るし、残念ながら地震もある。この際いろいろ作っておいて、頑丈にした方がいい気がします。

アメリカは2005年のハリケーン被害を人災と受け止めて設備投資を行った

前嶋)私の専門はアメリカ現代政治だから、頻繁にアメリカへ行きます。2005年のフロリダで『カトリーナ』と呼ばれる大型ハリケーンがありましたが、あの後に同じようなハリケーンがたくさん来ているのです。でも、せき止めの防潮堤を作ったので、大きなものが来ても人は逃げましたが大丈夫でした。カトリーナが発生したときに「これは人災だ。しっかり投資しなかったのがいけなかった」と一気にお金を使ったのです。日本も発想の転換が必要かもしれませんが、財政的な問題は常にあるから、何とも言えないところですね。

飯田)アメリカの場合は大型ハリケーンの上陸が予想されるとき、一斉に州兵が出て来て避難させますよね。

前嶋)そうです。来る場所も分かっていますからね。フロリダ州とノースカロライナ州です。

飯田)東海岸や南部のルイジアナ州とかね。

前嶋)例年、8月下旬くらいにハリケーンが来るのです。だから、みんな何かあったらすぐに逃げられるように準備しています。

飯田)あれは法律でも避難が義務づけられているのですか?

前嶋)避難しない人もいます。やはり高齢者や自動車運転が面倒な人はいますね。地下に逃げる人や、いろいろやる人もいます。日本の耐震構造と同じで、耐ハリケーン構造がたくさんあるのです。

災害に対応するアメリカの組織FEMA(緊急事態管理庁)

飯田)自民党総裁選で石破茂さんが発言して話題になった防災省、あるいは日本版FEMA(緊急事態管理庁)について質問です。FEMAというのは、災害専門の組織ですか?

前嶋)何か緊急の災害があった場合に対応します。アメリカの場合はほとんどハリケーンですね。カリフォルニアの辺りでは地震もありますが、そもそも地震もハリケーンも来ない場所がたくさんあるのです。だから、基本的に予算を南部の1部に使うのは最初から計算しています。

飯田)けっこう潤沢な予算があるのですか?

前嶋)実は予算オーバーします。だから補正予算に似た「裁量的経費」を毎年利用しています。潤沢な予算は使っているのですが、それでもハリケーンで難しくなったりする。アメリカの財政赤字が一気に増えたのはそれが原因です。去年、多くのハリケーンが来たから対処した結果です。

飯田)ああいう組織が常設的にあると、迅速な対応はできているのですか?

前嶋)FEMAと州との連携が、ちょうどカトリーナのときにできなかったのです。だから、常に「連携体制を何とかしなければ」とか「大統領の命令が上手くいったか」とか、いろいろなことが問題になります。「悪いのは州知事だ!」という犯人探しも後で出るのです。

飯田)常設の組織があっても、やはり日本と同じようなことになるのですね。

前嶋)日本より大きな国ですからね。むしろありますよ。他にも共和党と民主党の差みたいなものがあって、微妙に大統領の言うことを聞かないこともある。いまだったら聞くかも知れませんけれどね。

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