しゃベルシネマ

楽しみ方は“映画”だけではない! 第31回東京国際映画祭レポート

【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第511回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

10月25日から11月3日まで開催された「第31回東京国際映画祭」。毎年、私は司会者として、映画祭をサポートさせていただいています。

今年のコンペティション部門には、109の国と地域から1,829本が応募され、16作品が正式出品。東京グランプリに輝いたのは、フランスのミカエル・アース監督による『アマンダ(原題)』。そして日本からコンペに出品した阪本順治監督と稲垣吾郎のタッグによる『半世界』は観客賞を受賞しました。

30回以上続く歴史ある本映画祭ですが、実は、その年ごとにさまざまな試みにチャレンジしています。そこで今回は、八雲ふみねならではの注目作とともに振り返ってみましょう。


映画、食、ワークショップ、そしてハロウィンも。多彩な“お祭り”映画祭!


「第31回東京国際映画祭」で個人的に注目していた特集が、「イスラエル映画の現在2018」。近年、秀作が数多く見られるイスラエル映画にフォーカスし、その複雑で多様なイスラエルという国を映し出す5作品が上映されました。

なかでも印象的だったのが『ワーキング・ウーマン』。雇い主からの執拗なセクハラ&パワハラを受けるヒロインの姿を描いた女性映画で、「#MeToo」というワードが世界中でトレンドとなっている昨今、とてもタイムリーな1作です。それだけに上映後のQ&Aは、「雇い主に対する主人公の反撃が手緩いのではないか…」「主人公の旦那もだらしない!!」といった歯に衣着せぬ様々な意見が飛び交い、白熱した場に。

ゲストで脚本家のシャロン・エヤールと共に、1本の映画を会場にいる全員でディスカッションする。お互いに意見交換をすることは、それぞれの国や文化を知るきっかけにもなります。これぞ、国際映画祭の意義だと思える、大変貴重な場面でした。


狂言師の野村万作、野村萬斎、野村裕基の親子3世代が今年9月にパリのピエール・カルダン劇場で、究極の舞「三番叟(さんばそう)」を披露する。その舞台に密着したドキュメンタリー『野村家三代 パリに舞う~万作・萬斎・裕基、未来へ』の上映に、野村萬斎がゲスト出演しました。


狂言の魅力や父・万作、そして息子・裕基への思い、さらには、自らが開閉会式の演出を統括する2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックについても言及。「失ってはいけないものは精神性」と話す萬斎さんに、伝統を継承し未来へとつなげていく立場を担う人だからこその重みを感じずにはいられませんでした。


若い映画ファンや次世代を担う若手映画作家に向けたセミナー形式のイベント、TIFFマスタークラス。そのなかで今年初の試みとなった、イランの名匠アミール・ナデリ監督による「演劇論と俳優ワークショップ」に私も参加させていただきました。


約3時間、熱弁をふるい続けるナデリ監督。そのパワフルさに、まるでナデリ監督に“演出”されているような錯覚を覚えることも。黒澤明監督や今村昌平監督、相米慎二監督たちが手がけた日本映画の名作を細やかに解説しながら、俳優としての“覚悟”を説く。熱量あふれるワークショップでした。


毎年楽しみにしているのが、映画祭会期中、六本木ヒルズアリーナに出現するキッチンカー。今年は『FOOD TRAVEL~日本の「観光」×「食」を世界へ笑顔の連鎖!~』と題して、おいしいメニューが勢揃い。ふだんはキッチンカーでは展開していない人気店のメニューを気軽に楽しめます。

また六本木ヒルズアリーナでは、毎年、無料野外上映を開催。今年はスポーツ映画の名作が上映され、多くのお客様がキッチンカーのメニューとともに映画を楽しんでいらっしゃいました。こうした映画体験が、コンペ作品や特別上映作品にも興味を持つきっかけになるといいですね。


東京国際映画祭はハロウィンの季節に開催されるため、ハロウィンを意識した演出がされることも。特別招待作品『Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男』日本語吹き替え版プレミアに、スクルージ(クリストファー・プラマー)の声を務めた市村正親が登壇しました。


170年以上にもわたり愛されてきたイギリスの文豪チャールズ・ディケンズの不朽の名作「クリスマス・キャロル」の誕生秘話をファンタジックに描いた本作。

ミュージカル「スクルージ」や「クリスマス・キャロル」で24年にもわたってスクルージ役を演じて来ている市村さん。「クリストファー・プラマーさんはほとんどノーメイクでスクルージを演じたと聞いています。僕もノーメイクでできるくらいまで頑張りたい」と抱負を語って下さいました。

本作が上映されたのがハロウィン当日ということもあり、この日は私も、魔女のコスプレで司会を務めることに。クリスマスのお話だけどハロウィンムードも楽しめる、一挙両得な舞台挨拶となりました。


会場のひとつとして、“映画・演劇の街”日比谷が新たに会場に加わった「第31回東京国際映画祭」。東京ミッドタウン日比谷 ステップ広場に、高画質・高音質の本格的な屋外シアターを設置。六本木ヒルズアリーナのレッドカーペットを特設大型ビジョンで生中継したり、ビデオメーカー各社の提供による「今、ビデオで見るべき話題作」を上映したりと、こちらも大盛り上がりでした。


「映画を観る喜びの共有」「映画人たちの交流の促進」「映画の未来の開拓」をテーマに、多彩なラインナップとなった「第31回東京国際映画祭」。2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの開催を見据えて、スポーツやオリンピックに関連した作品の上映が目立ったのも、今年の映画祭の特徴だったのではないでしょうか。

日本唯一の国際映画製作者連盟公認の映画祭であり、アジア最大級の映画の祭典が、今後もますます映画文化の発展を担うことを願っています。

<作品情報>
ワーキング・ウーマン
監督:ミハル・アヴィアド
脚本:シャロン・エヤール
出演:リロン・ベン・シュルシュ、メナシェ・ノイ、オシュリ・コーエン

野村家三代 パリに舞う~万作・萬斎・裕基、未来へ
監督:稲垣綾子
出演:野村万作、野村萬斎、野村裕基

Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男
2018年11月30日(金)新宿バルト9ほか全国ロードショー
監督:バハラット・ナルルーリ
出演:ダン・スティーヴンス、クリストファー・プラマー、ジョナサン・プライス、モーフィッド・クラーク ほか
日本語吹替版:市村正親、小野大輔、坂本真綾、江原正士
©️BAH HUMBUG FILMS INC & PARRALLEL FILMS (TMWIC) LTD 2017
https://merrychristmas-movie.jp/#1

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