女子卓球・伊藤 フィジカル強化で採り入れたボクシング

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、4日の卓球・スウェーデンオープンで、中国の主力3選手を撃破し、女子シングルス優勝を飾ったスーパー女子高生・伊藤美誠選手にまつわるエピソードを取り上げる。

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女子シングルスで優勝した伊藤美誠(スウェーデン・ストックホルム)=2018年11月4日 写真提供:時事通信

「Awesome performance, Mima Ito beats Zhu Yuling no time to blink」
(「驚異のパフォーマンス 伊藤美誠、またたく間に朱雨玲を破る」)

そんな記事が、国際卓球連盟(ITTF)公式サイトのトップページに写真付きで大きく掲載されました。4日、ストックホルムで行われたスウェーデンオープン・女子シングルス決勝。

伊藤は世界ランキング1位の朱雨玲(中国)と対戦。ゲームカウント4-0のストレートで圧勝。6月のジャパンオープンに続く、今季2度目のワールドツアー制覇を果たしました。

これだけでも相当すごいことですが、破った相手がまたすごい。準々決勝では世界6位の劉詩ブンを1-3から4-3と大逆転で下し、準決勝では、リオ五輪金メダリストで世界2位の丁寧を撃破。卓球王国・中国のトップ選手に3連勝してつかんだこの優勝は、伊藤にとって大きな意味を持つタイトルになりました。

「まったく想像していなかったけれど、世界選手権でも(女子団体戦を)全勝で終えることができ、今回もこのような形で優勝ができたので、スウェーデンが大好きになりました」

そう喜びを語った伊藤。今年5月、スウェーデンのハルムスタッドで行われた世界選手権(世界卓球)女子団体決勝、伊藤・平野美宇・石川佳純の3人で臨んだ日本は、惜しくも中国の前に完敗。銀メダルに終わりましたが、唯一、伊藤だけが勝利。伊藤は団体で、決勝に至るまでの試合もすべて勝っており、スウェーデンは「ゲンのいい国」だったのです。

今年1月の全日本選手権では、女子シングルス・女子ダブルス・混合ダブルスの3冠を史上最年少で制覇。2018年は伊藤にとって飛躍の年になりましたが、その陰には挫折と、そこから這い上がるための、並々ならぬ努力がありました。

一昨年のリオ五輪、15歳の若さで、女子団体銅メダリストに輝いた伊藤。しかし去年は卓球人生で初のスランプに陥ります。シングルスで優勝候補に挙げられていた去年の全日本選手権では、初顔合わせの選手に敗れ、まさかの5回戦敗退……。リオでメダルを獲った反動で、いわゆる「燃え尽き症候群」になっていたことも一因でした。

「自分が変わらないと、この先も勝てない」と痛感した伊藤。それまでの伊藤は、卓球台の前面に陣取って速攻で勝負するスタイルでしたが、回転量の多いボールとパワーで押してくる中国人選手に、ラリー勝負で負けることが多かったことから、フィジカルの強化に励みました。「卓球と筋肉の使い方が似ている」ということで、ボクシングを練習に採り入れたことも。

また道具にもこだわり、ラケットに張るラバーを瞬発性の高い日本製から、粘着性が高く回転が掛かりやすい中国製に切り替え、ドライブボールを磨きました。その後また日本製に戻しましたが、こういった自己変革への努力を重ねるうちに、精神面も磨かれ、それが結果となって花開いたのが2018年だったのです。

「良くなかった時期があったから、自分も変わることができた」

と言う伊藤。目標でもある2020東京五輪での金メダルに向けて、従来のスピードに加え、パワーと機動力を身に付けた「ニュー美誠」に、今後も注目です。

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