帰国後初めての会見で、安田さんは我々に何を語るのか

By -  公開:  更新:

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月2日放送)にジャーナリストの末延吉正が出演。きょう予定される安田純平さんの会見について解説した。

安田純平 安田 ジャーナリスト 3年 会見 記者 シリア 拘束 英雄 自己責任 論

記者会見するジャーナリストの安田純平さん=2018年11月2日午前、東京・内幸町の日本記者クラブ 写真提供:共同通信社

ジャーナリストの安田純平さんがきょう会見へ

シリアで拘束され、3年4ヵ月ぶりに帰国したジャーナリストの安田純平さんが、都内できょう午前11時から記者会見することを明らかにした。先月25日に帰国して以来、安田さん本人による会見は初めて。

飯田)これに関しては両極端というか、英雄なのか自己責任なのかと言われていますね。

末延)昨日僕がテレビ朝日の番組に出たら、その前の番組が延々1時間以上やっていて、奇異な感じがしました。ジャーナリストが取材に行って3年耐え、無事に帰って来たのは凄いし、良かったと思います。ただ、彼がどんな取材をして何を見たのかまだ話してもいないのに、ネットを中心に英雄論と自己責任論。どうかと思いますよね。
僕も40代後半、2000年頭までは湾岸戦争、ソマリアやアフガンなどいろいろなところへ行きました。特にテレビの場合はカメラクルーで3人チーム、しかも所属が違ったりしますから、常にどうやって安全をキープするかはある程度コストもかけて判断をしました。そういう経験から言うと、ジャーナリストは不幸にも亡くなる場合があるわけです。
だけど日本の場合は、談合して危ないときには行かない傾向にある。僕も湾岸戦争の頃は、クウェートにスカッドBが撃ち込まれるとき中継をしていましたが、その際も安全基準違反で、日本のほかのチームはいなかった。でもそういう体験は、いまの若い人に伝えられるから良いのです。身代金ビジネスで日本人がターゲットになりやすいけれど、安田さんはジャーナリストとしてそれを承知で行って、何を見て何をきょう話されるのかを聴きたい。
繰り返しますが、話を聞く以前に英雄論、自己責任論でやり合うのはどうかと思います。国際基準で言うとずれている感じがしますよね。気になるのは、自分たちのインナーサークルで仲間を募って攻撃し合う風潮。これは同じ土俵に立てないし、議論にならないし結論へ至らない。こうった罵詈雑言を繰り返すのは、悲しいしつまらないと思うのです。

安田純平 安田 ジャーナリスト 3年 会見 記者 シリア 拘束 英雄 自己責任 論

ジャマル・カショギ記者死亡事件の真相解明を求める米紙ワシントン・ポストの社告(左側)=2018年10月25日、ワシントン(共同) 写真提供:共同通信社

安田さんが何を体験してきたのか

飯田)日本政府が、どんな状況であっても日本国民を必死になって保護するのは当たり前のことでもあるし、一方で「危険だから行くな」という声はもちろんあるのだけれど、ジャーナリストとして行って伝えなければ誰も知らないじゃないかというのも、それはそうだと思います。その間のプロセスとして、どういう準備をして行って、結果どうやって失敗したのか、その部分の検証までまだ行っていませんよね。

末延)機内インタビューで安田さんが、「もしこの解放に日本政府のお金が掛かっていたら好まない」みたいな発言をされた。あれが刺激したのだと思います。その前段として、イラク戦争のときに安田さんを含めてボランティアの人たちが人質になった。あのときに政府高官が自己責任論を言ったのですよ。政府がそれを言うのはおかしいといまでも思います。だけど、実体のないところで感情論をぶつけ合うのはあまり意味が無い。安田さんの議論はイラクのときの延長があるのかなと思います。
シリアの状況が落ち着いて、こういう結果になって良かったと思いますが、一方でサウジアラビアのカショギ記者の殺害。1人の記者の殺害で報道の自由が侵されることで、ひょっとするとサウジの体制がどうなるのか、これは世界を揺るがしますよ。
このように報道の問題は非常に重要であることは間違いないので、ぜひ日本でも実を伴った議論を冷静にやっていただきたいし、お互いに罵り合うようなことは何も生まないので残念な気がします。

報道する意味があれば、危険な場所へも行く

飯田)私は夏休みにベトナムへ行ったのですが、ホーチミンに戦争証跡博物館というものがあって、戦争の悲惨さの展示もあるのです。そのなかの1室に「この戦争で命を落とした記者たち」という展示があって。日本人だと一ノ瀬泰造とか沢田教一の名前が出てきますが、顔写真を見ると日本人は沢山亡くなっているのですよね。

末延)しかも、当時はフリーランスの契約だけだったのですよ。本当の社員化もされないし、アメリカのメディアに対して写真や情報を撮って、売ってという。日本のジャーナリストの地位はそうだったのだけれど、凄く良い仕事をして来ているし、僕自身も南米の麻薬戦争のときには新聞社が爆破されました。これは取材に入っていて本当に怖かったですよ。いろいろなプレッシャーがありました。それからソマリアもかなり危険でした。
ただ、そこに報道する意味があれば、なるべく安全を確保しながら行く。最後は運なのですが、それを現場から離れたところで、空中戦みたいな議論はやってもむなしくなるだけで、こういう風に盛り上がっている議論を海外から見ると、論点が違う感じがするのではないでしょうか。
安田さんがきょう何を語るか、時間が経ってからまとまったものが書かれると思いますが、それをぜひ読みたいと思います。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

番組情報

飯田浩司のOK! Cozy up!

FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

番組HP

忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。

Page top