仙台駅「網焼き牛たん弁当」(1,050円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.12「こばやし」編(4))

By -  公開:  更新:

【ライター望月の駅弁膝栗毛】

E2系 やまびこ 東北新幹線 仙台 白石蔵王 弁当 駅弁 こばやし 網焼き牛たん弁当

E2系「やまびこ」、東北新幹線・仙台~白石蔵王間

平成9(1997)年のデビュー以来、既に20年を超えて活躍しているE2系新幹線。
東北新幹線では、東京~福島間で「つばさ」号と併結する仙台発着の「やまびこ」号を中心にお目にかかることが出来ます。
東京行の東北新幹線が仙台を出ると、どこからか紐を引っ張る音や、シューッと蒸気の音がして、程なく「牛たん」のいい匂いがしてきますよね。

弁当 駅弁 こばやし 網焼き牛たん弁当 仙台 牛タン 牛たん 独眼竜 政宗 瓣當

株式会社「こばやし」・小林蒼生代表取締役

そんな「牛たん」の駅弁を開発したのが、仙台駅弁の「株式会社こばやし」です。
駅弁屋さんの厨房にお邪魔して、トップの方にお話を伺っている「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第12弾は、仙台駅弁「こばやし」の小林蒼生代表取締役に登場いただいています。
今回は、仙台の「牛たん」駅弁の開発秘話をお届けいたしましょう。

―仙台の「牛たん」駅弁の元祖として知られる「こばやし」ですが、“仙台の牛たん”は、昔からあったんですよね?

私の小さい頃から、既に「牛たん」を食べる習慣がありました。
仙台には“太助”というお店(注)があって、狭いお店でオヤジさんが七輪で焼いていました。
当時は店で食べるより、焼いたものを持ち帰って、家でよく食べていたものです。
昔の「牛たん」は半端な肉という感じで、シチューなどの煮込み料理に使われる程度でした。
ですから、普通はタンを塩で焼くなんてことはまずありませんでしたし、それを弁当に入れようなんてことも、全く考えていなかったんです。

(注)「太助」…仙台牛たん発祥の店とされる。

弁当 駅弁 こばやし 網焼き牛たん弁当 仙台 牛タン 牛たん 独眼竜 政宗 瓣當

網焼き牛たん弁当

―「牛たん」を駅弁にしようと思ったきっかけは?

太助が牛たんの塩焼きと麦飯、テールスープを出す“レストラン”になっていくのを見ていて、仙台「牛たん」の認知度の高まりを感じていました。
そんなとき、ある勉強会で神戸の駅弁屋さん「淡路屋」(注)の社長さんとお会いする機会があり、発熱材に水をかけて温める「加熱式容器」というものを教えてもらいました。
程なく、いまのような「紐を引きぬいて温める」、使いやすい加熱式容器が開発されたことで、「これならイケるかもしれない!」と思うようになり、イロイロと実験を始めました。

(注)「淡路屋」…神戸を拠点に京阪神地区で駅弁を販売する駅弁屋さん。加熱式駅弁の元祖として知られる。

弁当 駅弁 こばやし 網焼き牛たん弁当 仙台 牛タン 牛たん 独眼竜 政宗 瓣當

網焼き牛たん弁当(3ミリの牛たん)

―いままでにない食材だけに試行錯誤もあったでしょうね?

問題として立ちはだかったのが、「牛たんの厚さ」でした。
たんが厚いと、なかなか熱が通らないんです。
そこでいろいろ試していって出た結論が、3ミリの牛たんならイケるということで、当時としては画期的な「牛たん」の駅弁ができたんです。
お陰様で「独眼竜政宗瓣當」に次ぐ、ヒット商品となりました。

弁当 駅弁 こばやし 網焼き牛たん弁当 仙台 牛タン 牛たん 独眼竜 政宗 瓣當

網焼き牛たん弁当のヒモ

―改めて「加熱式容器」というのは、画期的な存在だったんですね。

加熱式容器の場合、平らな所で紐を引っ張って、石灰と水を反応させないといけません。
少し傾けてやってしまうと、異常な発熱になってしまうことがあります。
そのため容器の下に、俗に“座布団”と呼んでいるシートを敷いたりする改良も加えました。
逆に「紐を引き抜く」ということが分からないお客さまもいて、「温まらないじゃないか!」というお叱りを受けることもありました。
ですから、いまでは包装に「加熱式容器」の説明も丁寧に書くようにしています。

(小林蒼生・株式会社こばやし代表取締役インタビュー、つづく)

弁当 駅弁 こばやし 網焼き牛たん弁当 仙台 牛タン 牛たん 独眼竜 政宗 瓣當

網焼き牛たん弁当

【おしながき】
・麦飯(お米は宮城県産環境保全米ひとめぼれ使用)
・牛たん焼き
・花人参煮
・万来漬け(胡瓜、大根、人参、みょうが、菊、しその実)
・七味唐辛子

弁当 駅弁 こばやし 網焼き牛たん弁当 仙台 牛タン 牛たん 独眼竜 政宗 瓣當

網焼き牛たん弁当

紐を引っ張って温め、ふたを開けると、湯気と共にいい香りが漂う、加熱式の牛たん駅弁。
元祖の系譜をいまに伝えるのが、「網焼き牛たん弁当」(1,050円)です。
加熱前の牛たんと比べても、牛たんがツヤツヤしていて、一層食欲をそそります。
ちなみに麦飯を使用していますが、より食べやすいように白米(ひとめぼれ)を多めに…。
次回、仙台の牛たん駅弁を、さらにディープに掘り下げます!

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

Page top