妊娠した保護猫の出産と育児も援助する! ママ獣医師の決意と保護活動

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【ペットと一緒に vol.114】

フォスターサロン ブリーダー ベンガル ネコ ねこ 猫 保護 トリマー なないろ動物病院
ペットとその家族はもちろん、家族のいない保護猫や保護犬も幸せにする活動に取り組める動物病院にしたい! と願い、なないろ動物病院を開業した、服部真澄さん。妊娠猫を安心して出産させ、一時預かりの犬の散歩に行き……。と、意欲的に取り組む、ママさん獣医師のボランティア活動をご紹介します。


保護活動が行える動物病院を目指して

「自分で動物病院を開業したら、獣医として必ず犬と猫の保護活動に携わろうと思っていたんです」。
そう語る服部さんは、以前勤務医として出入りしていた動物病院で、日本にはまだ飼育放棄される猫や野良猫が数多くいるという事実を目の当たりにして決意を固めたそうです。

主には北関東の動物愛護センターに収容された猫が愛護団体を経由して、あるいは地元でたまたま保護された猫が、服部さんのもとへやって来ます。

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なないろ動物病院で育った黒ちゃんファミリー

「保護猫のなかには、お腹に赤ちゃんを宿している猫も少なくありません。そのようなケースでは、子猫が離乳するまで面倒を見てから、母猫と子猫の里親募集をするんですよ。母猫が人に飼われるのがむずかしそうな性格であったら、避妊手術をしたのちに地域猫として元の居場所に戻す“TNR”を行います」と、服部さん。

日本では現在、保護された妊娠猫では胎児ごと子宮を取り出して避妊手術をするのが一般的だとされています。環境省発表の統計資料(平成28年度)によると、殺処分される猫のうち65%にあたる約3万頭が幼齢個体なのが背景にあるからでしょう。

「確かに、不幸な子猫をこれ以上増やさないためにという考えも理解できます。でも、当院は動物の体調や自分の対応できる範囲を考えつつ、できる限り子猫を出産させ育児後、譲渡しています。まだ母親のお腹にいても、命は命。自分の目の前にある命を、大切にしたいんです」(服部さん)。

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母猫の出産と育児を全力サポート


「安心して出産していいんだよ」

妊娠猫が保護されてきた場合は、動物病院内でレントゲン検査や超音波検査をして、おおよその出産予定日を予測するそうです。
「残念ながら、環境変化などのストレスで流産をしてしまった猫もいます。でも、そうならないように『安心して産んでいいんだよ』と、プレママの猫には思いを込めて世話をしています」。

幸いにも、猫は犬に比べると安産な動物で、ほとんどの母猫が子育てをじょうずに行うとか。動物病院で飼っている猫も、服部さんのもとで3頭生まれた子猫のうちの1頭でした。
「輸血が必要になった猫のために、献血に協力してもらおうとも思っているんですけどね。今のところ出番なしで、病院でのんびりくつろいでいます(笑)」とのこと。

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病院猫のぴーちゃん


保護猫と保護犬と楽しく

服部さんの愛猫は病院にいる1頭のほか、大学時代に友人からもらった猫と、勤務医時代と開業後に保護猫として出会った猫が自宅にいるそうです。

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服部家の愛猫たち

取材をした日は、服部さんのもとに保護猫が8頭と保護犬が3頭いました。
「保護犬は、小学生の長男と長女と一緒に散歩に行ったりもしますよ。子どもたちも、一時預かりをしている動物たちがすごくかわいいみたい。『はやく、すてきな出会いがあるといいね~』、『新しいおうちでも、たくさんかわいがってもらってね』と言いながら犬や猫を撫でていますね」と、服部さんは微笑みます。

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保護猫と一緒に昼寝をする服部さんの長女と長男

服部さんは2013年に開院してからこれまで、100頭近い猫と犬の里親との縁をつないできました。

「たまたま動物病院のポスターに目を留めたことがきっかけで譲渡先になったり、うちから巣立った猫の飼い主さんが、猫が欲しいご友人を紹介してくださったり、『次は服部先生のところから保護猫を迎えると決めているの』という患者さんがいらしたり……。地道で小規模な活動も、続ければ輪が広がって行くものですね。最近ではフォスターサロンのクリニックとしても活動しています」(服部さん)。

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現在預かっている保護犬コマくんの保護当時とトリミング後

猫ブームと言われる昨今、営利のみを目的とした悪徳ブリーダーの現場崩壊によって、ペルシャやベンガルなどの純血種を保護する機会も増えていると言います。保護した直後は、寄生虫やウイルスに感染していたりと、避妊・去勢手術以外にも、獣医師による治療が必要な猫もたくさんいるそうです。

「いま、誰かの家族として大切にされているコを幸せにすることを最優先にしつつ、自分のできる範囲の力で、幸せな犬や猫を1頭でも増やしたいと願っています」と語る服部さんの目は、とても輝いていました。

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保護されたベンガル

連載情報

ペットと一緒に

ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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