巨人・原辰徳監督 長嶋監督から受け継いだ重要な教え

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は23日に就任会見を開いた、巨人・原辰徳新監督にまつわるエピソードを取り上げる。

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記者会見で握手を交わす巨人の原辰徳新監督と高橋由伸監督=2018年10月23日午後、東京都千代田区 写真提供:共同通信社

23日に読売新聞本社で行われた、原辰徳新監督の就任会見と高橋由伸前監督の退任会見。新旧監督が同じテーブルに並ぶという、非常に珍しい会見になりましたが、高橋前監督は「球団特別顧問」という肩書きで球団に残ることも同時に発表されました。

この役職は、これまで原監督に付いていた肩書きと同じで、原監督は、

「(高橋監督は)辞任する必要はなかった。スタッフとして『チームに残ってくれないか』と伝えた」

とコメント。この発言は、今回の就任はあくまで「一時預かり」で、いずれこのバトンを再び高橋前監督に返したい、というニュアンスが感じられます。

巨人軍の監督は、他球団の指揮官と違って、限られたメンバーしか務めることができない役職です。2リーグ制が始まった1950年以降、巨人監督を務めたのは、水原茂、川上哲治、長嶋茂雄、藤田元司、王貞治、原辰徳、堀内恒夫、高橋由伸の8人だけ。長期政権が多いこともありますが、70年間で8人ですから、他球団と比べると驚くべき少なさです。

8人の共通項は「生え抜きのスター選手だったこと」。また新監督の条件は「就任前に、他球団の指揮を執っていないこと」。水原・王の2人は退任後、他球団で指揮を執りましたが、以後、巨人監督には復帰していません。つまり「外部からの監督就任」は、50年以降1度もないのです。

阪神が野村克也監督、星野仙一監督を招聘(しょうへい)したように、チームの危機だからといって簡単によそから指揮官を連れて来られないのが、ジャイアンツ特有の難しさでもあるのです。

2度目の復帰は原監督が初めてですが、長嶋監督からバトンを受け継ぎ、就任1年目の2002年にいきなり日本一。チームを7度のリーグ優勝(うち3連覇2回)と、3度の日本一に導いた手腕は、高く評価されています。原監督自身、つなぎ役としてチームを立て直せるのは自分しかいない、という自負もあっての再々就任なのでしょう。

今回、原監督があらためて打ち出したキーワードは「原点回帰」と「のびのび野球」。

「スポーツ、野球の原点である『のびのびと楽しむ』。勝っては喜び、負けては悔しがる。この『のびのび野球』を、私自身も含めて、原点に戻ってやる」。

背番号を、前回監督時の「88」ではなく、最初に就任したときの「83」にしたのも原点回帰の表れです。この「83」は、自身の現役時代の背番号「8」と、前任者・長嶋監督の現役時代の背番号「3」を合わせたもの。なにかと「ムードが暗い」と言われた昨今のジャイアンツですが、「野球を楽しむ姿勢」を忘れないこと……これは長嶋氏から受け継いだ教えでもあるのです。

戦力については「いい選手はたくさんいる」と、ベテラン・若手の区別なく、フラットな視点で見ていくと宣言。前回監督時に掲げた「実力至上主義」は譲れない、と強調しました。

「『巨人軍』でなければいけない。『個人軍』ではいけない。束ねられる1人1人の力をしっかりと見極め、誰がジャイアンツにとっていちばんなのか、しっかり観察してチームを作って行きたい」。

途中ダジャレが入ったあたり、いかにも原監督ですが、今季、6月から閉幕まで4番を務め、急成長を見せた岡本については、

「プロは今年もよかったから来年も、という甘い世界ではない。日本を代表するような打者になるべく、私自身も彼と向き合って戦いたい」。

4年前のドラフトで、岡本の1位指名を決めたのは原監督でしたが、高橋前監督が一人前に育ててくれた若き主砲を、さらにどうステップアップさせて行くのか? また、投手陣をどう立て直すのか?「のびのび」と「厳しさ」を両立させることはできるのか?……原監督の手腕に注目です。

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