サウジアラビア~記者失踪事件の真相は? 多くの他国への影響

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ニッポン放送の「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月19日放送)に外交評論家の宮家邦彦が出演。サウジアラビアの失踪した記者について解説した。

トランプ ムニューシン ジャマル・カショギ 記者 サウジ 領事館 殺害 失踪

サウジアラビアの反体制記者ジャマル・カショギ氏(バーレーン・マナマ)=2014年12月15日 写真提供:時事通信

ワシントン・ポストが、失踪したサウジアラビア記者のコラムを掲載

アメリカの新聞ワシントン・ポストは17日、在トルコのサウジアラビア総領事館で入館後に失踪したサウジ人記者、ジャマル・カショギ氏の、現状では最後とも言えるコラムをインターネット版に掲載した。

飯田)その後も様々な情報が入って来ておりまして、アメリカのトランプ大統領はニューヨーク・タイムズ誌のインタビューで「よほどの奇跡が無い限り記者は死亡したと認めざるを得ないだろう」と述べた、というようなことも入っています。ジャマル・カショギさん、なかなか聞き馴れない名前だなと思ったのですが。

宮家)まずね、カショギじゃないのよ、名前。

飯田)え、違うのですか?

宮家)違うの。違うというか、英語ではカショギと書くのだけれど、アラビア語ではカーショクジーと言うのですよ。

飯田)カーショクジー。

トランプ ムニューシン ジャマル・カショギ 記者 サウジ 領事館 殺害 失踪

トルコ・イスタンブールにあるサウジアラビア総領事館前で、行方不明になったジャマル・カショギ記者のポスターを手に抗議デモを行う人たち=2018年10月8日(共同) 写真提供:共同通信社

ジャマル・カショギ氏は「知りすぎた人」

宮家)それを、彼はカショーギーという形にスペリングを直したのだと思います。彼はもともと、おじいちゃんがトルコ系の人なのですよ。それがサウジの女性と結婚して、なんとサウジアラビアの初代国王の主治医だったのです。カショギ系というのは、王族ではないけれど、王族の取り巻きの1つなのです。ものすごく名家だしお金持ちです。それから、レーガン時代にイラン・コントラ事件というものがありましたが、そのとき武器商人として暗躍したのが、この方のおじさんにあたるアドナン・カショギという人です。だから彼らは完全なエスタブリッシュメントなのですが、ある意味で「知りすぎた人」。いまの皇太子からすれば、サウジアラビアの胡散臭いおじさんではなく、むしろ仲間だったけれど、最近はどうも自分に対する批判が強いと。彼はどう書かれたかと言うと、改革派で売っていたわけですよ。

飯田)そうですね、皇太子は。

宮家)ところが、どうもロシアのプーチンさんみたいな独裁者だと。こう言われたら腹が立つでしょう。腹が立てば何をしてもいいわけではないけれど、カショギさんはもうそこにいられなくなって、ワシントンに逃げるのですよ。ところが、その後トルコのガールフレンドができて、結婚しようということになる。でも彼は結婚していたそうなので、本国で離婚証明書をもらわないと、新しい奥さんと結婚できない。離婚証明書をもらいに行こうとして、恐らくワシントンの大使館に行ったのです。そうしたら、奥さんは…。

飯田)「外国人だろう」と。

最大原油国の1つの国、その将来が掛かった問題

宮家)「イスタンブールで行けば良いじゃないか」と、言ったとか言わないとかいう話があるのですよ。もしそれが事実だとしたら、それ全体が本当の罠だったのかもしれないと、そこまで言われている。私はもう、昔ならともかく、こんなことが現代のサウジアラビアであるのかと。そしてポンペオさんが急遽行きまして、全ての情報はトルコ勢が多いけれども、もうやられちゃったという話でしょう。ポンペオさんが何をしに行ったかと言えば、サウジの皇太子に会って、報道では「この問題はあなたがちゃんとやらなきゃダメですよ」と言ったと。「これは将来の国王として、あなたの問題として必ず跳ね返って来るから、気をつけなさいよ」と、そんなことを言ったら怒るかもしれませんが。そのくらい大事な話だと私は思っています。

飯田)甘く見るな、という風に汲み取りました。

宮家)本当にこのムハンマド・ビン・サルマーンという人が国王の器なのか。自分の同族を、みんなリッツ・カールトンに入れて…(笑)。

飯田)優しく拘束したとか。

宮家)かと思うと、イエメンで戦争をやってみたり、この事件ですから。最大の産油国の1つであるサウジアラビアを、本当にこの人に任せて良いのかという議論が、一部アメリカでは出ています。そのくらい大きな話だと思うし、米サウジ関係だけではなく、サウジとイランの関係、サウジとイスラエルの関係、全てに波及する。私は実は非常に重視していますが、日本だとなかなか理解してもらえない。すごく大事な話だと思っています。

ムニューシン財務長官の動向に注目

飯田)イスラエルとの関係も含めてとおっしゃいましたが、そのイスラエルと、トランプ政権のなかでも仲が良いと言われているクシュナーさんとムハンマド皇太子が、相当仲が良い。今回もそこを過信して…。

宮家)つまり、クシュナーさんとの関係があまりにも良くて、「これくらいのことをやってもアメリカなら怒られないだろう」と、ある意味で大胆にさせたという批判がある。でもこれも分からないですね。

飯田)分からない。

宮家)「トランプけしからん」と言う人がたくさんいるので、全ての批判をまともに受ける必要はないと思います。でも残念ながら、トランプさんすら「どうしようか」となっている。1つでも判断や対応を間違ったら大きな禍根を残すことになるので、いま慎重に事実関係を調べて、いずれ今週か来週にははっきり出てくるでしょう。確かムニューシン財務長官が、サウジで投資家の会議があるので、それに行くか行かないかがポイントですよね。もし行かないとなったら、ちょっとニュースだと思います。

飯田)「まずい」と。

事件に蔓延する憶測、トランプ氏の今後への苦悩

飯田)先ほど「全体が罠だったんじゃないか」とおっしゃっていた部分で、まさかとは思いますが、婚約者の方も含めてハニートラップだったというのはどうですか?

宮家)いやあ、そこまでは分からない。でもハニートラップだったら、トルコ人でなくとも、サウジ人だっていいわけですよね。

飯田)ああ、確かにそうですね。

宮家)アフリカ人でも良いわけで。どうでしょうかね。

飯田)いろいろな憶測を呼びますね、この事件は。

宮家)だから、こういうものは早くはっきりさせないといけない。サウジ政府は沈黙をずっと守っていますが、沈黙がいちばんいけません。もう憶測が憶測を呼びですよ。ありもしないことまで言われてしまうから、本当はちゃんと説明できなければいけない。

飯田)トランプ政権としては、報道の自由は大事だというところで。

宮家)いや、トランプさんは報道の自由なんて大事だと思っていません。

飯田)なるほど(笑)。

宮家)報道の自由はフェイクニュースだと思っているからね。サウジアラビアが重要な同盟国であるということは、彼も言っていますが。その重要な同盟国が、本当にこんなことをやったのだとしたら、どうやって関係を維持するのかということに、恐らく彼はいちばん頭を痛めていると思いますよ。困ったことです。

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